043 幼女フォーラム
幼女ニュース Vol.009
全日本幼女協会のホームページ。
「世界規模の幼女化から一年近くが経ちました。その間、経済活動における幼女の役割がますます重要になってきております。
本協会では『幼女人材のさらなる活性化』『業種を超えた交流促進』のため、下記日程で幼女フォーラムを開催いたします。
参加を希望される方は申し込みフォームに記載のうえ、期日までに送信ください」
全日本幼女協会のホームページの続き。
「下記プログラムを予定しております。
基調講演:13:30〜14:30
幼女株式会社
代表取締役社長
瀬古いのり
〜幼女たちの時代〜
〜The age of little girls〜
……。
…………。
………………。
特別講演:16:30〜17:20
株式会社カノープス・システムズ
代表取締役社長
…………。
……。
一部の講演は大変混み合うことが予想されます。
席は先着順となりますのでご了承ください」
幼女の祭典というべき幼女フォーラム。
この日は有名な幼女社長たちが一堂に会することとなる。
※ ※
社長を一目見たとき、ちょっと雰囲気が違うな、ということに気づいた。
いつもの社長の格好は決まっている。
ベージュ色のジャケットにタイトなスカート。
オーソドックスなツインテールという組み合わせだ。
しかしこの日は違う。
ツインテールに編み込みを加えており、かなりのアレンジを施している。
毛先にパーマをかけているから、うるさくない程度の立体感があって、まるで読者モデルのようなセミプロ感がある。
あと人目を引きそうなのが首のチョーカーだ。
ジャケットに合わせたベージュ色で、ハート型のリングがアクセントになっている。
首元がすっきりしており、垢抜けた印象を与えてくれる反面、どこか近づきがたいオーラもある。
なんだか子猫の首輪みたい……。
無粋なのを承知でいうと、それが俺の率直な感想である。
「いくつか連絡事項がありますが、その前に一点だけ。今日は私が終日不在となります。用がある人はこの場で共有するか、あとでメールをください」
社長がいつもの優しい口調でいう。
俺と視線がぶつかったとき、小さく手を振ってくれた。
可愛いでしょ?
そのように語りかけられた気がしたので、俺も小さく手を振り返した。
「いのりのやつ、今日は色気づいているな」
神宮寺が小声で話しかけてくる。
「ちょっと大人っぽい雰囲気ですよね」
「須田ちゃんのせい? もしかして須田ちゃんのせいでエロくなったの?」
「そんな馬鹿な。家を出るときは普通の社長でしたよ。幼女フォーラムの予定があるからでしょうね」
「ああ……なるほど」
しかし穏やかじゃない一日になりそうだ。
社長が留守にするということは……。
「おいおい、私とゆり姫で留守番かよ」
「ちょっと、神宮寺さん。本人に聞こえたら失礼ですよ」
「別にいいんだよ。お互いの歳だって変わらないしさ。遠慮はいらねえ。ゆり姫はゆり姫だ。それ以上でもそれ以下でもないだろ」
通称、姫井さん。
フルネームは姫井ゆり。
だからあだ名が『ゆり姫』。
神宮寺からそう呼ばれることを、当の本人はあまり快く思っていない。
「それに見たかよ。社長の首元」
「チョーカーをつけるなんて珍しいですね」
「ゆり姫のチョーカーと色違いのお揃いだぜ。まったく、どういう神経しているんだよ。社長にまで趣味を押し付けるなんて……。いのりは着せ替え人形じゃねえんだ。遊びの道具にするな。やりたきゃ一人でやってろ。というか、職場でガールズラブするのはやり過ぎじゃねえか。あの変態め」
最後のセリフが社長の耳に届いたらしい。
「どうしたの、あすか? 何か気になることでも?」
軽いトーンで問いかけられる。
「いや、別に……」
神宮寺は不貞腐れたように顔をそむけた。
素直じゃないな、この人も。
社長のことになると姫井に対するライバル心が牙をむく。
「でも髪型はいい感じじゃないですか。アイドルみたいなツインテールですよ。あれはプロのスタイリストさん顔負けのクオリティーだと思います」
「うむ。そこは同意するが……手掛けたのがゆり姫だからな。あいつの趣味が丸出しかと思うと全然嬉しくない」
「そこは素直に感心するところですってば。姫井さんも社長のことを一番に考えているのですから」
「そうだな。ゆり姫にとっては社長が一番だろうな。自分の命よりも社長の命だよな」
「……ですかね?」
どうも神宮寺の言葉が気にかかる。
夜道で刺される。
殺される。
あれは何かの間違いと信じたいのだが、あながち冗談と笑い飛ばせない面もある。
姫井のロイヤリティーが高いことは俺もよく知っているから。
病的なロリコン。
幼女の皮をかぶったロリコン。
思い当たる節がない……わけでもない。
とにかく姫井は可愛いものが大好きなのである。
幼女コレクションに実装されている全47キャラクター。
全てのキャラクターデザインを考えてきたのが姫井である。
だから『幼コレ=姫井の趣味』ともいえるし、あの幼女愛があったからこそ実現できたタイトルともいえる。
数字にシビアな姫井。
可愛い幼女に目がない姫井。
どちらも同じ人物なのだが、光と影のようにも思えてきた。
「私からの話は以上です。あとの説明は任せたよ、姫ちゃん」
社長は一通りの連絡を終えると、腹心ともいうべき人物にバトンタッチする。




