ヒール野郎
小説内で使われるスラングは決して実際人に向けて使わないでください。
俺は前世とやらの記憶がある。昔は地球のアメリカっていう大国のゴミ溜めみてぇな路地裏でクソみたいな連れ共と人間の底辺みてぇな暮らしをしていた。
暴力なんて日常茶飯事、生きるためには盗みも恐喝もなんだってやった。ある程度大人になってからは俺以上にクソで他人に迷惑をかける野郎どもをぶちのめす喧嘩屋みてーなことを生業にしていた。そこでの俺は所詮ヒールで、ベビーフェイスなんて柄じゃねぇし、ヒーローなんて夢のまた夢だ。
そんな俺は、まあ自業自得だろうが、昔ぶちのめしたクズ野郎の1人に撃ち殺され、気づいたら言葉も喋れねえようなチビに生まれ変わってた。
この世界では銃とか爆弾みてぇな武器の代わりに魔法が栄えており、俺の新しいお袋と親父も魔法が使えるらしい。
昔はストリートチルドレンとして擦れてた俺だが、この優しい親のところでしゃーねぇから大人しくしといてやろうと思ったがそうは問屋が下ろさねぇ。
あらあらが口癖の金の髪を持つおっとりぽやぽやしたお袋と、真っ赤に燃えるような毛色の熊みてぇにどでかい図体を持つ朗らかな親父の間に生まれた俺は、親父譲りの長身にお袋譲りの金の髪。親父と同じ鋭い眼光は俺の表情筋のせいで親父とは違い、いつも不機嫌そうに細められている。お袋みてぇな金の髪には所々親父みてーな赤い髪がメッシュみてぇに入ってやがる。このいかしたクソみてえな外見のせいで絡まれに絡まれまくり、そいつらを殴って嬲って屈服させてるうちに俺は近所で評判の悪童になっていた。
さて、そんな俺は今二度の人生合わせても初めてになる学校に通っているのだが、
カツカツカツ
「くそっ、ヒール野郎が。」
カッ……ドゴォン!!!
「おいおいクソ野郎、テメー今なんつったオラ?」
どこのどいつか知らねぇがたまに俺のことを糞ヒール野郎なんて呼ぶ奴らがいる。そういうやつは壁に叩きつけて顔面スレスレを壁が凹むくらい蹴ってやらぁ大抵静かになりやがる。
「ひぃっ!!」
「なんだぁ?俺をなんて呼んだって聞いてなんで小便なんてクソ汚ねえもん漏らしてんだ?あ゛?」
「ごめ、ごめんなさ、ごめんなさい。」
「ゴメンナサイじゃねぇだろ。何つったって聞いてんだよこのプシー野郎。」
ガクガクに足を震わせてクソ汚ねえ小便を撒き散らすプシー野郎の髪を鷲掴み無理やり目線を合わせる。
「いいかぁ?俺がヒールなのは認めてやる。だけどな?俺の履いてるこいつは俺の趣味じゃねぇ、国から義務付けられてるって事忘れんじゃねえぞ?」
そう言ってプシー野郎の顔面の横を蹴ったままにしていた足をカツカツ鳴らす。
そう。俺はヒール野郎と呼ばれてる。それは俺が踵の高い靴を常に履いていることを揶揄った呼び方だ。
この世界では魔法を使うのに一人一人条件が設定されているらしく、俺のお袋は片目を瞑ること、親父は指を鳴らすこと。じゃあ俺は?
踵を地面につけないこと、だ。
それ故にこの学園に入学する時常時魔法が使えるようにと俺はハイヒールの着用が義務付けられた。
「今度俺をヒール野郎なんて呼んでみろ、次はテメーのイチモツぶっ潰してまじもんのプシー野郎にしてやるよ。」
最後に飛びっきりのあくどい笑顔で嗤ってからそいつの頭を離してやる。
カツカツカツカツ
足元から響く忌々しい音にももう慣れた。ヒール野郎上等。嘲笑うやつには制裁を与えてやればいい。
なんてったって俺は最高にクソなヒール野郎なんだからな。
いつか長編で書く予定をしております。
それのサンプルと覚書を兼ねていますので設定などわかりにくいと思いますがご容赦ください。