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第8項―思ひでの続き

自らが捕獲され、5年ほど。

水も食料も出されていないのに、生きていた。

本当は死んでいるのかもしれないが、確かに地に足がついている。

手足は鎖に繋がれ、身動きが取れない。

すこしでも揺すると、カチャカチャという音が、かなり大きな音になって牢屋に響く。

太い格子が目に見えて、暗闇が照らしている。

ふと、思い浮かんだのは、人のと黒く染まった炎。

なぜ今になって思い出すのか、不明である。

ただ生きていて、ただ縛られている。

不自由でつまらない世界に生きる意味など求めてはいけない。

単なる妄想に花を咲かせてはならない。

それは苦になり、汗になる。

ひたひたと顔から垂れた汗が、ピタリと落ちた。

硬い地面に触れ、音が鳴る。

真っ暗で暗黒に染まった血溜まりが遠くに見える。

ふと、思いついたのはどうやったら逃げれるのか。

この不自由な世界を抜け出したい。

そう思った。

立ち上がり、鎖を物凄い勢いで抜く。

鎖が繋がれていた壁が破壊され、手足に鎖がついたまま歩き出す。

壁の方を見やって、小さな穴が確認できた。

穴を覗くと、とても広く大きな階段と、その脇にすこしずつ松明が飾られている。

階段の下は完全なる空洞で地面が見えないほど暗い。

階段の先は大きな扉があり、それは閉ざされている。

好奇心が擽られた。

周りに聞こえるように鎖をならした。

鎖がとれているので、扉が開かれた瞬間に逃げ出した。

大男は困惑していたが、なにも気に思わなくなったのか、いつものルートをまた装備で五月蝿くしていた。

コツコツと足音がすこしなった。

階段の上まで行くと、大きな部屋があり、通路がふたつあった。

右は景色が一望できるバルコニーがあったはずだ。

左側に歩き出す。

どこからともなく音が聞こえてきた。なにかの声のようだった。

しかし、なにを言っているのかはわからない。人間の言葉でないのだ。

通路の先は大きな部屋になっていて、大男が座っていた。

細身で剣をつがえた男がその横で寝ていた。

細身の男が起きないように大男の背後に近づいた。

右手側にあった小ぶりのナイフを手に取り、大男の首に刃を当てる。

すると、すぐに大男は声をあげて叫んだ。

細身の体がぴくりと動いた。がたんと寝転がっていたベッドが揺れた。

ふうと息を吐いて、覆い被さっていた大男をのけた。

次に細身の男に近づいて寝に老けているところを突き刺した。

突き刺さった刃を引き抜くと、血がたらたらと皮膚を滑り落ちる。

先に来た通路から声がした。

奥に続く通路を走り出した。音を立てぬよう注意しつつ。

ぐねぐねと通路がくねっていた。

足場が悪く、土が踏みずらかった。

今度は小さな穴があった。人ひとりが通れるほどしかない。

這いずって穴を通ろうとした。

すると、背後から声が聞こえるではないか。

思いきり振り返った。

そこには巨大な刃物を掲げた大男が立っていた。

しかし、いつも見てきた大男とは違うところがあった。

仮面が頑丈そうで、刃物も両手でやっと支えているほどぷるぷるしている。

あれだけになると相当な重さを誇るのだろうが、こちらとしては部が悪い。

どうにか切り抜けようと、そいつを無視し穴の奥へ這いずっていった。

穴はそれほど長くはなかった。

穴の中からあたりを見回し、敵がいないことを確認すると、すぐに穴から飛び出した。

壊れた壁から見えた階段にたどりついた。

しかし、階段は目の前にある。

格子がかかっていてかろうじて見えるレベルである。

ものすごく硬いので破壊することはできないだろう。

壊れていた壁と思われる場所を見つけた。

とても小さな穴だった。

格子の隙間から階段の下を見ると、玉座があった。

もしかして、闇の炎の続いていたところだろうか。

誰かが玉座に座っていた。

顔が気持ち悪くて、がたいが良い。

周りにはふつうの大男らが立っていた。

ずっと眺めていると、ひとりの大男がこちらに気がついた。

こちらによってきたので、すぐさま逃げた。

格子を開けて、ずっと続いている石畳の通路をてくてくと歩く。

なんだか不安になっていたが、玉座に座っていた何かもこちらに来だした。

正直かなり恐怖だった。

足がすくんで声がでない。

次第に足音は遠ざかっていった。

刃物を握り直した。

階段の下を降りていく。

ひとり大男がいたので、そいつを殺した。

すると、殺した大男が何かを持っていた。

鍵のようだった。月のマークが描かれている。

それをポケットにしまった。

風を切る音が聞こえた。

後ろからだった。

もしかして、と思って振り返ったときにはもう遅かった。

死んでしまった。

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