第7項―ある人の思ひ出
…………。
訳も分からず、ただ生きている。
生存の意味とは。
疑問符がたくさん浮かび上がる。
遠くで火が燃え上がる姿が見える。
近くで人が倒れている姿が見える。
起きる気配はない。
手足に枷がはめられていて、動くことが出来ない。
ふと、大男の姿が見えた。
あたりを徘徊しているようだった。
同じところをグルグルと……。
ただ、ただ、同じように。
彼も生きる意味というのを考えているのだろうか。
もし考えているなら、彼はどう思うのだろう。
ふと、ピクリと動く姿があった。
目の前で悶え苦しむ人。
ああ、残酷だなあ。
所詮は死にゆくだけの運命よ。
遠くでボぅと火が揺れ動いた。空気が流れる。
見えないくらい遠くで暗い、くらい、火が燃える。
闇の炎とは誰も知らない。
命を絶やす姿が、見えた。
炎が暗くボぅと……。
ムクリと起き上がる影があった。
顔は見えず。が、こちらを見ている。それはわかる。
立ち上がって、格子に触れる。
冷たさを肌で感じて、すっと離す。
あたりを見回して、ビクリと体を震わせる。恐怖に感嘆した。
大男を見つめ、隠れるその姿を、なんと呼べばいいのだろうか。
剣に討ち振るわれたような、そんな出で立ちで、立ちすくんでいる。
人は自らの存在に気がついているのか。
そんなことが知れず、動くなと制す。
鎖がカランとなった。
それがトリガーになって、大男がこちらに向かってくる。
人はそら寝を決め込んで、大男から身を守る。
人は知っていると確信した。この世界と存在価値を。
大男が自らを刺す。
血が出て、激痛が伴った。
自らが人の危険を犯してしまっては、自らで処理しなければならない。
自分は死なないと知っている。だから、刺される。
死んだフリをし、人を殺さないようにした。
刹那。
人はぶち蹴られ、体を壁に当てた。
これで死なないとは、人も同じか。
ここで死んだものは、廃棄される。
それを知っていた自らは、人を来るように促す。
死んだフリをかませ。それでいればいい。
コツコツと硬い階段を上る音とともに、担がれて運ばれた。
なにの変哲もない地下室を通り過ぎ、地上へ。
バルコニーにでて地上を一望する。
特に何も無い孤島である。
ガチャガチャと鍵を開ける音がした。
篝火があり、声が聞こえてくる。
黒い炎。
闇の炎。嘘に包まれている。
真の赤く、キラキラと燃える炎は。
ないに決まっている。
声の主を見よ。
嘘に塗れて、大男達を支配する顔だ。
床に体を置かれ、人も同じようだった。
ここまでしか見たことがない。
闇の炎。
嘘がついた炎。
嘘の炎。
声がやみ、動き出す。
人も合わせた。人はやる。信じてる。
「飛んでこい!」
バッコーン!
とてつもない爆音でかき消される。
下の川を望み、バルコニーから一気に飛んだ。
躊躇した人。
下で大男に構えられていたので、捕まった。
人は飛び降りた。
すると、大男の剣を引き抜き、闘うではないか。
抱えられた男に、首をキリリと切られた。
ひとり、またひとりと、倒していく人の姿があった。
勇ましかった。
意識はもう持たない。
真っ白ではなく、ぼんやりと視界が染まっていく。
後方から氷魔法が飛んでいく。
人は死ななかったのだろうか。
――また捕まってしまった。……。