第5項-繰り返される運命と闇
何をしたものか…篝火に当たらなくなったどころか周囲が暗黒に飲まれていく様だった。
何かを見逃しているわけでは無いのか?しっかり調べて回ったが一向に篝火が見当たる気配はない。
ひたすら行き来して歩いた。
するとある事に気が付き始めた。
だんだん対面までの歩数が短くなっている気がする。
最初の方は30分ほど歩いて対面に着いたが、今では10~11分で着く。どう考えてもおかしい。
何かがおかしい。
だんだん距離は短くなっていく。
するとふと、あるものに目が止まり、ひとつの結論が生まれた。
その見たものとは火の近くにあるのに溶けない氷だった。
そうだ。この世界には魔法という物が存在する。
闘技場で戦ったあいつも氷の魔法を使ってきた。
もしかしたら…そう思って、歩みを早くする。
カタカタと石畳を軽快に叩く音が激しく鳴る。
壁に手を当てる。
硬く冷たい。これは本物の石だ。
逆はどうだろうか?
壁はすぐそこまで来ていた。
焦らずに手を当てる。
冷たくないし、手触りもない。手がすり抜ける。
やはりそれは思った通り.....魔法だった。
誰かが見ている。監視されている。
誰だ?!振り向いても誰もいない。
松明がぼうぼうと燃え盛っていた。
影が見えた。
顔をあげると、そこには大振りの両手剣を構えた1人の男がいた。
その背後には、本を片手にもう片手をこちらに向けたおばあさんが1人。
2対1は部が悪い。ここは引き下がった方が良いだろう。
相手より一回りも二回りも小さい剣を構えて後ずさった。
ずるずると裾が引きずる音が聞こえる。チャりと剣が振れる音も聞こえる。
壁に背が当たる。
その瞬間、敵は剣をつき立てた。
火花が散り、危うい命を助ける。
鍔迫り合いを押し切り、走り抜ける。
数回曲がると梯子がかかっていた。
敵影は見えなくなっていた。きっと逃げきれたのだろう。
荒れた呼吸を整えて梯子を伝っていく。
梯子は上にも下にも繋がっていたが、ベランダから見えた景色から下に降りようとした。
敵にバレないように急いで降りる。
一番下まで降り切ると、階段があった。
敵の声が聞こえて来たので、近場にあった小部屋に侵入することにした。
どうやら物置だと思う。
ごちゃごちゃした部屋にはどうしてか異様な雰囲気があった。
後に敵の存在に気がついた。
その時はもう遅かった。
疲れて倒れているところを物置の敵は魔法でゆっくりと動けなくした後で、じっくりと黒い炎を焚いてぶち込んだ。
その炎は後に、闇の炎として語り継がれていくことになった。
目覚めると牢獄だった。
ここはどこだ?
そんな甘い考えで立ち上がろうとするが、できなかった。
なぜなら、手に鎖。足枷まで付いてきた。
目が覚めたことを大男が気がついて見つめ認めると、手に持つ斧で首から上をギリギリで吹き飛ばした。
血がたくさんでた。ドバドバだった。意識が薄れていく。
どうしたらいいんだろう?
そう思うのに、なにを思ったのか無意識に手足の枷の元を引っこ抜き大男を殴り血を流させた。
たった数秒の出来事だった。
火が牢獄中を照らしていたが、大男の血で光は耐え、赤黒いもので埋まった。
立ち上がり、動き続けた。