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第10項 ―殺人の殺人

視界は食べ物で埋まっていた。果物、肉、野菜、さかな……。その他たくさんの高そうな料理が並んでいた。

服装はきらびやかで綺麗な装飾で彩られていたものを着用していた。

雰囲気も同様に一般の家庭では考えられないようなものばかり置いてあった。

そして、目の前には大きな机を超えた先に大きな椅子に座り込んだ男がいた。

「さて、ここへ来た用は?」

男はたくわえた立派な髭を上下に揺らしながら、話しかけてきた。

ただ鎖が手足についていて、口もふさがっていたため話もろくにできそうにない状態だった。

気がつかなかったが背後に立っていた男が目の前の男の発言に言葉を返した。

「このものは、町のはずれで倒れていたところを確保されました。住人に話を聞いたところ、朝起きたらいたとのことで近隣の住民は知らない人であるということです。ということでたぶん城から来たものだと思われます」

ふむといって困った様子で目の前の男はひげを撫でた。

などと思っていると、視界を奪われ、暗闇に落ちた。

重たい扉がきぃーと開く音がした。

椅子ごとどこかへ運ばれる感覚がどれくらいかした。

突然止まったかと思うと、首のあたりに妙な違和感を覚えた。

その感覚は首を一周回ったような感覚で、あさのような目の粗いざらざらした感触が印象的だった。頭には疑問符が浮かび上がり、何を思いつくこともなかった。

すると、視界が解放され、手足の鎖が外された。

周辺に何人もの人が自身を囲んでおり、ちょうど目の前の男はあのたくさんの食事がのせられた卓を超えたさきにいた人だった。

これから何をされるのか、なんでこんなことになっているのか、見当もつかなかった。

周囲を一周して、自身が力を抜くと、目の前の男は何か声を発した。

次の瞬間、地面が落ちて足元が消えた。

首にかかった見えない何かが首を絞め、手を使ってほどこうにも固すぎてピクリともしない。

それに自身の体重が重なり、もう死にそうだと感じていた。

自身を囲んでいた人たちは自身のもとへ駆け寄り、まだ生きていることを確認すると、首から上に伸びたなにかにハサミを当て、

――ぶった切った……。

体は落ちていき、地面が見えなかった。

真っ暗闇に落ちた。

あまり時間のたたないうちに、落ちてきた扉が閉ざされた。

本当に真っ暗になり、夜目のきかない鳥目は、真っ白の視界を瞬間で真っ黒に染め上げた。

そしてそれ以上はなにも思わなかった。思えなかった。


王は言った。

「食事中に、そのような粗末なものを見せるな。汚らわしい。殺せ」

恐怖政策で出来上がった、この王の国で、王に従う家来は、ただ、はいとつぶやいて、準備をすぐに始めた。

そして処刑部屋に通されると、汚らわしいなどと言われた者は、地面の中に消えていった。

がしかし、この国は、それを実行すると、一週間とたたずして消えていった。王は死に絶え、国中は壊滅的な病気によって手に負えない状態になり、近隣国家は見放したという。

ただの流行り病だったのか、それとも……。

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