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竜の心臓移植 (旧題 ある竜の転生)  作者: こげら
四章 ある少女の希求
71/92

<拾伍>


 「伊瀬っ!」


 僕を発見した伏見は必死の形相で僕に駆け寄った。


 想定より随分早い到着だった。彼女の自宅からこの学校までは少なくとも数十分かかる。自転車に乗ろうと交通機関を使おうと、それは変わらないはずなのだが、どこかに外出でもしていたのだろうか。



 「何でお前、こんなに早いんだ?」


 「何でって、よく分からないけど、外を走っていたみたい……って、そんな話をしている場合じゃないだろ! 病院! 救急車は!?」



 と、僕の体に触れ、状態を確認しようとした伏見はようやく、異常を察知した。僕が異常であるということを、体のどこにも、先ほどの戦闘行為によって刻まれた傷が残っていないという異常を、である。



 「……え……え、あれ。どうして。何でお前は……。伊瀬。お前、さっきの傷は。何でそんな何でもない風にしていられるんだよ。だってお前はさっき、私に……」



 刺されたではないか。と、言いたかったのだろうが、多分あまりの驚きに、伏見は絶句する。



 「落ち着けって。取り敢えず今は、僕が無事だってことだけ理解してくれれば良い」


 「そんな……。だって、人があんなもので突き刺されて無事でいられるわけないだろ!」



 ご尤もな意見である。しかしその常識的な見解には、全うな人ならば、という限定条件を付け加えておかなければならない。



 「そんなに疑わしいならちゃんと見てみろって。ほら」



 僕はまたしてもシャツの裾を捲りあげた。勿論それは引き締まったボディーを見せびらかすためではなく、既に傷が完治していることを証明するために、である。



 「――伊瀬、これはどういうことだ」


 「どういうことも何も」


 「どうしてお前の腹筋が割れている!?」



 ――引き締まったボディーの方見てたよ!



 「確かに僕は、一見して腹筋が割れているようなキャラには見えないだろうけど」



 僕の腹筋が割れているのは、何を隠そう縁のお蔭なのだが……。と言うか、僕の腹筋が割れていることと、傷の治りが速いことは密接に関係しているのだが……



 「お前が今驚愕すべきは果たしてそこか!?」


 「すまない。あまりに意外だったもので」


 「何だよ。僕のような日陰者には似合わないってか?」


 「いや、どうだろう。これは所謂、ギャップ萌えというやつなのではないだろうか」


 「お前は筋肉に萌えるのかよ!」



 筋肉萌え。


 ――言葉のミスマッチが凄いことになってんな。


 さておき、伏見は改めて僕の腹部、穴の開いていた場所を入念に観察し、凝視し、触診しようやく、僕が完全に無事であるという確証を得たらしく、酷く安堵して、その場に膝から崩れ落ちた――。



 「記憶は、残ってるん、だよな」



 僕はあまり期待せずに尋ねた。祠の主に為り代わっていた記憶がなければ、僕を傷付けたことに彼女が罪悪感を覚えることもまたない、という可能性が僅かにもあったからだ。



 「ああ。曖昧な部分もあるが、お前が来てくれた時からの記憶は、はっきりと」


 「そうか。じゃあ、まあ、お前にも分かるだろ。世の中には不思議なことがあるんだ。知らないだけで。知られてないだけで」



 ――僕は竜と出遭った。そして強靭な生命力を受け継いだ。



 「お前が神様になっちまったみたいにさ。――並の人間より、傷が簡単に治っちまうんだよ、僕の場合」



 今回は特に、伝説の竜である縁に治療を施されているため、回復に時間がかかるとされていた、即席神器とやらから受けた傷も、見た目にはもう完全に癒えている。



 「だからこのことは、気にしなくて良い」


 「――無理だよ。そんなの無理だ。だって、すぐに治ってしまうんだとしても、私がお前を傷付けたことには変わりがない。私がお前に痛い思いをさせたのは、私がお前を殺そうとしたことは事実だ。私にこんなことを言う資格がないことは分かっているが、言わせてほしい。――すまなかった」



 伏見は深々と長々と頭を下げた。


 まあ、当然と言えば当然の振る舞いである。予想していた反応だ。


 もし自分が彼女と同じ立場だったなら、クラスメイトの体に穴を空けてしまったら、それが故意にしろ過失にしろ、僕も今の彼女と同じような態度をとるだろう。決して赦されずとも、それでも謝るだろう。



 「私はお前のためならどんな罰でも受け入れる。どんな償いだってする。お前の言うことなら、何だって聞く。私の全てをお前に差し出したって構わない」


 「おい、そりゃあ、どういう……」


 「つまり、私の体をお前が好きなようにして良いということだ!」



 ――良いのっ?! マジで!?


 ……いやいや。……うん。


 ……まあ勿論、紳士な僕は一瞬たりとも、気持ちが揺らいでなどいないのである。本当に揺らいでなどいないが、余計な詮索を防ぐために、全うな男子高校生としてのリアクションを一応心の中で示しただけなのだ。


 もう一度言っておこう。本当である。



 「女子高生が憚りもなくそんなことを宣言するなよ。勘弁してくれ。お前は僕を、同級生女子の肉体を弄ぶことに喜びを感じるような下劣な人間だとでも思ってんのか?」



 全く、心外だな。



 「でもお前は私に、いやらしい見返りを期待しているのだろう?」



 確かに似たような台詞は言ったけど!



 「ディティールを疎かにするな。僕が言ったのは、『いやらしくも見返りを期待している』だ。別にいやらしい期待はしてねえよ!」



 ちょっとしか!



 「じゃあ、だったら私はどう償えば良い。どうお前に贖えば良い」


 「だから、何度も言ってんだろうが。償いなんていらない。お前が僕に贖えることなんて何もない。僕はもう、お前を赦してんだから。お前が戻ってきてくれた。それで全部ちゃらなんだよ」



 そもそも僕は伏見のことを恨んでなどいない。僕の腹を刺し貫いたのは、出自も明らかになっていないマイナーでローカルな神様でしかないのである。神の不条理を恨んだり怒ったりしたところで、何にもならないということは自明だろう。絶対的な権力に裏付けされた理不尽や不条理など、諦めて受け入れるしかない。



 「それに、あれは僕が自分から刺されにいったわけだし。逃げようと思えば逃げることも出来た」



 劣勢とは言え、縁の力を借りればあの場から確実に逃走することも出来たはずだし、もう暫くの間、回避し続けることも可能だった。そうしなかったのは僕の意思だ。回避行動を止め、回復することが分かった上で攻撃を体で受け止めたのは、僕が下した決断だ。


 そもそも祠に訪れ、神様だった彼女を呼び出し、わざと挑発するようなことを言ったのも、僕の意思である。だから極端な言い方をすれば、彼女に僕を刺させたのは、他ならぬ僕なのだ。


 彼女が伏見空であるという確信を得た段階で、ある程度の覚悟を僕はしていたのだ。伏見が神などになってしまった経緯を知っていた僕には、彼女がそう簡単に人間に戻ってはくれないだろうという予測があった――。


 全て承知の上で僕が勝手にやったことだ。



 「お前はそうやって、私が気に病まないように、気を遣ってくれるけど、本当に私なんかがお前と友達になって良いのか。お前を殺そうとした、私なんかが……」


 「良いのかって言われても、今ここにお前がいる時点で、僕たちはもう友達だからな。今更なかったことには出来ねえぜ。――伏見、お前は僕と一生友達でいなきゃならないんだ」


 「ストーカーみたいな台詞だな。今のはちょっと怖かった」



 ――相変わらずの遠慮の無さである。


 しかしそれでこそ伏見空だ。嘗て僕の憧憬の対象であった彼女だ――。



 「こんな私を、ありのままの私を、本当に認めてくれるのか? それは贅沢じゃあないのか?」


 「ぷふっ」



 ありのままの自分、なんて月並みなことを平気で言う伏見に、僕は思わず吹き出した。



 「な、何で笑う?」


 「いや、お前があんまり青春みたいなことを言うもんだから。ありのままとか、自分らしさとか、お前それ、世界一平凡な台詞だからな」



 ――まあ、これは多分、まさしく青春なのだろうが……。



 「ありのままじゃない自分なんていないよ。強いお前も弱いお前も、嘘を吐けないお前も、悩んで、苦しんで、神様なんかに頼っちゃうお前も、全部ありのままのお前だろ。伏見空は伏見空らしくしか振る舞えない。お前はお前以外ではいられない。――その全部を受け入れてもらおうなんてのは、確かに贅沢なんだろうよ。人によって好みもあるだろうし、気分で決まることだってあるかもしれない」


 「そんな曖昧な――」


 「曖昧なんだよ。人が人をどう思うかなんて」



 人の思う善悪や好悪ほど、不確かなものはない。酷い罪悪感だって、大好きな気持ちだって、いつかはなくなってしまうかもしれない。


 普遍性など、証明のしようがないし、この世には絶対もまたあり得ない。



 「人間には良い一面もあれば悪い一面もある。良い時もあれば悪い時もある。常に正しくて、誰からも好かれる人間なんていない。全員にとって都合の良い人間なんて存在しない。お前だってそんなものが欲しかったわけじゃないんだろ?」



 ――そんな承認のされ方など、そもそもあり得ない。あるとしても、それは狂信や妄信と言った、危ういものであるはずだ。



 「逆に言えば、誰からも嫌われる人間なんてのもいないんだよ。多くの人から否定されるような人間でも、誰か一人くらいには認められてるもんだ。それは本人が気づいてないところでかもしれないけど、そういう人間がいるかもしれないってことを忘れちゃ駄目だ。そんな可能性まで否定しちゃ駄目だ。――自分を卑下するな。勝手に過小評価するな。自分で自分を否定するな。お前を強烈に承認してる奴だって、ちゃんといるはずなんだから」



 それは例えば、家族だったり、部活のチームメイトだったり、影の薄いクラスメイトだったりする。


 ――例えば神様に願ってしまうほどに、例えば命を懸けてしまうほどに、お前を応援する人間だって確かにいる。そんな人たちの想いが、僕たちの想いが、伏見空の努力を否定するような人々の想いに、負ける道理があるものか。



 「お前にとっては僕なんてどうでも良い奴なのかもしれないけどさ」



 僕の承認なんて、意味がないのかもしれないが、でも、僕にとって伏見はそうではない。



 「どうでも良いわけない! 自分のことを命懸けで叱ってくれた奴のことを、どうでも良いなんて、言えるはずがない。私が人間に戻ったのはお前がいたからだ。お前が私の弱さを否定してくれたからだ。私にとっては、お前こそが特別で、お前こそが私の、人間でいる意味だ」


 「嬉しいことを言ってくれるな。お前にそんなことを言ってもらえるなら、甲斐があったってもんだ」


 「何度でも言うさ。伊瀬。私を拒絶してくれて、認めてくれてありがとう。私のことで、命懸けになってくれてありがとう。嬉しかった。その事実があったというだけで私は、生きて行ける」



 生きて行けるなんて、大袈裟な奴。



 「――お前を傷付けたことは、やっぱり赦せないけど、お前が贖うなと言うのなら、そうする。負い目を感じるなと言うのなら、感じないことにする。それは嘘かもしれないが、嘘が本当になるまで、私は私を騙してみるよ」


 「悪いな。お前に嘘なんて吐かせちまって」


 「悪いことなどあるものか。良いのだ。私はちゃんと嘘を吐ける人間になりたいんだ。他人と上手くやっていけるように、ずるくなりたい」


 「そんな小器用な人間になっちまって良いのか? 僕は正直で不器用なお前のファンだったんだぜ」


 「ああ。私は変わらなければならない。同じ失敗繰り返さないためにも、お前の言ってくれた通り、方法を考え直すべきなんだ」



 確かに僕が言ったことではある。何より、伏見が変わりたいと願うのなら、願い、自分自身の意思と労力で変わろうと言うのなら、それは僕が口を挟むようなことではない。



 「……伊瀬。もし迷惑じゃなかったら、こんなことをお前に頼むのは、図々しいのだろうが、私にずるさを、嘘の吐き方を教えてくれないか?」


 「何で、ずるさとか嘘の吐き方を教えられる相手が、僕でなきゃならないんだ? 僕がずるい嘘吐きだとでも言いたいのか?」



 ――別に否定はしないが。



 「何を言ってる。そんなことは決まってるじゃないか。私には、お前しか友達がいないからだよ」


 「また消去法かよ」


 「おいおい。自分を卑下するなと言ったのは、お前じゃなかったのか? だったらはっきり言ってやる。何かを教わるなら、私はお前が良い。何かをするなら、私はお前と一緒が良い。お前以外では嫌だ。お前が私にとって特別だから。お前が私を見つけてくれた、唯一の人間だから、お前の前では正直でいられるから、だからお前に頼んでるんだよ」



 恥ずかしいことをすらすらと言ってくれる。こいつには、羞恥心とかはないのだろうか?



 「お前さては僕の事大好きになっちゃったんだな?」


 「ああ、そうだとも。私はお前のことが大好きになってしまったのだ」


 「否定されない!」



 ホント、羞恥心はないのか。



 「何だ。否定されたかったのか?」


 「いや、されたいわけじゃなかったけど、少なくともそういう返事がくるのを予期はしてたよ」



 と言うより、自意識過剰だとか、気持ちが悪いだとか、そういった罵詈雑言を浴びせられるものと覚悟していた。



 「私は案外、ちょろい女なのかもしれないな」


 「自分で言うの!?」



 ――しかも笑顔だよ。拍車をかけて赤裸々だな、こいつ。流石、伏見空。



 「いやあ、白状すると、以前の私はあれでも一応、本音をセーブしている方だったのだ。それが、何と言うか、今回のことで箍が外れたと言うか。ああ、無論、私がこれだけ自分を解放出来るのは、お前の前だけなのだろうがな」



 女の子が自分に対してだけ心を開いてくれるというのは、本来なら物凄く萌えるシチュエーションなのだろうが、何故だろう。全然喜べない。


 きっと僕は怖いのだ。枷の外れた伏見が、どれだけの底力を秘めているのか、その底知れなさに、僕は慄いている。



 「遠慮をするな。お前なら、私でいくらでも萌えてもらって良いのだぞ?」


 「ていうか、ほとんど別人じゃん! 誰なんだよ、お前!」



 僕の知っているクールビューティー伏見さんは、そんな見境のない台詞は言わないぞ!



 「私か? 私は、そう。ぼっち飯だけを食べてここまで大きくなりました、でお馴染みの伏見さんだ」


 「悲し過ぎる!」



 ――しかもお前あんまり大きく育ってないし!


 身長のことを気にしているらしいので、本人には決して言えないが、だとしたらぼっち飯の栄養バランスって最悪なんじゃないのか?



 「あー、すまない。この言葉は、伊瀬、確かお前のキャッチコピーだったな」


 「全く必要のない気遣いをするな。気遣いというか、今のは完全に僕を傷付けに来てたよなあ!? 僕にそんなキャッチコピーは付けられていない。そもそも募集してねえよ」



 くそう! 僕の憧れの伏見さんが、こんな子だったなんて!


 面白味は増えたけど、格好良さが減ってしまった。



 「修学旅行はきっと地獄、くらいのキャッチで、私は手を打っておこう」


 「境遇が同じ過ぎてフォローできない」



 何でああいう行事はやたら集団行動を強いるのかなあ。


 ……まあ、学校行事なんだから、当たり前だけど。僕たちみたいな子供を、社会不適合者にしないための学校でもあるんだろうけど。



 「班行動とか、部屋割りとか、全部廃止すれば良いのに」


 「それはもう、一人旅じゃねえのかよ」



 修学一人旅行。――うーん、普通に楽しそう。



 「伊瀬はまだ良いよな。犬上がいるんだから」


 「あのな。あいつはクラス、どころか学校中の人気者なんだぜ? そんな奴が僕なんかと同じ部屋とか班に振り分けられるわけないだろ。もし仮にそうなったとしても、残りの班員にあいつは引っ張りだこだろうよ。僕一人が独占しようもんなら、そりゃあ酷いバッシングを受けることになる」



 今でさえ、昼食を一緒に食べているだけで、白い眼をされているのだ。



 「ではどうだろう。私とお前と犬上で組むというのは」


 「いや、昼間の班分けは、まあ一応問題ないだろうけど、部屋を同室にするってのは無理があるだろ。あの寛大な米村先生だって、それは流石に見過ごさないだろうぜ」


 「そうか? 私は髪が短いからいけるのではないだろうか」


 「お前にとって男女を区別するポイントは髪が長いか短いかだけなのか!?」



 こいつは昨今ショートカットが流行っていることとか、この世にロン毛の男子が存在していることとかを知らないのだろうか。



 「そもそも若い男女が同じ部屋に泊まるなんて、倫理的な問題があるだろ。先生に止められるまでもなく」


 「うん。その点に関しては、覚悟はしているのだ。女子部屋で一人、惨めな想いをするくらいなら、むくつけき男子どもに純潔を奉げても構わないと、私は思っているぞ」


 「お前クラスメイトの女子と泊まるのどんだけ嫌なんだよ!」



 たった二、三日肩身の狭い夜を過ごすことに対して、どれだけの嫌悪感があるというのだろう。女子って怖い――。



 「おっと、これはうっかり。私が未経験者であることがバレてしまった」



 なっ! 何言ってんだ、こいつ!



 「もう一度言う。お前本当に誰なんだよ!」



 下ネタに耐性がある、どころの騒ぎじゃない! 自分から積極的に使いこなしてんじゃねえか。



 「だから、私だよ。教室で独りぼっちな私も、男の前でも平気で下ネタに走ってしまう私も、全部私だ。お前が言ってくれたのではないか」


 「僕の良い台詞が台無しだあ!」


 「ふん。お前の台詞は最早ただの、詞だ」



 台詞から台の字を無くせば、詞。



 「お前、それで巧いことを言ったつもりか?」


 「ああ。私は今、巧いことを言ったのだ」



 ――のだ、って……。やっぱりこいつ、実はまだ元に戻ってないんじゃないのか? はっちゃけ過ぎだろ。


 これが本来の伏見空なのだとしたら、批判されるのを覚悟で言うが、詐欺だ。いや、伏見がどんな人間であろうと、多分僕は同じことをしただろうが……いや、うん。どうだろう。しただろうか? したかなあ?


 ……いや。いやいやいや。しただろう。きっとしたはずだ。


 ――なんて、自分を疑ってしまうくらいの変貌ぶりである。これは恐らく、彼女の中身が入れ替わった時の衝撃にも匹敵する。



 「これが私なのだ。駄目かな?」



 照れくさそうな微笑みを伏見は浮かべた。


 その意外なほどに無邪気で愛らしい笑顔を取り戻すことに、自分が寄与したのだと思うと、僕は堪らなく誇らしかった。


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