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恋愛学園  作者: りん
入学
7/17

あまい話の裏には恋がある

「恋愛活動部に入部しないか?」




今朝、佐々波がこの学園の生徒だと知ってから密かに考えていたことだ。なぜなら…………川谷誘ってもめんどくさそうだなぁと思ったから。だって見ただろ?昼休みのあれ。誘ってもいいことねぇって。というわけで比較的常識人(?)な佐々波を勧誘しようと思っていたんだが………



「恋愛活動部ってなに?」



まー。そーですよねー。そりゃあ疑問持つよねー。よく考えれば俺自身もよくわかってないし。あのときはただ、他の知らないやつらと一緒にいるよりはいいかな?程度でしか考えてなかったんだよな。


「う~ん。まぁいいよー。」


俺が言い淀んでいるうちに佐々波が返事を返す。

ってえぇ!?いいの!?軽くない!?


「本当にいいのか?」

「うん。久城くんが一緒なら、ね?」


佐々波が微笑んで言ってくる。ヤバす。これは精神的に悪い。俺は女子に対しての耐性はいっさい持ち合わせていないというのに。


「そ、そんなこと言ってたら誰かに勘違いされるぞ」

「本当なんだけどなー」



…………………………へ?



「今、なんて……」

「あ、もう昼休み終わるよー。早く戻ろー」


聞く前に足早に去っていく佐々波。今のはいったい………。




――――――




「で、佐々波も入部決定ね」

「いったい何があったの?」


放課後、屋上で遠藤に佐々波のことを説明すると聞き返された。

まー。そりゃそうなるよね。いきなりこんなこと言われたら。


「よろしくねー。遠藤さん」

「え、あ、はい。よろしくお願いします」


佐々波が微笑むと笑顔で返す遠藤。そして目で俺に訴えかけてくる。邪悪な笑みを浮かべながら



〈詳しく説明して?〉



怖い、怖いですよ!遠藤さん!!オーラ出てるって!!ていうか目だけで言葉を伝えられるってテレパシーか!あんさんどんだけ超能力者なんだよ!あー!すいません!説明しますから!説明するんでそんな怖い笑顔をしないでください!!



〈土曜日に偶然遭遇して、佐々波がたまたま迷子になってたものだから、勢いで案内をすることになっただけなんだよ〉



俺も目で訴えてみる。でも俺にそんな力はないわけだが、人(俺)の心を読める遠藤ならばいけるはず。



〈言い訳はいいから。白状しなさい。今ならある程度は容認できるから〉



言い訳じゃないんだけどなぁぁあ!?事実以外のなにものでもない!あれだな。無実なのに有罪判決を言い渡された人の気持ちってこんな感じなのかな。

俺が絶望に呑まれていると天使が舞い降りた。



「それで恋愛活動部って主になにするのー?」



その天使は佐々波だった。おぉ!佐々波よ!助けてくれるのか!ありがたやありがたや。


「というかそれ以前に部活すらできてないよな!」


これを気にと一気に話を逸らしにかかる。遠藤よ!ノリにのれないやつはKYだぞ!


必死に遠藤に念を送る。そしたら念が通じたのか(もしくは心を読まれたか)、遠藤も話にのってくれた。


「…………。まぁ、あと必要なことは顧問ですね」


ちなみに部活を創設するにあたって必要な事項は以下の通り。




・部員が3人以上であること

・顧問がいること

・学校に悪影響を与えない活動であること


(注) 活動内容が恋愛関係であればだいたいは容認されます




恋愛関係は学校に悪影響を与えないのか?

素朴な疑問が思い浮かぶ。

というか今よく考えて気づいたが………


「遠藤よ。狙ってそんな部活名にしたわけじゃないだろうな」

「な、なんのことかな?」


焦りだす遠藤。このやろう、図星だな?


「で、でもこんなことしてないで顧問を早く見つけようよ!ね!」


強引に話を進めようとする。次はないからな。


「でもそう簡単に引き受けてくれるかなー?」


そう言う佐々波。まあ確かに普通はそう簡単にはいかないよな。

だが、手がないわけではない。


「そこらへんは俺に任せておけ」

「当てがあるの?」


首を傾げてくる遠藤。ぬ、ここは普通に可愛いな。さっきまでは修羅になってたくせに。


「う~ん、当てというかなんというか?」

「ふうん、でもそれなら久城くんに任せるね」


なんだかんだで信用してくれる遠藤。しかも上目使いで。

なんか俄然やる気が沸いてきた。今ならなんでもできそうな気がする。よっしゃ、見てろ。絶対顧問を捕まえてみせる!




――――――




「篠沢せんせー。話があ『却下だ』て早いな!!」



その当てとはつまり篠沢先生。俺がまともに話した(?)ことがあるのは篠沢先生だけだしね。

ぬぅ。さすが篠沢先生、読みが早い。だが想定の範囲内だ!


「ほぉほぉ、そんなこと言っていいんですか?篠沢先生?」

「は?どういう―『なんでだよぅ。…ヒック。何度付き合っても』ちょい待てゴルァ!」


こっちの奥の手それは…………………脅迫。昨日、こっそりと録音したものを使用させていただきました。もちろんこのことは遠藤と佐々波には伝えていない。幻滅されるだろうから。


「さぁさぁ、いいんですか?断っても」

「クソ、卑怯者がぁ……!」


ハッハッハ。なんとでと言えぇ!顧問を捕まえるためならどんな手を使ってでも成し遂げてみせよう!そして篠沢先生が遂に折れる。


「……………………。しょうがない。今回ばかりだぞ」

「しゃあっ!」


激闘の末、俺の勝利。卑怯?なにそれ食えんの?いけないことをやったという自覚はある。ただ罪悪感がないだけで。


俺は用が済んだとばかりに先生の元を去ろうとすると後ろから小さな声で呟いているのが聞こえる。



「………………あとで地獄を見せてやる………………!」



聞かなかったことにしよう。




――――――




「え、顧問を見つけたのー?すごいね紅葉くん!」



翌日、放課後に昨日の戦果(脅迫)を報告する。

それに対して驚きの表情で喜んでいる佐々波。そう言われると頑張った甲斐があるがなぜか手放しでは喜べない。



「なんか不穏な空気が漂っているんだけど……」



ちぃ!勘がいい!いや勘がいいというより心を読めるのを忘れていた。気づかれる前に必死に話しを逸らす俺。


「ま、まぁこれで無事に問題は解決したな。」

「うん、そうだね!」


満面の表情の佐々波。佐々波は感情表現豊かだなぁ。可愛いし。



「そういえば佐々波さんはなんで恋愛部に入部しようとしたんですか?」



遠藤が突然佐々波に聞き出す。そういえば確かに聞いてなかったな。この前は俺がどうとか言ってた気がするけど………



「それは紅葉くんがいるからだよー」



佐々波がそう告げる。けど俺はよくわからない。


「よくわからないんだけど。俺、なんかしたか?」

「うん。したよー」


その言葉に遠藤はスッと目を細めたが俺は気づかない。

俺が悩んでいると佐々波が近づいてくる。軽やかな動作で。頬を染めながら。その1つ1つの動作に目を奪われ硬直する。そして佐々波が言い出す。




「紅葉くんが私に教えてくれたんだよ。恋を」




俺の唇に柔らかい何かが触れる。

それは今までに感じたことのない感覚だった。

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