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恋愛学園  作者: りん
入学
4/17

安心してください。青春してますよ。

「せんせー。相談したいことがあるんですけど。」


今、俺は生徒相談室にいる。だが決して問題を起こして呼ばれてきたわけじゃない。昨日の俺に対する暴言コメントについてだ。目の前にいる人は篠沢[しのざわ]愛子[あいこ]。俺の担任であり俺が相談を持ちかけた人である。そしてここに来てくれたからには相談を真面目に受けてくれる………はずだよね?


なぜか先程から篠沢先生は眉間にシワを寄せている。こえぇよ。この人からすごい殺気を感じる。おかしいな。まるで俺が悪いことしたやつみたいじゃん。相談持ちかけて殺気を感じたの初めての経験だよ。


「よ、ようするにですね。学園の公式サイトに書かれているこの誹謗中傷のコメントをどうにかして欲しいんですよ。」

「…………………………」


まだ黙りこくる。逃げようかな?なんか殺されそうなんだけど。俺的には「それは許せんな!」みたいなことを期待しているんだけど。これじゃ「あ?それより金寄越せや」的なことを言われても不思議じゃねぇよ。そしてとうとう篠沢先生の口から言葉が発せられる。



「青春してんじゃねぇぇえ!!!」



俺の予想の斜め上いってたぁ!!


「今の俺の発言をどう受け取ったらそうなるんですか!?」

「うるさい!!どいつもこいつも青春しやがって!!特にお前が腹立たしい!!」


なぜに!?俺イジメられているんですけど!?


「お前みたいな被害妄想青春男が嫌いなんだよ!!」


いや知らんがな!てかなにそれ!?


「いいか?お前はイジメられているんじゃない。妬まれているんだ。大した問題じゃないだろう?」

「それはそれで問題があるような気がするのは俺だけですかね。」

「うるさい!何もしゃべるな!私みたいな独身女に対する宣戦布告なんだろう!?そうなんだろ!?」


先生がどんどんとおかしな方向に行っている。これはなんとかしなければ


「先生、俺たちは学生なんです。先生方とは違ってまだチャンスがあるんです。しょうがないんですよ。」

「喧嘩売っているのか!?」


悪化してしまった。

先生はいったい何を望んでいるんだ!?えぇと、先生の言葉を要約すると


「恋に飢えている、と」



…………………………シンッ



一気にしらけた!!俺間違ったこと言ったかな!?

先生が俯いたと思ったら震えだす。………まさか泣いてはいないよな。

そして顔を上げたときには…………めっちゃ大号泣でした。はい、それはもう引くほど。


「なんでだよぅ。…ヒック。何度付き合っても結局別れちまうんだよぅ。私の何が悪いんだよぅ。」


どうやら先生の触れてはいけない過去に触れてしまったらしい。

なんか知らず知らずのうちに俺が相談相手になっているんだけど。先生仕事してくださいよ。


「えーと。……それでは失礼します!」


これ以上いると八つ当たりを受けそうだからさっさと逃走。あの人あれで教師やっていけるのだろうか。ちょっとだけ不安に思いながら教室を目指す。



――――――



「時間の無駄だったな。早く帰ろう。」


教室に向かいながら呟く。本当に時間の無駄だった。それによく考えれば確かにあの程度だったら大した問題じゃないよな。入学してからあまり日がたっていないせいかどうやら焦っていたらしい。


開き直っているうちに教室にたどり着く。廊下には誰もいないし声も聞こえないから教室には誰もいないだろうな。そう思いドアを開けたら……


「あっ………」


女子生徒がいた。ていうか遠藤だった。

そして手紙らしき物を持って誰かの机の前に立ち尽くしている。

その机は…………俺のだった。


「えっあっ。あれ?久城くんまだ帰ってなかったの?」


遠藤は咄嗟に手紙を後ろに隠す。………なんだかすごい気まずい。


「いや、生徒相談室行ってたんだけど用が終わったから帰ろうと思ってたんだけど………遠藤まだいたんだ。」


何も用なんて済んでないけどな。

俺が聞き返すと遠藤は頬を赤く染めて俯く。


「う、うん。私もちょっと用があって……」


遠藤は何かを誤魔化すように言う。

そう言われてさっきの状況を思い出す。




手紙を握りしめている。

俺の机の前にいる。

何かを迷うような表情。

そして頬は赤く染まる。




……………おおう。なんかすげぇフラグ立ってるな。まるで告白の前ぶりみたいだ。まぁといってもそれはないな。だってこの前知り合ったばかりだよ?絶対ないって。


「用ってどんな?」

「うぇ!?え、えっと……それは………あ、言っておくけど決してラブレターとかじゃないから!!告白しようとか思ってないから!!」


いや、分かってるけどさ。まぁ分かってたけどさ。

……………やっぱ、そうはっきり言われると悲しくなるなあぁ…。

ちょっとだけ期待していたがゆえに余計悲しくなる。


「だよなー。一昨日初めて会ったばかりなのにそれはないよな。」「……………。」


遠藤がなぜか睨んできた。あれ?俺おかしいこと言った?


「それよりも、それじゃ用ってなに?見た感じ俺に聞こうとしていたみたいだけど。」

「あ、えっと……そう!部活!ちょっと部活について聞こうと思って!」


あー、そういえば部活何にしようかな?すっかり忘れていた。


「でも別に部活なんて来週でもよくないか?まだ期限先だし。」

「え!?それは………その………えっと……」


なんだか歯切れが悪い。なにか隠しているのか?

…………なんというか人にわかりやすいとか言ってるけど遠藤もなかなかわかりやすいよな。状況によって変わるタイプか?


「あ、そうです!あの、部活つくろうと思いまして!一緒にしませんか!?」

「…………………………………ほぇ?」


思わず変な声がでる。おぉおぉ、部活を一からつくるやつって漫画くらいなもんだと思ってたよ。現実にいるんだな。そういう人。

しかし、よく考えればなかなか悪い提案ではない。俺に利がある話だ。他の部活に入ったって、孤立すること間違いなしだろうからな。ちなみに恋愛学園だからって恋部(ラブ)とかはなしな。


「どういう部活なんだ?」

「それは…………恋部(ラブ)です!」


…………………………………………………。

どうしろと!?篠沢先生もこれくらい単純だったらいいのにな。


「それはさすがに、ちょっと……」

「そ、それじゃ…恋愛活動部とか……?」


おぉ、まだましだな。少なくとも恋部(ラブ)よりは。


「まぁそれでいいんじゃない?ちなみに活動内容は?」

「恋愛を堪能したり、楽しんだりする部活………的な?」


まぁ部活名からだいたい想像できたけど。


「それじゃまずは部員集めか?明日は土曜日だから来週からやるか。じゃあな。遠藤。」

「うん。またね。」


時計を見るとかなり時間が進んでいたので見つからないうちに帰ることにした。う~ん。しかし恋愛活動部、ね………。これうまくいくのか?




『うぅ。私のバカァ……。』




その声は誰の耳にも届くことなく教室内に空しく響くだけだった。


読者の皆様には感謝の言葉もありません。



いや、感謝しろよ。 ←思った人お気に入り登録

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