恋愛の恋愛による恋愛のための学園
現在、少子化が進み日本の人口が減り続けている。その原因の1つとして挙げられるのが「男女同士で恋愛感情を持たない人が増えている」とされている。これは決して同性同士で恋愛感情を持っているということではなく、恋愛よりも金が優先されているのだ。恋をするなら金稼げとも言われている。
人口の減少を阻止しようと国は1つの学園を設立した。それは恋愛が全面的に推し進められ、勉学より青春が優先される学園――
"恋愛学園"
―――――
「恋愛学園と呼ばれるこの学校は――」
パンを口に挟みながらテレビに顔を向けるとそこではもう見慣れたCMが放送されていた。
「恋愛学園ねぇ……」
呆れ半分感心半分で呟くと妹の桜[さくら]が反応した。
「あーそれね。設立される前と比べてカップルが増え続けているって話聞いたことあるよ」
恋愛学園が設立されて5年が経過した現在、確かにその効果は出ているとは思う。クリスマスになればカップルがそこら中を歩き、バレンタインデーになればチョコが飛ぶように売れ、かつての日本の姿が戻り始めているとか。……………これがかつての日本の姿なのかどうかは置いといて
「でもまあ俺は普通に金を稼いで人生楽に過ごせればいいよ」
「え~折角なんだから恋人つくっちゃえばいいじゃん。」
「俺にそんな甲斐性はありません。」
パンを腹の中に納めて時間を確認するとそろそろ時間になりそうだった。
「でもまあお兄ちゃんももう高校生なんだから頑張ってね」
「いや恋愛学園なんて興味ないって。俺は楽をしたいんだから」
別に恋愛に興味がないわけではないけど恋愛学園とかそういう感じのは2次元だけで充分だ。
しかし桜は俺の言葉に対して訝しげに聞き返した。
「あれ?でもお兄ちゃんが入学する学校って………」
妹が何か言ってるが知らないふりしていようと思ったがその次に桜が言った言葉に俺は愕然とする。
「……もしかしてお兄ちゃん知らないの?お兄ちゃんが入学する星駿学園って"恋愛学園"のことなんだよ?」
「…………………え?」
そうして俺、久城[くじょう]紅葉[くれは]は自ら望んでもいない学園に入学することになる。
―――――
「新入生の皆さん、入学おめでとう」
教壇の上で校長が挨拶をする。
現在ここは星駿学園の体育館。ようするに入学式の日なわけなんだが早速ダルい。校長の話ってやる気でないよね。長いし。
「この学園は知ってのとおり君たちが自由に青春をすることが許された学校だ」
いや知らねぇよ。いきなり何を言ってるんだ。
「思春期真っ只中の君たちが今勉学に励むのは非情に惜しい。勉学に励むのは中学生のときで充分、高校では恋に励むべきだと思わないかね?」
この人本当に校長だろうな!!!???
俺がおかしいのか!!!???
「だが安心したまえ。ここは恋愛の恋愛による恋愛のための学校だ」
かの有名なセリフが一瞬で台無しだ!!!!!!
「君たちは恋愛に不自由することはない。在学している間は自由に楽しみたまえ」
全国から見たら短く終わった校長の話だったが、ここまで露骨にはっきり言われると驚きを通り越して呆れる。周りを見てみればにやけている者もいればやる気に満ちている者もいた。
……あれ?俺だけ?こんなにもおかしいと思っているのは俺だけですか?
『確か明日レクリエーションあるんだろ?』
『体育館でやるやつだろ?楽しみだよなぁ』
隣にいる男子がこそこそと会話をしている。
………あぁそういえばあったなそんなの。
今更ながら思い出すがどうせろくでもないことなんだろうな。校長であれなんだから。
―――――
「お兄ちゃん、今日はどうだった?」
入学式が終わったその夜、妹の桜[さくら]が夕飯の席で聞いてきた。どうだったって言われても………
「しんどい」
「入学早々それで大丈夫なの?」
大丈夫じゃないって。これ絶対入学する学校間違えたって。
「まあ最初はそう言ってても徐々に慣れていくものでしょ?人間は慣れる生き物なんだから」
「無茶苦茶言うなって。あれに慣れるとかマジで無理。」
世界中の人たちとお前の能天気な思考回路を一緒にしないでほしい。
明日学校行くのが嫌になってきたな。
読んでくださってありがとうございました。