開発
「はは、それでリシュの姐さんはこんな夜遅くまで頑張ったんだな」
「ええ......それはもう本当にかき集めましたよ......」
月の光が優しく里をつつみ始める頃、リシュは少し疲れた様のポポの出店の椅子に座りながら、事の顛末を話していた。
ポポはもう既に自身の店を出しており、それはエルフの者も多く利用していた。手伝うようにミアも、リシュに向けてワンプレートの料理を出して行く。
「はい、リシュのおねーさん。あと、きょうはごめんなさい......。ねちゃった」
「ありがとうございます。いいえ、ミアちゃんも疲れてたんでしょう。また、二人で探検行きましょうね?」
その返答に100点満点の笑みを浮かべながらミアは違うテーブルに呼ばれ、可愛らしい足音を鳴らしながら行ってしまった。
「それで、ポポは分かるとしてジアとサンドラは何をしてるんですか?姿が見えないんですけど......」
ハンバーグを切り分け口に運びながら、リシュはポポに聞く。口から溢れるばかりの肉汁に笑みが思わず零れてしまう。
あの後、里の外に木材を回収してはいたがサンドラとジアの姿が見えない事に疑問があった。てっきり自分と同じように雑務や戦のための準備を進めていると思っていたからだ。
「ああ、サンドラは里のわがいもんと、外に魔物退治に。ジアの姐さんは......直接みだほうが早い」
そう言いながら、厨房の方に少し抜けてくると声をかけたポポがエプロンを畳みながら外へと促す。
ちょうどワンプレートを食べ終えたリシュが、ジト目で置かれたエプロンに視線を移した。
シックなデザインで作られたそのエプロン。おそらく女性がつけるようなものではあるだろうが、一体何着用意してあるのだろうと考える。
リシュは頭を捻ったが、おそらく膨大なその量と、今後使わないだろうということで考えるのを辞めてから外へと足を動かした。
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「嬢ちゃん!そっちの金属部品をこっちによこしな!」
「ちょうどいい。金槌が壊れた。新しいものを」
「ほいさー!」
「な、なんですかこれ?」
火と炭の匂い、炎魔法が入り乱れ金属鉱石や様々な部品が飛び交う鉄火場。ドワーフとエルフ、そしてジアが作業服に身を包みながら全力でその場を回していた。
呆気に取られるリシュ、そしてため息混じりのポポ。何かを運んできたであろうサンドラがその場に立ちすくむ。
「ん、リシュ。」
立ちすくむリシュにジアが気がつくとゴーグルを取りながら近くによってきた。炭で綺麗な肌が少しだけ汚れ、手には新しいもの金槌がいやに似合っている。
「ジア、あなた何してたんですか?」
「ん、作業」
「そうじゃなくって―」
「みんなーご飯もっできたーー!!!」
鍛冶場に響く金属の打ち込む音を跳ね除けた大音量のその言葉にドワーフたちは耳がぴくりと動いた。そして口々に何か文句を言いながらもポポの持ってきた食べ物に群がり始める。
リシュも一息着いたようにポポの持ってきた飲み物を口にしながら現在の状況を話し始めた。
ジアは古の機械人形という種族である。機会に精通した種族で、ジアが扱うフリックスと呼ばれる自動稼働機械や、大きなランスのような槍も金属と魔法を掛け合わせた代物だ。
そのジアの扱う物を人目見たドワーフたちに着想が降ってきたらしい。ドワーフ曰く一目惚れ、だったらしい。
「それで今色々作ってる」
ドワーフ達は魔法が使えない。なので、原始的な物をそれこそ魔法の武具にも負けないほど極めた技術を誇っているのだが、そこにジアの魔法の知識が合わさり、色々と作成しているとの事。
ジアは魔法の技術を、ドワーフはその製造知識を、歯車が合わさるように相性が良かったとの事。
「ジアの嬢ちゃんの言う魔法ってのはまだわっかんねぇがな!ガッハッハッ!」
馬鹿みたいに料理のカスを飛ばしながら豪快に笑う髭モジャの低身長。
「要は道具を動かすもんが魔法なんだろ!?なら骨組みを組みたてりゃ動かせんだろ!」
かなりの暴論ではある。だが、その暴論とジアの魔法、そして技術が噛み合うのだからタチが悪い。
ジアのフリックスのさらなる改良と、そろそろ綻びがではじめてきてしまった大きな槍の改良と修復。そして目下制作中のもの。
ジアが自信満々と言ったような無表情の顔で見せてきてくれたもの。
「こ、これは?」
「自動二輪魔法走行機械」
自動二輪魔法走行機械と呼ばれたもの。大きな二つのタイヤに、二人ほど乗れそうな大きく流れるようなフォルム。水が風を流れるようなその外見がなんともカッコイイ。
どうやら槍とフリックスの収納スペース。ちゃっかりとドリンクホルダーなるものも着いていた。
現代で言うところの自転車、いやバイクと言った方がいいだろう。その物が壁に飾られていた。
「エルフの女王の乗っていたものを見てピンときた。」
ドヤ顔、いや無表情なので分からないが声色が物語っている。
「これ動くんですか?」
当然の疑問である。現代ならいざ知らず、風斗でさえおそらく分からないであろう。バイクや車がどう動くか分からない人間の方が多い。
多分ガソリン入れてなんかうまい具合に動くんでしょ?ぐらいの認識しかわからない。しかも異世界の純粋なる住民であるリシュに、それがどう動き、どうなるのかなど全くもって分からないのは当然である。
「やってみせる」
そう言いながら、ジアはバイクを水魔法で持ち上げながら、リシュから少しだけ離れた場所に置いた。
「ジアの嬢ちゃん、いいぞ!」
「でっけぇ歯車がどうなってんのか、動かしてみねぇと分かんねぇもんな!ガッハッハッ!」
野次を受けながら、その車体に乗ると、ジアは少しだけ笑みを浮かべるとハンドルから魔法をこめ始めた。
ギュンと少しだけ音が鳴ったあと、その場を瞬間的に飛び出すバイク。
「え」
そうこぼしたリシュ。爆風と爆音を響かせ壁に突き刺さるような形のバイクをみた、率直な感想である。
「ん、成功」
「成功!?どこがですか!」
すました顔をしたジアに怒涛のツッコミを入れるようリシュ。
「どこも壊れてない」
「え、あ、まぁたしかに」
見たところ確かに外傷はない。凹みすらなく、どこの部品も飛び跳ねるように車体からこぼれ落ちてもいない。だが、リシュが想像しているような動きもなく、ただ直線的に吹き飛んだけはある。
少しだけため息を着いたリシュがジアに話しかけた。
「何をしたいかはだいたい想像が着きました」
「ん、かっこいいでしょ」
「まぁ、確かに......。貸してみてください。」
はてなマークを浮かべるジアにリシュは、そのバイクに跨ったのだった。




