決意と仕事
お久しぶりですー。色々と私生活が落ち着いたので、また不定期でゆっくり更新していきますー
「あれは一体なんなんですか......!」
無事少女を送り迎えした後、殴り込むようにリシュがエルフの女王に詰め寄る。エルフの女王は、何かを察したようにその場にいたエルフの者を下がらせる仕草をした。
「ほう、見たのだな。あやつを」
「あれは...龍......ですか?」
リシュの言葉を受けて、ゆっくりと手元のグラスを揺らしてから吐き捨てるように言い放った。
「ただの龍の残りカスじゃよ。」
そして語るエルフの女王は、事の顛末を。ゆっくりと、昔話のように言葉を紡いでいく。
半年ほど前、月が隠れその全てを闇につつんだような夜。それは現れた。
「ヴァンピール.....お主たちは吸血鬼などと呼んでいたかな?」
吸血鬼。血を吸う事が有名の、狼男に並ぶ魔獣とされる位置づけの魔物。血を吸い、闇夜に溶けて人々を襲うとされるその者。
「操ろうとしたのじゃろう。だが、低級な魔獣風情にあれの手網は掴めん。それで選んだ道が―」
守り龍としての誇り、人生をめちゃくちゃにするという選択だった。
「奴らは操れないと知るや否や、狂わせおった。ヴァンピール風情に壊されるわけないとはおもったが、魔人の仕業じゃよ。」
「......!」
魔物と魔獣のさらに上に君臨する存在、魔人。過去に戦うことになってしまった強大すぎる相手。その相手が吸血鬼だと目の前のエルフの女王は言う。
そして半年、暴虐の限りを尽くしている龍の残りカスから逃げるようにこの村は発展を遂げていた。
いつでも逃げられるように様々な場所に、移住区を。すぐに発見できるように高台を。そしていつ戦う事があってもいいように、武器を。
リシュの脳裏に浮かぶ傷付いた風斗のあの姿。痛む胸と、焦りが背中に伝う。
「そうゆう訳で、あれは今エルフの里の最優先事項のひとつじゃ。それで、お主らに頼みたいことがある。」
「そ、それは......」
ここまで話されて、頼みたいことがあると言われてはひとつしかない。そして、ミアと呼ばれた少女と一時しか一緒にはいないが、リシュの性格上、次の言葉を断れないことを分かっての一連の行動。
さすがはエルフの女王と呼ばれるだけある。
「あいつの殲滅に力を貸してほしい」
「......」
押し黙ってしまうリシュ。魔人討伐もその時そうするしか無かったから行ったものではあるが、リシュとて危険な橋は渡りたくはない。
忘れないで欲しいがリシュも十代で、大人ではなく子どもなのだ。
だが、だがしかし。
「その依頼お受けします。」
彼女の脳裏に浮かぶ、風斗の姿。命を投げ打ってまで救われた命。その命を自分可愛さに守っては、彼に逢えた時に笑顔で会うことができないだろう。
それに、背中に残った健やかな寝息を立てていたミアの泣き顔、笑顔。あの顔を守りたいと本気で思っての決意だ。
「ふむ、色々と条件を出そうとは思うたがありがたい。なに、心配せんでも前線で身体を張れなどと言わん。護衛で補助でもしてくれ」
その言葉に少しだけほっとするが、今は土竜の手でも借りたいからのぉというエルフの女王の冗談交じりの笑顔に戦慄するリシュ。
瞳が笑っていなかったからである。
「して、依頼の収集物は?」
「へ?」
戦慄していたリシュが、エルフの女王の言葉に変な声で返答してしまう。そう、ミアの護衛は、ミアが木材の収集に出るからといってリシュが受託したもの。
根本の依頼は木材の採取依頼である。
「あ、え、でもあれはミアちゃんの―」
「ああ、もちろんミアが行きたいと駄々をこねるからこそ行かせたものではあるがな?」
ずずっとリシュに近づくエルフの女王。何倍も大きく見えるのは気の所為だからだろうか。それとも大きく見えるほど怒っているからだろうか。
「これから戦を始めようと言うのに何も準備せずに挑むほどバカに見えるのか?」
「い、いえ滅相もございません......」
魔法が跋扈するこの世界では確かに原始的な武器は意味をなさないが、それは純粋に原始的に使用した場合によるだけだ。
何も強化しない原始的な矢の一撃より、魔法による一撃の方が確かに強い。だが、矢にマナを塗るように這わせて攻撃すればその力は何倍も上がる。
単純に魔法を使用するよりかは、マナによる消費もない。
なので、風斗は風纏という身体強化した体で戦えていたのだ。
リシュは汗がダラダラと流れ出る。エルフの女王は笑みをニコニコと表す。
「依頼をこなしてから会いにこんか!」
「はぃぃぃぃ!ごめんなさーーい!!!!!!」
そのまま会議の場からつまみ出され、ピシャッと扉を閉められてしまった。
今回ばかりはリシュが悪いと言えよう......。
お読みいただきありがとうございます。
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