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戦闘狂

 観察眼の進化系として位置する未来視。風斗がその存在を認知していなかった原因が、今までの事も断片的にか見れていなかったのだろうか。


 だが、認知し、その存在を受けいれた風斗。


 余りあるマナを使いながら未来を見通しながら、紅蓮の瞳を持つ黒髪の少年は、舞うように剣を振るう。まるで何年もその技能を扱っていたかのように。


 巨体から繰り出される大斧の攻撃を、避けながら攻撃を重ねていく。繰り出された剣は寸分違わず魔人の体の動きを予知したかのように、傷を与えていく。致命傷にはならない、数多くの切り傷が流れる鮮血で染められていく。


「ふんっ! 」

「もうその攻撃なら避けている! 」


 大斧をデコイとした攻撃を避けながら、繰り出されたハンマーの上に乗り、その斬撃を繰り出す。未来視と観察眼による、スローモーションと未来の世界で風斗は生きながら、攻撃を重ねていく。


「半減だからといって、切れないわけじゃない! 」

「フハハハハハハハハ!」


 サンドラがフォルネウスに噛み付こうとするが、噛み付いたその腕を乱暴に振り回し、風斗に飛ばす。勿論、避けられない風斗では無いが、空中に避けた瞬間、サンドラの巨体に隠された石の飛沫に体が痛み付けられる。


「未来視と言ったか? 確かに強力だが、避けられない攻撃には効果はなく、見れる未来にも限りがあると見た」


 未来視を発動させてから、数分の攻防の後、未来視の弱点と対処法を会得するフォルネウス。フォルネウスが言った通り、全ての未来が見える訳ではなく、スローモーションと残像のように映る現実の世界では、風斗の脳が先に限界を迎える。


「流石だ」

「伊達に王として君臨していた訳ではない」


 ポポは戦慄する。命を削りあう戦いのさなか、お互いを称えながら笑みを浮かべるこの二人の姿に。生えてきた腕でコートを掴みながら、その戦いを眺めていた。


 戦いを楽しむかのように顔を歪ませるフォルネウス。攻撃を避けながら、耳まで登るような三日月のように口に笑みを浮かべる風斗。


 事情の知らない人間がこの戦闘を目にしたら、一瞬で卒倒級のホラームービーがこの場に流れている。


 風斗の繰り出す速度と、空中さえ地面のように渡り走るその戦い。空中から振り落とすようなその一撃。いや、一撃にも似た数回の攻撃をハンマーに括り付けられた鎖で防ぎながら、フォルネウスは噛み付いたサンドラの足を大斧で切りつけた。


「ギャフン......! 」

「サンドラ! 」


 だが、魔人の攻撃は止まない。一瞬のその隙を付いたハンマーによる一撃を、風斗は食らう。

 横になぎ払われたその一撃を、既のところで剣を盾にするが、その衝撃に耐えきれず空中に吹き飛ぶ。


 そのまま木を何本も薙ぎ倒しながらやっとの事で着地した風斗。口から流れ出る血と自然に上がっていた口角に気付き、ハッとする。


「(戦いを楽しむなんて......)」


 命の削り合いに快楽を覚えてしまっては、どちらが魔物か、人間かの境がもう分からなくなってしまう。その境目の崖に立ち、風斗は自身に喝を入れる為、自分の顔を本気でぶん殴った。


 口と鼻から流れ出る血を拭いながら、驚くフォルネウスに言葉を向けた。


「戦いに呑まれるところだった。俺は貴方を殺し、胸を張って友人達に合わなければならない。だから俺は人として貴方を―」

「その心意気、賞賛に値する!」


 骨が軋む痛みに耐えながら、呼吸を整え、瞬間移動にも近い移動でフォルネウスの眼前に降り立ち、剣を交える。火花が散り、二人と一匹の風圧で木々が倒されていく。


「風魔法『迅速の風槍』!」


 距離を保ちながら、放とうとした風斗の魔法。だが、その魔法に変化が起きた。シンプルなデザインの槍がフォルネウスに放たれるのでは無く、透明な刀身が爆風を巻き起こしながらフォルネウスの腕の鎖をちぎりながら突き刺さる。


「ぬぅ......」

「ここでか!? 」


 この世界に来てから何度も試した風によって作られた剣の創造。学園のリッケルとの戦闘以来何故か具現化しなかった、攻撃に特化した剣。


 守るべきもの、殺すべき相手を初めて認知したからこそ起きた奇跡のような具現化。風斗はもう一度、その魔法、己が考えた独自魔法を唱える。


「穿ち、切り落とし、俺の剣となれ。俺の穿つ剣! 風魔法『暴風の飛剣(ぼうふうのひけん)』!」


 二度目の一撃。ハンマーを盾に構えたフォルネウスの左腕と、ハンマーがバターを切るように切り落とされる。左腕だった物から溢れ出る鮮血と、対照的に笑みを浮かべるフォルネウス。


「この百年で、我にここまでの傷を与える者がいたか、否だ。断じて否。」


 切り落とされたハンマーを、浮かばせながら、高らかに笑う。


「今日という日を、貴殿と殺し合えるこの日に感謝をしよう。さぁ続きだ。」


 もうそこには魔人などおらず、目の前では戦いを楽しむ狂人にも似た戦闘狂が出来ていた。風斗は体に流れる自身の血と、マグマのようなマナに身を委ねる。


「サンドラ、まだ闘えるだろう」

「グルるるるるるるる」


 返答というように、唸るサンドラ。まだ闘志は消えていない事を風斗は確認すると、再び走り出す。


 空中に漂う、物理法則などを無視した鎖を空中回転で避けながら、フォルネウスの大斧を躱す。フォルネウスのがら空きの右腕を回転しながら、切り刻んでいくが途中で鎖によって、体に鋼鉄の鞭の一撃が入る。


 飛ばされた風斗をその白い巨体で受け止めたサンドラが、影に溶けた。凄まじい動きの影を追跡するように鎖が、地面に突き刺さる。


 地面から生えた鎖の影を利用し、フォルネウスの背中に出現したサンドラが、その獰猛な牙を背中に突き立てた。


「ぬぅぅぅうううう」


 唸り声を上げながら、背中に着いたサンドラを引き剥がそうとするが、サンドラも牙と爪を使いながらしがみつく。後ろに倒れるように押し潰そうとするフォルネウスの攻撃を影に潜み避け、風斗のぶん投げた剣を空中から湧き出し、倒れた格好のフォルネウスの胸に突き立てた。


 空中を走り飛ぶように、勢いよく突き立てられた剣の上に移動し、体重と速度に乗せ、デタラメに力を振るう。


「これで終わりだァ!フォルネウス!剣技『風穿つ杭(パイルバンカー)』!」


 馬乗りになる形で放たれた風斗の剣技。障害物を全て穿つ風の杭。一点集中のマナの濃縮されたその一撃を、フォルネウスは一身に受ける。


「があああああああああああああ!」

「うおおおおおおおおおおおおお!」


 お互いの雄叫びが重なり合う。咆哮と血と汗と、魂がぶつかり合う。放出されるマナが、山のような巨体に風穴を開けるのと同時に、風斗とサンドラが吹き飛ぶ。


 地面に着地し、膝を着く風斗。度重なる攻撃に血は流れ、未来視と観察眼、そして身体強化と風纏による体とマナに限界が見え始めていた。


「はぁはぁはぁ......」

「ガルルゥ......」


 しかし、その恐怖は現実と化す。


「ここまで追い詰められたのは初めてだ。なんと心地よい闘いなのだろう。」


 そう言いながら、フォルネウスは右腕にかぶりつく。筋肉と肉を引き裂きながら、赤く濡れた結晶を口に含む。


「くそ! 」


 魔人メフィストフェレスとの戦いのさなかにあった、魔人の最終手段。自らのコアを砕くことにより、魔人よりもさらに一歩進化した存在への昇華。目の前の魔人も同様に不敵な笑みを浮かべながら、その赤いコアを砕いた。




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