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王都グラン学院

 王都グラン学院。主要都市国家ルーゲンの唯一の教育機関であり、その土地は王の住まう城を遥かに凌ぐ土地を有していた。


 煌びやかに装飾された学舎は一見、城のような大きさではあるがその中には様々な知識と施設が詰まっており、さながら一つの迷宮のような規模になっている。


 その横に並び立つようにそびえ立っている学生寮は大理石や色とりどりの石種を用いられており住みやすさや見た目の華やかさはもちろんのこと、一人一人のニーズに備えられた施設や売店があるところから商業区にも引けを取らないだろう。


 三つの建物が悠然とその姿を構えている中、その眼下に広がる緑色の大地に足を踏みしめている人影がいた。


「近いように感じますが校舎が大きいのでここからでもだいぶ距離があるんです、ゆっくり行きましょう」


 通行手立てを発行した後、風斗の入学手続きをするカリストと別れ、二人はひと足早く学院に足を運ぶ。


 入学手続きはギルドの緑色のカウンターで行われているが流石に時間を要するようでカリストに先に校舎の見学でもしてきたらどうかな?と言われ今に至る。二人は心地の良い風と日差しと共に校舎を目指した。


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「すごいね…」


 小一時間ほど会話をしながら歩き、やっとの事で校舎へと足を踏み入れた風斗の第一声である。異世界へ飛ばされて幾度となく感じた気持ちであった。


 ざわざわと騒がしい一階。天井から伸びたシャンデリアが燦々と校舎内を照らしており、その光に反射するように技巧に満ちた装飾が光り輝き神々しさまで感じられる。食べ物屋や売店が立ち並び制服を着た生徒達がごった返している。


「今は昼時ですからね〜皆お腹空かせたんでしょう。さっ、気づかれないうちに学生寮の方の手続きをしましょう!」


 そそくさとフードを被り風斗を先導しながら校舎を出て学生寮に歩き出すリシュ。見たこともない壮観の校舎の光景に後ろ髪を引かれながら、風斗も小走りでリシュの横に行き並び歩く。校舎と学生寮はそこまで離れていないが、それでも歩くと五分ほどかかった。


  校舎を見た感想をリシュに伝え、会話を通しながらも学生寮の前につく二人。校舎に引けも取らない美しさに目を奪われながらリシュのあとに続くように風斗も学生寮へと踏み入れた。


  校舎も学生寮も入口は魔法で細工された自動ドアになっており、元の世界のことを思い出す風斗。内装をジロジロと見るあいだにリシュは受付と会話を始めた。


「はーい、リシュ!今朝ぶりね!討伐依頼はどうだった?」

「はい、いつも通りにこなせました。カリスト先生も居ましたし楽勝でした! 」


 旧知の仲なのだろう、楽しそうに二人はお互いに朗らかな笑みを浮かべながら会話を進める。


「空き部屋を転入生に貸していだたきたくて、カリスト先生から念波伝書が届いているといいんですけれど」

「ちょっと確認するわね。ん〜と......うん届いているわね、え〜春野風斗君?少しこちらに来てもらえる?」


 内装を観察していたので突然の呼び出しに内心、驚きながら風斗は呼ばれた受付へと歩く。受付は体の線が出ているスレンダーではつらつとした、二十代ほどのいかにも仕事が出来ますと言ったふうな女性だった。


 慣れた手つきで書類を出すと風斗の前に書類と部屋の鍵を差し出してくる。


「通行手立てを今見せてくれる?それと書類の記入も今ぱぱっとかける書類だから安心して」


 風斗はギルドでもらった無料の肩掛け鞄のようなものから六角形のプレートを出し、受付に見せるように手渡した。


 そして目の前の書類に目を落とし、書き込んでいく。名前、年齢、この学院で何を学びたいか、学生寮希望か、など今の風斗でも答えられるような質問内容である。


 風斗が書類の記入を進めながらも傍らでは受付と談笑するリシュ。会話をしながらも風斗の通行手立てを見ながら何やら記入している受付嬢。


 会話をしながらも仕事をこなす姿に感心しながらも書類の完成に勤しんだ。


 ------------------------------


「今日一日疲れているようですし早めにお休みになってください。それじゃ明日の朝にも来ますね、明日から楽しみにしてますね」


 一直線に伸びる廊下の一室に七号室と書かれたプレートが扉に打ち付けてある扉の前で風斗にそう笑顔で言い、ひらひらと手を振りながら去っていくリシュを見送り自分の部屋へと風斗は入っていく。


 いつの間に扉の横には自分の名前が書かれておりエレベーターのようなものの近くだったので、迷うことなくたどり着けた。十四階からなる学生寮の七階に位置する風斗の部屋は高級スイートホテルを思わせる一人部屋だった。


 椅子やテーブルといったものからクローゼット、シャワーまでもついており中は言うまでもなく豪華の二文字を詰め込んだ内装や装飾ばかり。


  驚くことにも慣れつつ風斗は制服を着たままに備え付けられているベットに身を沈める。かれこれ異世界に飛ばされまだ一日も経っていないのだ。疲れが濁流のように体を巡り徐々に体の機能を奪ってゆく。


 ひとまずシャワーだけは浴びたいと思い、引き込まれる意識を戻しシャワー室へと気だるい体を引きずりながら持っていく風斗。服を脱ぎ浴室に入る。


 だがシャワーヘッドはなく代わりにシャンプーとリンス、洗顔などの容器と赤い石と青い石が壁に半分はめ込まれていた。訝しげに思いながら青い石を壁側に押し込む。


「うわっ!!!冷たっ!?」


 天井から身が縮まるような冷水が降り注いだ。急いで赤の石も押し込むと徐々に冷水がぬるま湯に、そして丁度いい温度のお湯が出てきた。


 内心ほっとしながら髪の毛を洗い始める。顔のところに打ち付けてある鏡を見ると、自分の髪の毛の色が地毛に戻っていることに気づいた。


 この装飾魔法は水に弱く、髪の毛に水が着いた途端色が戻ってしまうという弱点があった。リシュに魔法をかけてもらった際にもこのことを聞かされており、別れ際にも学院内ではバレると差別的な扱いを受けてしまうかもしれないと釘を刺されていた。


「この髪の毛バレないようにしないとなぁ......。」


 ルーゲン唯一の学校であり様々な生徒達が集まるこの場所。その中には信仰が厚い家庭環境に生まれた子も沢山いるそうで差別的な考えも未だ少なからずあるらしい。


 全身を洗い浴室から出て体をタオルで拭き終わると、そのままタオルを腰にまいてベッドにダイブする。綺麗になった体にどっとまた疲れが押し寄せてきた。


  全身を蝕む倦怠感を感じ、風呂上がりの香りを鼻に感じながらゆっくりと目を閉じる。今日あったことを反芻するように思い出し、まだ見ぬ明日のことを考えながら意識を底に閉じていった。





章追加に気づき喜びに打ち震えながら追加しました。過去形の「た」の語尾が多い気がするので今までのものも少しずつ直していきます。よろしくお願いします。

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