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造られし海の道

「私も私の仕事をしましょう。」


 海から離れた、街の中心。海洋都市国家サーシアスの中心の少女は経つ。矢により、徐々に壊れていく街並みの中でその少女は真剣な眼差しで、レイピアを持つ。


 その様子を眺める一人の女の子。先程、風斗に救われたその女の子だ。心配そうな顔で少女に近づく。


「お姉ちゃん、そんなところに居たら、危ないよ?」


 その言葉で、軽く微笑みながら少女は女の子に言葉をかける。優しく優しい陽だまりのような、そんな言葉。


「私は大丈夫ですよ。心配して下さり、ありがとうございます。危ないので、少し離れてくれますか?」

「うん! 」


 パタパタと可愛らしい足跡を響かせて、その場から少し離れるが、どうやらまだ気になるようで、女の子はその少女を眺める。


 手のひらをふりながら、その少女はレイピアを地面に突き刺した。彼女が任されたその仕事を、この街を、今のあの笑顔を守る為に、そのマナと知力と力を振るう。


「天秤の守り手よ―


  星々の遥かなる守り手よ―


 この地に芽吹く神聖なマナ達よ―

 

  神霊を通し我に力を―


 破滅を退ける力を―


  邪気を祓う守りの盾をさずけたまえ―



 幻想の強固なる盾(ブークリエ・アイギス)


 少女が唱え終わると、少女を触媒としたような結界が広がる。害あるものを根絶する守りの結界。半透明な綺麗な文様に彩られたそれが、優しく街を包み込むまで、そう時間はかからなかった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 弾ける水しぶきと血飛沫、浜には魔物の死体が打ち上げられていく。切り落とされ、穿たれ、噛み砕かれた死体が増えるにつれ、兵士達の士気も上がっていく。


 口にした後ろ向きな言葉は前向きに、死を覚悟した叫び声は咆哮へと変化していく。だが―。


「ダメだ、このままだと突破される。」


 水龍のような巨大な魔物の首を切り落としながら、風斗は言葉を吐き捨てる。同じく魔物を殺したジアが傍らに飛んできて、風斗と同じように神妙な面持ちで同意した。


「時間の、問題」

「いやいやあんたらいりゃ勝てるだろ! 」

「ああ、このままヤツらを倒そうぜ!」

「「うおおおおおおおおおお」」


 そんな風斗とは対象的に兵士たちは、叫びながら魔物の進行を防いで行った。だが、風斗の考え通り、刻一刻と状況は悪くなる。数秒で数十体、数百体を殺すことは出来ても、その間にも同じ数の、いやそれ以上の数の小さな魔物は扉から我先にと飛び出してくる。


 風斗は観察眼とマナ受動、龍脈受動により、増え続ける魔物の数に焦燥感を表していた。


「ジア、あの黒い扉を壊すよ」


 迫り来る魔物の首を跳ねられる。


「ん、どうやって?魔物、多い。」


 大きなランスが、纏めて魔物をその矛に貫かれる。当然の質問だ。刻一刻と増え続ける、魔物。それらが物理的な壁の様になる。空中を歩こうが、あまりある魔物の攻撃が付け狙うだろう。


 だが、少年は自身の乗った笑みを浮かべた。


「俺が道を切り拓く。」


 魔物の胴体に突き刺した剣を、かち上げるようにして命を絶つ。


「だからジア、俺に力を貸してくれ! 」


 二人が同時に相手の背中に迫る魔物を切り、穿つ。


「はい、マスター」


 その返答に頷き、風斗は目を閉じ、直線に黒い扉を感じながら集中する。同じようにジアも自身のマナを足に集中させる。燃えるようなマナをその剣に、その足に全集中させていく。


 魔物の放った槍が頬をかすめ、その痕跡が流れようが、二人は己の仕事を全うしていく。その尋常なる様子に気づいた騎士や海兵。


「おい、なんか分からんが、坊主達を守るぞ!」

「「おおおおおおおお!!!」」


 雄叫びを上げながら、迫り来る魔物をなぎ倒しながら防いでいく。圧倒的な物量に、これまた物量で対抗していく。


 ぶつかる刃、空中にまう魔物の体液、金属と金属のぶつかる音が浜辺に響いていく。折られる剣や槍、斧といった武器。盾が真ん中から裂け、鎧が砕け、騎士や海兵たちの体に傷が増えてきた頃。


 ジアの声がその場に響く。


「ヴィーズ(水よ)―


  アーマー(装甲よ)―


 ヴィレ(飛び跳ねて)―


  トゥルゥー(穿つための)―


 マイト(力を)―


飛翔する勝利の靴(ヴァルキリーブーツ)


 周囲を囲うように攻めていた魔物の首が一瞬で跳ねられる。何が起きたのか、今日何度目かの驚きに心臓を動かされた男たちは、目の前に降り立つ女神に目を奪われる。


 地面から少し浮くように立つ幻想的な少女。水を纏った刃のブーツに身を包み、彼女の持ちうる全てが母なる水に満ちていた。螺旋状に連なる大きなランス。半透明、水で装飾施された二つの浮遊物。


 そして彼女自身、水を纏うように佇む。それがあまりにも幻想的で、いつまでも止めどなく動く水のブーツも相まって、男達は戦闘中であろうが目を奪われていた。


 そしてもう一人。自身の荒れ狂う、燃え上がるようなマナをほぼ剣に集中させた男がゆっくりと眼を開く。そして静かに詠唱を始めた。詠唱をしなくても、風斗は剣技を発動できる。これは断固たるイメージ力と魔法による知識、経験があるからだ。だが、それすらも超え、この一撃を確かなものにする為に風斗は言葉を紡ぐ。この一撃に想いを込めて。


「風を束ね―

 

  力を束ね―


 この魔を滅する為に力を俺に貸せ―


 

  俺の邪魔をするなら―


 全力で潰す!―


  剣技、神威豪風斬(かむいごうふうざん)!」


 命を、その痕跡すら許さない根絶の一撃。凄まじい熱量と共に発せられたその一撃は天をも、雨雲さえ切り裂いて前方の命を奪い去っていく。あまりの威力に、海が避けるように蒸発し、海の地面が顔を出している。


 あんぐりと口を開けた海兵や騎士達を置いて、風斗とジアはただ足を動かす。風斗は烈風の如く、ジアは飛び跳ねるイルカのように、海の間を、海の壁の間を走り去っていく。




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