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戻ってきた日常、中編

日常回ですー

 =====================

 表面

 春野風斗 男性 16歳 保有マナ総量 28万7409


 ・主要都市国家ルーゲン ギルドランクc

 ・海洋国家ナーシサス ギルドランクb


 裏面


 固有技能︰観察眼Lv8[遅延]+[拡大]+[マナ読み取り]+[身体マナ分析 ]+[魔物弱点視覚化]+[魔獣弱点視覚化]+[魔人弱点視覚化]+[体質把握]


 獲得技能

 ・格闘熟練Lv5[身体向上]

 ・各武器熟練Lv6[剣能力向上]+[剣技能力向上]+[ 武器マナ循環効率上昇]

 ・各魔法攻撃熟練Lv5[風魔法]+[雷魔法]

 ・魔法操作循環補正Lv6

 ・魔法構築効率化Lv8

 ・魔法イメージ力補正Lv5

 ・思考回路高速化Lv8

 ・縮地Lv4

 ・マナ受動Lv4

 ・空中歩行Lv4

 ・龍脈受動Lv3

 ・肉体治癒Lv2

 ・武装魔法補助Lv3

 ・毒耐性Lv1

 ・気迫耐性Lv1

 ・独自魔法形成理論構築Lv2

 =====================


「これは......」


 思わずリシュも息を飲む。風斗のギルドカードを最後に見てからだいぶ経つが、風斗も同じように現実味の帯びないこのカードを見つめ驚愕に顔の色を染めている。


「マナ保有量が約3倍。それに目にも追加技能が?」

「獲得技能もかなりの量です。」


 風斗自体、自らの成長を感じてはいた。度重なる戦闘に、数日に渡るダンジョン攻略。そしてつい先日には災害と謳われる魔人の討伐も果たしている。だが、ここまで目を見張るほどの結果は予想してはいなかった。


「(魔人討伐の結果? それにしてもこんなに上がるものか?俺の観察眼にも追加技能が増えてるし、常時発動型の追加技能っぽいのもあるし...... )」


 考えれば考えるほど分からなくなる自分自身の事に、次第に頭に熱が溜まり始めた。このまま思考の海に囚われてしまう既のところで待ったが入った。


「風斗さん」


 心配そうに覗き込むリシュの顔。驚いたように勢いよく顔を上げたおかげか、お互いの顔が非常に近い位置に、風でも吹けばキスできそうな距離になってしまう。


「お、おっとと、ごめんリシュ。少しのめり込みすぎていたかもしれない」

「い、いいえ、大丈夫ですよ。私もいくつか答えられる事もありますし......。風斗さんが良ければ少し歩きませんか? 」


 突然の出来事(ラッキー)にお互い平静を取り繕う。他人が見れば、くそ、じれってぇやらしい雰囲気にしてきますとでも言われそうだが、至って本人達は真面目に誤魔化せたと感じている。


「うん、身支度するからドアの前で待ってて」


 いかに体を損傷し、治療に専念する立場であっても風斗自身体を動かさないと訛ってしまうと考えているようだった。

 リシュが部屋の外に出たことを確認すると、清潔なベッドから体を起こす。巻いてあった包帯は綺麗に整頓し、入院着を脱いだ。


 ふと鏡の前に移動する風斗。歩きずらさを確認しながら上半身裸の自らの傷だらけになった体を改めて確認する。この世界に来てからこのような肉体を得るとは思いもよらなかっただろう。


 初めて変わりたいと、今までの人生の中で本当の意味での生への渇望、そしてその代償。

 刻み込まれた傷跡に溜息にも歓喜にも似たような息を吐き、風斗はドアの前の待ち人を迎えに行った。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「活気がすごいと思ったけど、武器が目立つね」

「アキレス様の采配によるものでしょうね」


 ゆっくりと杖を着きながら、風斗は街を眺める。初めて来た通り、様々な店は客を引き込み、終始笑顔な漁師の姿も見受けられる。だが、その傍らでは武器を運ぶような女性や若い水兵が多く大通りを往復している。


 街に響くような鍛冶の音が響き、怒号や愚痴は多けれど、街の人々の顔にはより高き活気が満ちているような印象を風斗は受けた。


「たっく、どこもかしこも人が多くてうぜぇなぁ」

「全くだぜ、酒場もあいてねぇしよぉ」

「ああ、ビール飲みてぇなちきしょー! 」


 そんな完成された絵の中にも、騒ぎ出すインクが風斗達の対面からズケズケと地面を鳴らしてくる。通りの人間や違う種族も訝しげに遠巻きに眺めるが、本人達はその視線すらも誇らしいようで、阿呆みたいに腕を組んで歩いている。


 風斗がぴくりと眉を動かし、気づかないようにフードを深く被った。風斗達の恩師カリストから貰い受けた、様々な特性が付与されたローブ。未だ髪の毛の色という差別対象である、風斗が肌身離さず持ち歩いている優秀なローブ。


 風斗の行動の意味を知り、リシュも同じように被るが、勘が鋭いのか悪運が強いのか、三人は風斗達に目をつけた。


「おいおい、これはいつぞやの糞ガキ共じゃねぇか?」

「これは女神様にでも感謝か!ギャハハハハハハハハハハハ!」

「くそ坊主は怪我でボロボロじゃねぇか!」


 ニタニタと笑うように風斗達に近付く三人。風斗は軽く舌打ちを無視するように立ち去ろうとするが、それに待ったがかかる。


「おいおいぃ、ご挨拶もなしかよぉ。この老狼の囀り団リーダーのアカシ様によぉ」

「説明どうも」


 説明口調な男の返答に皮肉の聞いた返答をするが、それすら理解していないのかアカシと名乗った男は懐からダガーを取り出した。刃こぼれが多く、柄に巻いてある皮もボロボロの代物だ。

 そしてチラチラとダガーを見せつけるように、空を切っているアカシ。

 だが風斗は依然とした態度でアカシのダガーではなく、アカシを眺める。


「(マナ読み取りは、相手のマナの総量を見るばかりだと考えていたが......)」


 アカシの心臓部から小さなマナの炎が揺らめく。それは脳、四肢とつながり今まさに扱っているダガーの手のひらに流れている。それは一重にマナの揺らめきさえ確認出来れば、次相手が何をするかを先回りで対処出来る事と他ならない。


 事実、アカシがダガーをどのように、どの角度で動かすのかを風斗は考察し、正解しの繰り返しでこの考えを実証している。


「(龍脈受動は、視覚よりも感覚によれば周りの状況にも対応出来る。うん、いい感じだ)」


 杖に体重をかけ、杖を媒介として周りの地形を把握する。未だなれておらず、風斗を中心とした半径5メートルが限度だがそれでも目が届かない範囲の索敵ではとても有用である。地形を介して、接触している者のマナの動きも同時に入ってくる。風斗は使い勝手が良いと考えるが、もうこの実証に意味は無い。目の前の人物達にそうそうにご退場願うための言葉をかけた。


「ああ、すまない。それで、貴方はそれを本気で出しているのか? そうでないなら早くしまって周り右して帰って欲しい。邪魔だ。」


 風斗の台詞に、一瞬で青筋が溜まったアカシ。その様子に器用だな、なんて呑気に考える風斗。


「ああ?脅しに使うかよ! 」

「(右足にマナが強く流れ始めたね。右足で蹴ってから、ダガーでぶすり、かな)」


 マナの揺らめきからの考察。だが、予め決めていたように、風斗の思惑通り体重の載っていない右足が風斗目掛けて飛んでくる。それを杖で軽く受け止め、弁慶の泣き所に一撃軽く、くれてやると涙を浮かべたアカシがダガーを振り回してきた。風斗は少し思いつき、マナで強化した杖で払い除ける。


「(杖に纏わせるマナがいつもより早い気が。それにいつもより硬い? やっぱり効率化の追加技能のお陰か)」


 軽く払い除けたはずだったが、目の前で腕を強く抑える彼を見るに、風斗の想像以上の激痛だったに違いない。ゆっくりと歩き、アカシの顎を殴り気絶させてからそういえば、とリシュの方向に目を向ける。


 全くもって心配などしていないが、なんならリシュを()()()()()が心配対象ではあるが、一応結末を見届けようと目を向けた。


 案の定というか、当たり前というか、驚きの表情を浮かべた一人は体が凍りつき、もう一人は体が固定されたように動かなくなっている。しかもどうやら、この二人気絶出来なかったみたいで、瞳だけがぎょろぎょろと動きながら涙を流している。むごい。


 その元凶はどこ吹く風といった風に、風斗の方にてくてくと急ぐように足を運ばせ、二人は何事も無いようにその場をあとにした。

 度肝を抜いた人々を置いて。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「さっきのは結界魔法?」


 街から少し外れた場所で風斗はふと疑問をリシュにこぼした。風斗の目的地に行くために、ゆっくりと街から外れた道を歩いている。そのため他に人の目もなくゆっくりとしたような時間が流れていた。


「はい、結界の応用の様なものですね」

「うーん、でも......」


 風斗は頭の中で結界の情報を整理する。

 結界とは外敵から身を守る、守りの最上級魔法である。一方通行ではあるが、多岐にわたり様々な物理法則や視界情報などを遮る用途に使われ、術式の構築論や必要なマナ数も二つほど桁が違う上級魔法だ。


 基本的に守りとして使われるが、特殊なケースでは結界内に自らが有利な場を無理やり作り出すことも出来るそうだ。本でしか得られず、それこそ伝承レベルに近い話となっている。


 風斗も知識としてはあるが、発現させるまでには至っておらず自らという小さい範囲を守るだけに特化させてようやく『風花の花弁』という結界もどきが出せていた。


「あれは結界を裏返すように展開させたものです。もちろん攻撃機能は抜いて」

「結界を裏返す......。だから動きを拘束できたっていうこと?」

「そういう事ですね」


 朗らかに笑う彼女が簡単に言い切るが、結界という最上級魔法をただ裏返すという事を現在の風斗では理解すらできなかった。結界はある一方通行を防ぐ。中から外に出ることは容易いが、外から中に入るのは容易ではないと。

 そしてそれを逆側に展開し、先程の男を拘束していたと、簡単に言ってのけているのだ。単純にこの世界に来てからの経験の差と言われればそうだろうが、風斗は諦めたような溜息をつくことしか出来なかった。


「それで、風斗さんどっちの行かれますか? 」

「あ、ああ、最初はカサンドラの方に向かおうかなと思ってるよ。最近見てあげられてないから」


 行き先を言っていないにも関わらず、風斗の思考を読む事は置いといて、実際に風斗は二箇所程足を運ぼうと思っている場所はあった。


 一つは風斗たちが普段止まっている宿。道中で同行することになった小さな白き獣、名をサンドラ。

 リシュやジア、果ては女将などが世話をしていると聞くが、風斗自体この街に来てからというもの数える程の関わりしかない。


 それはクエストで忙しいからというのもあるが、朝風斗が目を開けてもサンドラの姿は見えず、寝る時も気配を感じるだけで会えないという日が続いている。


 魔人討伐後、ようやく時間が空いたので会いに行こうと足を運ばせているという事だ。

 もう一つはポポが行っている食事処。これは単純に顔を見せに行こう程度である。


「ん、戦闘音? それにこのマナ反応は......」


 前方の木々が揺らめく小さな林の中で、地面がえぐれる様なそして金属同士が当たる音が風斗の耳に届く。観察眼が自然と発動する。風斗の瞳が薄い黄金色のマナを漂わせながら、前方の森の中にある二つのマナを捕捉した。


 そしてそのまま風纏を自然な流れで纏ってその場に駆けつけようとするが、風斗の目と頭が発熱したようなそれ以上の熱さを持って風斗の足を止めた。


「...ぐっ...つっ......」


 唸るように片膝を着く風斗に心配するように駆け寄るリシュ。

 頭を抑えながら、ゆっくりと大きく深呼吸をする。そして風斗は誰に話すわけでもなく言葉を紡ぐ。


「最近こうなんだよ。熱が溜まりやすくなってる気がするのと、上手く放出できない」

「魔法を扱えるようになってくると出てくる症状です、風斗さん。」


 そう言うと優しく風斗の額に自らの手を置く。リシュの得意とする氷魔法のおかげか、それとも純粋なリシュの体温か、熱く壊れそうな風斗の頭をゆっくりと冷ましていく。


 そうしてしばらく二人の空間を作った後、風斗が立てるようになってからゆっくりとその場に向かう二人だった。



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