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アクアダンジョン

 可愛いエプロンに似つかわしくない鬼の、いかつい鬼の姿に一同は動けなくなる。


「(何故ここにオーガが...!)」

「(あのエプロン、可愛いですね)」

「(ん、お腹空いた)」


 様々なことを考えている風斗達を置いて、目の前のオーガは食事をテーブルの上に置くと話し出す。


「さっぎは、ありがどう。ゆっぐりしていってぐれ」


 それだけ言い残すと、そそくさと食堂の奥へと消えてしまった。


 疑問符を浮かべる風斗だったが、目の前の食事に胃袋は完全に意識が向いている。


「(まぁ食べたらでいいか...)」


 そう思いながら、木製の茶碗にゆっくりと手をかける風斗であった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやー食べた食べた!本当に美味しかったー!」


 お腹を擦りながら満足気に頷く風斗。

 潮風を浴びながらゆっくりと目的の場所まで歩いていく。


「マスター、食べ過ぎ」

「お代わり無料だったからつい...」


 半年ぶりほどの日本食に、無我夢中で食らいついていた自分を思い出し、苦笑いをこぼしてしまう。


 白く舗装された街並みを眺めながら、ゆっくりと大きな青色の扉を開く。

 ギギギと扉が地面に擦れる音がひびき、主要都市国家ルーゲンが懐かしくなる光景が広がった。


 綺麗に装飾されたギルド内。

 赤色、青色、緑色のカウンターには数名の冒険者達が依頼書の発注を行っていた。


 青を基調とした制服に身を包んだ綺麗な女性が、風斗達一行に綺麗な言葉と共に挨拶を交わす。


「初めまして、海の街ナーシサスの海洋ギルドへようこそ!ご利用は初めてですか?」


 その言葉の趣旨に頷くと、分かりやすい説明と共にギルドでの登録を済ます。

 ルーゲンでのギルドランクはcだったので、風斗のギルドランクはDに、リシュはB、ジアはそもそも依頼を受けたことが無かったのでGになった。


 一段落した後に風斗は、疑問に思っていたことを口に出した。


「依頼をパーティーで受ける場合、どのランクの依頼を受けれるんですか?」

「その中でいちばん低いランクの方の依頼しか受けることができません」


 ここではジアが一番したである。駆け出し冒険者を救う規則のひとつだろう。


「ありがとうございます」


 風斗達は早速、赤色のギルドカウンターに足を運ぶ。

 女性から手渡される数多くの依頼書に驚きながらも、内容を確認していった。


「なんか依頼の数が多い気がする」

「ですね、ルーゲンより魔物が多いのでしょうか?」


 頭の記憶を探りながら、リシュと言葉を交わす。


「ん、マスター早く早く」


 待ちきれない様子のジアに風斗は苦笑いを零しながら、依頼書をもらう。

 だが、偶然引いたこの髪が依頼内容が他と異なっていた。


「初めて見るタイプの依頼だね」

「ん、どんな?」

「えーと」


 低級の魔物の討伐内容だが、依頼人が同行するのと損壊部分を出来るだけ抑えることの項目が追加されていた。


「依頼人は、ポポ、さん?」


 依頼人の名前を口に出す。

 風斗達一行はその名前から、小柄な女性を自然と連想してしまう。


「オデに何かようか?」


「「「!?」」」


 不意に話しかけられ後ろを向いた風斗達は声を失ってしまう。



 大きな角が生えた顔に、白濁とした瞳。

 大きな牙が重力に逆らうように下顎から伸び、黒光りした筋肉隆々の肉体が冒険服から覗いている。

 あの店に居たオーガがそこには居た。


「あ、丁度いいですね、ポポさん!」


 ぽんと手を合わせながら、オーガに話しかける受付嬢。

 その様子を眺めることしか出来ない風斗達。


 話が終わったようで地響きにも似たような足音ともにそのオーガはやってきた。


「さっきのおぎゃくさん。依頼受けてグレてありがどう。」

「へ?依頼?」

「それ」


 オーガが指さす先には、先程風斗が手にした依頼書が握られている。

 自らが勝手に描いた理想像が華々しく壊れていく音がする。


「も、もしかして、」


 緊張を含んだ言葉を口から生み出した。

「ポポさん?」

「そうだ」


 ノータイムで返答され、風斗は膝から崩れ落ちそうになる。

 ゆるふわボブカット系女子、さよなら。そんなことを思う風斗であった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 潮風香るしっとりとした道、天井に広がるような暗い海。

 海の街ナーシサスが保有する巨大な海洋ダンジョンに彼らは歩を進めていた。


「依頼物は、えーと...」

「リザードマンのじっぽとカスタの貝がふくずうこ。」


 依頼書を眺めている風斗にポポが補足する。

 大きな布袋を持ちながら、風斗達の後ろを怯えながら進んでいる。


 リザードマンは水性の生物とおなじ体を持ち、生臭い鱗に、白濁した瞳。

 極めつけは連携と、長い槍を持っていることであろうか。


 ポポ自体戦闘をすること自体が嫌いであり、中々自分で使う食材を取りに行けないらしい趣旨は、ダンジョンに入る前に話していた。


 海の中を歩くような、暗い海のダンジョンに入ってから数分。

 複数体のリザードマンとカスタの貝を討伐しながら会話が続く。


「視野が狭まるけど、単体が多いね」

「ん、そう」

「これだけ広い規模だとはぐれが多いですね。群れは奥の方でしょうか?」


 集まる素材とコアを確認しながら一行は奥へ奥へと、依頼書と共に付いてきたダンジョンの地図を頼りにしながらさらに階段を下っていく。


 とうの昔に依頼品は回収しているが、行ける所まで、という事で奥へと行く。

 ジア主体、少ない戦闘、ポポを守りながらという難しい内容だが、彼らはピクニックにでも行くような軽い足取り。


 不安と恐怖、そして安心が入り交じった視線を向けるポポに風斗は気づいてはいた。

 だが、懸命についてくる大きなコックに時折声を掛けながら、ダンジョンを攻略していく。


 そこには魔物という認識は完全に消えていた。


「ここに来てから2時間ぐらいかな?まだ全然終わりが見えないね」

「ごこ、すごいでかい。おでも何度かぎてるけど、最後まで行ったごと、ない」

「そろそろ帰りましょうか。依頼の品とそれ以外の物もそれなりに集まってきたので」


 そうだね、と言いかける瞬間、風斗の全身に悪寒がかけ走る。

 前方のポポが壁にハマっている綺麗な石を取ろうとしている。


 それ行為自体はそこまででも無いが、綺麗な石の先には少し大きなマナ反応。

 完全に魔物から出るマナであった。


「ポポさん、危ない!」


 瞬時に風纏を発動し、ポポを回収する風斗。

 ポポが立っていた場所は、魚型の魔物の口が襲っていた。


 空間を振動するかのごとく歯が噛み合う音と、揺らめく光をともした提灯が揺れる。

 その光に誘われるように複数の魔物が闇の天井からはいでてきた。


 ポポを端に座らせ、前方の魔物の大群に目を見張る。


「(様子見をしていたってとこかな)」


 軽くリシュと目線を合わせ、前方の魔物達を全滅させようとするが、そこで待ったがかかる。


「マスターここは私がやる」

「結構な数いるけど...」

「早くマスター達に追いつきたい」


 少ない言葉でもジアの意思が伝わる。感情に読めない顔だが、瞳は紅蓮のごとく燃え上がり、前方の魔物たちに向いている。


「分かった、俺たちはポポさんを守るからあとはよろしくね」


 その言葉に頷きだけ返すと、身の丈ほどある大きなランスと、ゆっくりと浮遊する機械。

 揺らめく周囲の魔法が彼女にまとわりつくように伸びる。


「雑種、全て駆逐する」


 此度のダンジョン攻略の最大の戦闘が今行われた。










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