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閑話:旧友と報告

閑話2話目です。

内容は教師陣側の視点です。もう一話分閑話と、時系列を戻した風斗達の視点に戻ります。

「そうかい、リッケルはもう大丈夫そうなんだね」


 主要都市国家ルーゲンの外れにある、知る人ぞ知る酒場でカリストは、安心したように言葉をこぼした。


「一時はどうなるかと思ったけどね」


 綺麗なロックグラスを片手に苦い笑みを作りながら、マッシーは呟く。

 教師という立場の彼なりに、思うことがあるのだろう。


「君が思い悩むことではないよ。大事な人という喪失は、誰しもが迎える大きな壁だ。

 大事なことは寄り添ってあげることだよ」

「君ってやつは、変わらないな。」


 少しの笑みをこぼしながら、マッシーはグラスの中の液体を飲み干す。


「珍しいじゃないか、君が飲みに行こうなんて」

「俺にもそういう時があるよ」


 砕けた口調になり、頬が少しだけ赤く染まるカリスト。

 これが彼のいつもなのか、それはマッシーしか知らない。


「俺も、教え子を守れなかった。」

「私達の力ではどうしようもないよ」

「それでも、俺は...」


 苦虫を噛み潰したような顔になりながら、同じく綺麗なロックグラスの中に注がれている液体を飲み干した。


「少し...付き合ってくれないか...」

「分かっているとも」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ルーゲンから少し離れた森の中、光を纏った蝶が飛ぶ幻想的な場所。

 だがそこは共同墓地と言われる場所であった。


「ここは...」


 マッシーが言葉を呟くかどうか、躊躇ってしまう。

 まだ新しい墓石が多くあり、手向けの花々も多くある。


 カリストは何も言わずにゆっくりと一つ一つの墓石の前で、額に軽く祈るようなポーズをしていく。

 この世界の作法のようなものだ。


 マッシーも何も言わずにゆっくりと同じようにしていく。

 星空が落ちてきたようなそんな光景の中、静かに事は進んだ。


 最後の墓石に祈り終わったあと、カリストが口を開く。


「ここは夏休みの時、ライカンスロープの襲撃にあった村人たちの墓だ」

「やっぱりね」


 どこか悲しげな顔のカリスト。こんな彼を何度、見ただろうか。


「このために私を?」

「そんな訳ないよ」


 その言葉の意味を、真意をマッシーは知っていた。

 しばしの沈黙の後、共同墓地を後にする二人。


 月夜に煌めく深い森の中へと足を進める。

 すると前方淡い光が集まった人型が、多く森の中を漂っていた。


 青白い光に包まれたそれと二人は目が合う。

 瞬間、赤黒い眼が殺意を剥き出しにして咆哮を上げた。


「キエェェェェェェェ!!!」


 その咆哮と共に複数の青白い光が現れ、人型を形成していく。


「ゴーストか、どうする?カリスト君」

「近くに村もある。申し訳ないが、退場願おう」


 その言葉を聞くやいなや、二人の姿がゴースト達の後方に現れる。


「アギャ?」


 ぽかんとした声をあげた瞬間、ゴースト達の姿は消えていく。

 二人はいつの間にか持っているゴーストの白いモヤのような核を見せ合い、勝敗を見極めた。


「カリスト君が十個で、私が九個か」

「これで俺の289勝288敗、149戦引き分けだね。」

「君ってやつは、鈍らないねぇ。」


 学園の長を務めるカリスト。

 その級友にして、高い魔法技術を誇るマッシー。

 お互いがお互い、競い合うのは久々の出来事であった。


 その後数戦、漂うゴーストを討伐しながら森の最奥、寂れた小さな洞穴にたどり着く。

 二人がようやく入れるほどの小さな洞穴の奥、何重にもかけられた結界を解きながら飾り気のないひとつの物にたどり着いた。


「久しぶり、逢いに来たよ」


 そう言いながらカリストは、目の前の墓石のように立てかけられた古びたレイピアに、微笑みを向ける。


「私も最近来れていなかったが、久しぶり」


 マッシーも旧友に会うかのような笑みを浮かべた。


「また一人、君のような子を悲しませてしまった。もうあんな思いをさせるのはやめようと誓ったのにね。

 不甲斐ないばっかりだ」


 悲しい笑みが続く。報告するように紡ぎ出す言葉を、マッシーはしっかりと受け止めるように眺めている。


「でも俺たちの時とは違って、彼女には大切と呼べる人達が居る。

 だから、君も彼女らを見守っていて欲しい。」


 返事はない。だが、不自然に流れていた風がカリストを包み込むように吹き始めた。


「カリスト君、君ってやつは。見ない間に大人になって...」

「マッシーと俺は同じ年齢だったはずなんだがね?」

「君の学生時代の荒れっぷりと言ったら...」

「学院長命令だ、忘れなさい」


 穏やかな談笑がしばらく続き、月の灯りがその優しさを増した頃、別れの言葉を切り出す。


「それじゃあ、また来るよオーキッド。夢の中で逢えたら、その時はよろしくね」

「彼女に対して少しくさいんじゃないかい?君ってやつは昔から...それじゃあねオーキッド」


 二人はそういうと小さな洞窟から体を運ぶ。目的地は彼らのルーゲン。

 その後ろ姿はなんだか懐かしく、寂しそうであった。


 秋風の香る帰り道を彼らはゆっくりと、抱いた気持ちを忘れないように噛み締めるように歩を進めた。




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