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別れと再出発

15万文字目にして、ようやく旅に出ました。

ここまでの感想などは活動報告書にまとめておきます。

読んでいただけたらなと思います。

 夏の熱気も恋しくなる肌寒い夜。闇に浮かんだ月が優しく辺りを照らす、主要都市国家ルーゲンの出口に三人のフードを被った人間がいた。


 異世界からの来訪者、春野風斗。忌み嫌われた黒髪黒目の彼。


 そして横に並び立つ美少女の二人。つい先刻まで王都グラン学院、第一等級首席と謳われた金髪の美少女。

 だが今は月光に並び立つ綺麗な銀色の髪と燃え上がるような煉獄の瞳を持ち、朗らかな笑みを浮かべながら談笑している。


 談笑しているのはこれまた美少女のフリージア。


 滅んだとされる機械人形の生き残りであり、水色のショートヘアが揺れながら可愛らしい動きを見せていた。

 リシュの髪の毛がばれ、そのままの流れで旅に出るかと思いきやさすがにリシュは挨拶をしたいそうなので夜集合になった。


 家族に挨拶を残したリシュが来る頃には秋の風が吹き始め、月光に呼応するように綺麗な花々が咲いていた。

まるで三人の門出を祝うかのごとくである。


「あの、風斗さん本当によかったんですか?」


 憂いを帯びた表情と台詞に風斗は内容を察し、返答をする。


「大丈夫だよこれで、俺には叶えたい夢がなかったから」


 悲しげな笑みを浮かべながら話す風斗に、リシュはより一層その顔に影を落とす。


「でもね」


 付け加えるように言葉を続ける。


「リシュの夢を聞いた時に、一緒に俺も行きたいなって思ったんだ。だからこれは俺のわがまま」

「そう...ですか...」


 幾分救われた気分になるリシュ。その様子を面白そうな顔で眺めているジア。

 しばしの間三人で団欒していると不意に声をかけられた。


「揃っているようだね。」


 声の主はカリスト学院長。それにアンベリール夫妻もいた。


「リシュ君の件、聞いたよ。ごめんね私の力不足で...」


 少なからずあった学院の風潮がリシュを追いつめてしまったことに対し、思うことがあるのだろう。

 だが、リシュは笑顔を咲かせながら決意を宿しながら言う。


「いいんです、決めたことですから。それに今はひとりじゃないので。」


 そう言いながら風斗とジアのことを見た。その様子に満足気に頷くと、カリストは持っていた魔道具のカバンから大きなローブを取り出すと三人に渡した。


「様々な効果を付与しておいたよ。旅に役立つと思ってね。」


 三人の体格にぴったりのローブを羽織るとお礼を言った。

 そして今度は夫妻の番と言うように話し出す。


「ごめんねリシュちゃん。気づいてあげられなくて...」


 涙混じりに話すシラン。その横で彼女の肩を支えるように並び立つネモ。

その瞳はシランと同じように赤く腫れている。

 そして意を決したように風斗とジアの前に立つと、あの日のように頭を下げる。


「私たちの自慢の娘ですが、これからもよろしくお願いします!」


 瞳から流れ出る涙が地面に跡をつける。その様子にリシュも涙腺が緩むが、風斗はネモの肩を掴むとゆっくりと言葉を紡いでいく。


「大丈夫です、ネモさん。きっとまたここに帰ってきます。みんなで」


 その言葉に救われたような顔を見せ、ネモもカリストと同じようにカバンから物を取り出す。


「リシュちゃんにはこれを。」


 素朴であるが美しい宝石が一点に乗ったブレスレットがリシュの手に渡る。


「私たちがいつも傍にいると思ってね、リシュちゃん。」


 涙混じりの笑顔を咲かせながらシランが絞り出すように話しかけた。

 その様子にリシュの涙腺が壊れ、溢れ出すように抱き合う。


「ジアちゃんにはこれを。」


 綺麗な水の花のような装飾が施された髪留めが渡される。

 月光を反射したそれは美しく揺らめき、ジアもはしゃぐ子どものように喜んだ。


「ありがと。大事にする。」


 大切に包むようにしながら髪留めを止めると、女神を彷彿とさせる美しさが輝く。


「そして最後に風斗くん。これを」


 カバンから抜き取るように取り出した物を風斗に渡す。


「これは?」


「夏の時、風斗くんライカンスロープを討伐しただろう?そのコアを使ったロングソードだよ。」


 素朴であるが、美しい直線に刃こぼれひとつ無い刀身。

 使用者が扱いやすいように手を入れられた柄の部分。そして極めつけはその硬さ。


 今まで扱っていた銅剣とは似ても似つかないその硬度に風斗は驚く。


「渡そうと思っていたんだ。君は僕達の息子のようなものだからね。いつでも待っているよ!」


 胸に熱いものが込み上げ、目頭が熱くなる感覚に襲われる。目に力を入れ、雫を押さえ込み絞り出すように言葉をかける。


「ありがとう...ございます。絶対にこのことは忘れません...!」


 そして出発の時間がやってくる。これ以上ここに居たら、いつまでたっても離れられないと悟った三人。


 名残惜しい気持ちを押さえ込み、自らの夢を果たしに足を明日へと向ける。


「ネモ。子どもたちの前で泣かないでよ!」

「シラン、君だって...!う...。」

「子どもの旅立ちはこの歳になっても慣れませんよね。」


 後方で聞こえる会話を耳に残しながら、月光の花咲く道を歩く。


 彼らの冒険の幕は今上がった。





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