王都グラン祭中編 1-2
劇中で出てくる風斗による魔法理論はあとがきで例として出しておくので、よー分からんって人は見てください。
ニュアンス理解で大丈夫な方は飛ばしてもらっても大丈夫ですー。
あと、今回長くなってしまいました。
深い森のようなステージの中走る、光り輝く的を持った人間。持ったというよりかは浮遊している物体に取り憑かれているというふうな言い方が似合うだろうか。
「あ、あいつ!護衛も一人もつけないでなんで互角以上にやりあっているんだ!」
数人の先頭を走っている第二等級の男子生徒が愚痴をこぼす。
「ほんと、あぎゃ!?」
「おい、どうし、あぐぅ!?」
そしてその間にも風魔法で数人の生徒が、地面とこんにちわをする光景が数分と続いていた。
もちろん数人の追っ手を一人で相手しているのは異世界の住人の風斗。得意の身体強化のマナとほかの等級にバレないように、足だけに風纏を施し移動速度を格段に上げている。
さらに木々を縫うように移動しているので魔法が当てづらく、仮に木々を避けて発射できたとしても軽くいなされるか、避けられる始末。
次第に焦りと苛立ちを含み始めた第三等級の隙を風斗が見逃すはずはなく、風魔法の『風刃』で一人ずつもしくは油断している人間ごと魔法で沈めていった。
競技開始からの付き合いで追っ手は残る三人、他の追っ手は風斗の風魔法にやられ気絶をしている。そして今まさに一人減らし、少し開けた場所で二人の前で突然動きを止める風斗。
周りの木々が周囲を囲み風に揺れている。開けた盆地のような場所で、風斗と距離を取るように睨みをきかせる第ニ等級の生徒。
風斗は肩を激しく揺らし、とめどなく溢れる汗をとめない情報達に、話しかける。
「君たちに聞きたいことがあるんだけどね?すぐに口を割ってくれるといいんだけど」
「はぁ、はぁ、君に話すことなど、はぁ、ない!」
「そ、そうだぜ!はぁ、もう逃げるところもねぇ!」
すぐさま魔法を唱えようとする情報の一人にすぐさま風纏での高速移動で近づいて魔法で黙らせる。魔法を変換するはずの彼だが、瞬間で白目を剥き意識を手放した。
「ぐっ!」
そして間髪入れずにすぐ隣にいる残りの一人の体を組み伏せる。
「こ、こんなことをしても無駄だ!私は絶対に口を割らない!」
その光景に深く顔を歪ませる風斗。元のいた世界でも似たような事が多くあった経験が彼の顔を醜く歪ませるのだろうか。
「教えて欲しいのは第三等級の大体の的の居場所と、他に見つけた的のこと、それだけを教えてくれないかな?」
すぐ様、前の世界の張り付いた笑顔を行使する。その変容さがより恐怖を掻き立てられたようで、組み伏せられている生徒の目が恐怖の色に染っていく。
「く、くそ。他のみんなはどうしたんだ!何故ここまで来ない!?」
返答してほしい内容ではないが、最もな意見につい好奇心で口が軽くなってしまう。
「それなんだけどね。実際に魔法に打たれて確信したよ。この仕組みが」
風斗の的にはしっかりと『二』という文字が浮かびあげられている。それは最初の襲撃の時に一点当てられてしまい、後の推測のためにわざと当てられた点数であった。
「僕達の周りにまとわりついているこの青白い魔法。認識阻害魔法と衝撃魔法変換だっけ?の効果ってさ、まぁ前者は省くけど後者は怪我しないようにって事だよね?魔法によって」
突然、返答をされ急に戸惑う第三等級の生徒。茶髪の綺麗な長髪がトレードマークらしい彼の顔は困惑と恐怖が混じった顔に変わっていた。
「それで魔法に当たったら体のマナ操作が数秒できなくなる。それは魔法を使える人間にとっては痛い打撃だよね。だから僕も魔法に当たったら終わりかなぁと思ったんだ。囲まれてさ」
そこで一息つくと確信めいた顔で説明を続ける。
「一度目の君たちの襲撃で、的に直接魔法を当てられて点数を取られた。それで体が動いていることに疑問に思って君たちの攻撃を二回目わざと左腕に受けてみたんだ。そしたら疑問が確信に変わった。」
何を話しているか分からないという風に困惑しかしない下の生徒に、分かりやすく落胆したような顔をし、蔑む目を向ける。
「分からないかなぁ。魔法に当たったらマナ操作が出来なくなるんじゃなくて、魔法に当たった部分のマナ操作が出来なくなるんだって。実際受けた左腕と受けていない右腕のマナがうまく扱えなかった。まぁ足が動くから逃げるのには支障はないけど」
そこでようやく組み伏せられている生徒は気づく。この場の異常なことに。そして男は恐れながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ど、どうしてカイ君は起きないんだ?」
その言葉にニヤァとした嫌な笑みを浮かべる風斗。そこで種ばらしと言うように全ての事実を優麗に語り出す。
「そのことに気づいた僕は攻撃の方法を変えた。強い魔法で押し切っても、またすぐさま起きてこられたらとてもじゃないけど捌ききれない。強い魔法を打っても威力は変化されて無効化されてしまうからね。マナ操作ができないというデメリットに。だから君たちが全速を出して追ってくるように、足場を駆使して追ってくるように仕向けた。」
淡々と、ただ相手の行動からは目を離さないように、会話は続く。
「あとは簡単さ、足と頭に向けて魔法を放てば、身体強化をかけている箇所のマナが練れなくなって転んだり、足場から落ちる。魔法以外の衝撃はしっかりと伝わる事はクラスの子達の協力で知っていたから、全速力で走っていたり、高所に居る人間が転んだり、落ちたりすれば衝撃は頭に流れる。」
こんこんと軽く生徒の頭を叩く。その時の生徒の表情は、この悪魔のような男は何を話しているのだ、そんな風に怯えていた。
実際風斗が行ったことは想像以上に難易度が高い。推察した内容を確かめることもそこにまず到達することも、基本に忠実な彼ら生徒の頭では考えられない。
それを差し引いても追っ手の魔法を避けながら、急所を狙い撃ちする技量。気絶させられる場所に誘い込むなど、実際話している以上に難しいことであった。
「君がとんでもない者だということは分かった。だがひとつ教えてくれ、そこに倒れているカイはなぜ起きてこない?君の話では気絶する状況ではない」
確かに彼が言う通り全速力で走ったり、高所にいた訳でもない。ただの魔法に倒れたように見えていた。
「さっきも言ったように魔法での直接的攻撃は、ダメージが変換されてしまう。魔法っていうのはマナに直接命令式を書き込んだものだからね。だから僕は魔法を彼に当てていないよ?」
で、では、、、と狼狽える生徒に正解を教える風斗。
「命令式で作った風の塊を彼の脳天で爆発させただけだよ、魔法の影響を受けた風の衝撃は魔法とはカウントされてないみたいだしね?いやー良かったよ成功して」
のほほんと笑う風斗に対して、失敗した時のことはと聞こうとした生徒だったが、現在の状況を見て理解する。この男は例え魔法でカイが気絶しなくてもすぐに組み伏せられるだろうと。
より一層歯をギシリと噛み締める。
「もういいかな?どれぐらいの時間で行われるか分からないし、みんなの援護に行きたいんだけど?」
ふと自称気味に笑い、洗いざらい知っていることを話す生徒。だがおそらく真っ先に森林地帯に来たのであろう、各等級に探知系の魔法が得意な生徒がいるということ以外はほとんど有益な情報は得られなかった。
風斗たちの弱点としては探査系や探知系の魔法を実戦レベルで扱えるものが居ないことだった。些細な情報でも遅れれば後手に回る。そんなこんなで一人で追っ手をひきつけ、周りの生徒は他の等級の生徒を探していた。
「ほかの子は大丈夫かな」
そう呟くと組み伏せていた生徒の拘束を解くとすたすたと歩いていく。その様子に困惑しながらも、言葉を紡ぐ。
「わ、私のことも気絶させないのか?」
その言葉に振り返ることもなく冷たく伝える。
「意味も興味もないからね」
その言葉で血が脳天に登りあげ、呪文詠唱の形をとる生徒。そしてその生徒が頭部に強い鈍器のような衝撃を受け意識を手放すのに数秒とかからなかった。
倒れる音を背後で確認し歩みを早める風斗。マナ消費量はほとんどないにしろ、時間がいつ終わるのかわからない今、不意打ちと推測のために減らしたこの二点がどれほどの重みを持っているかも分からない。
なのでいち早く合流するか他の等級の的を当てなければと焦っていた。
「(あまり有益な情報でもなかったし、時間をかけすぎていたかな?)」
なにか目印ないかなと、周りを探す風斗。その時前方から巨大な爆発音と様々な色の派手な魔法が飛び散らかしていた。
もしやと思い周りに人がいないことを確認して全速でそこまで走り出す風斗。幾重もの木々を潜り抜けて、ものの数秒でその惨状にたどり着いた。
水が溢れる都のような風貌であったであろうそこは今や瓦礫が散乱し、穴が大きくそこかしこに空いた最悪な戦場と化していた。
標的にされた生徒は怯えた表情を浮かべながら、必死に防御魔法やらなんやらを唱えている。その防御魔法をことごとく打ち消しながら、大声をあげる生徒。
「ヒャッハー! 」
どこぞの世紀末な声をあげながら見慣れた金髪の生徒が怒涛の魔法を繰り出す。かと思えば近くまで迫っていた生徒の胸ぐらを掴みぶん投げ、気絶させ、的や的の生徒に向けて魔法を放っていた。
他等級の生徒の的の上の数字はゆうに三桁を突破していた。風斗が着いた時点でもタコ殴りにされていたことが分かり、タコ殴りされていた生徒はもう既に半狂乱のまま逃げ出していた。
攻撃は殆ど無効化されるとはいえ殆ど直撃すれば死ぬ魔法の威力だ。現に地面などは抉られている。さらに爆風や衝撃までは無効化しないため、肌をなぶる感覚は徐々に心に余裕をなくしていく。
泣きじゃくりながら逃げるのも、頷けるといったような光景だ。まさに地獄。この世の地獄。
だが、それを逃がさないとばかりにならず者等級の面々が魔法や束縛魔法を放ち、逃げ場をなくしていく。その惨状に深いため息をつきつつ、見慣れた少年に話しかける。
「や、やぁリッケル。ち、調子は良さそうだね?」
その声に振り返り、パァと顔を輝かせる少年。その光景は美しい信頼関係の織り成した兄弟にも見えるようだった。リッケルが口から泡を吹き出しながら気絶している生徒の胸ぐらを掴んでいなければだが。
ポイと生徒を投げると可愛らしい足音を響かせ、風斗の元に走り寄る。
「風斗兄ちゃんじゃん!こっちはあらかた片付いてきたぜ!それよりそっちは?」
「僕を追ってきた人達はあらかた寝てるよ。お話したけど有利になるようなことはあんましなかったかなぁ?」
お話、とはあの尋問のようなことなのだが今は些細な問題だ。そしてこの惨状について風斗は尋ねる。
「それにしてもやりすぎじゃない?」
その質問を投げかけられたリッケルは急に口をすぼめてそっぽを向いてしまった。そして少しのぶっきらぼうさを携え、言葉を紡ぐ。
「だってあいつらまっ君とか俺らの悪口言ってきたんだもん」
思わぬ返答にふふっと笑ってしまった風斗。転載的なマナ操作に、的確に状況判断できる臨機応変さを兼ね備えていても、やはりまだ中身は子どもというか、純粋に仲間を思いやれる子なんだと再確認した。
思いやりすぎということも言えなくはないが。言えなくもないというか普通にやりすぎだが。
「ここは大丈夫そうだね、ほかのところに向かおうかな。」
そう言う風斗に待ったをかけるリッケル。
「多分必要ないぜ」
そういうのと同時に突然背後からけたたましい爆発音とともに、巨大なゴーレムが立ち上がる。叫び声を上げながら地形を崩しているゴーレムの所有者は、ほかでもないリー三姉妹であろう。
そして左、はるか彼方では沢山の色とりどりの魔法が舞い踊り、地形を崩していた。どこを見ても地形を崩す光景が広がっており、ため息は深みを増すばかり。
色々なことに諦めを決め、リッケルと風斗が崩れた瓦礫のそばに腰を下ろし、二人で今までの事を話して数分後にアナウンスが響く。
「そ、そこまでです。」
その声を聞くと、慌ただしく様々な魔法の色で鮮やかに彩られていたスタジアムはその色をなくし、ゆっくりと静けさを増していく。話を一旦止め、周りに合わせて静かにする風斗とリッケル。
音を消してから数分が経った所で体の周りを覆っていた青白い魔法の光が、徐々にその光を増し風斗の視界を奪った。眩しいぐらいな光に目を隠して数秒後、生徒の全員が入場と同じく各クラスに分けられた配置でスタジアムに立ち並んでいた。
どうやら簡易的な転移魔法が発動したらしい。風斗以外の生徒は慣れたように落ち着きを見せている。
「では、結果を発表します。」
今日何度か聞く台詞が続く。認識阻害の魔法がまだかかっているのか、会場の様子が靄のかかった景色のように、ぼやけてうまく認識ができない。
「得点総数7点、四位第二等級」
風斗達を都合のいいカモだと考えていたのか、攻撃特化の生徒に多く人数が割かれていたのであろう。
実際返り討ちに合わなければ確実に一位になった実力を持っていようが、そこは異世界の努力の化け物だ。相手が悪かったとしか言えない。
第二等級の面々は膝から崩れ落ちている。
「得点総数67点、三位第四等級」
ついで点数が跳ね上がる。実際にはこれくらいの点数が平均であり、一桁代はとんでもない結果なのだろうと風斗は考えた。
「得点総数89点、二位第三等級」
ついに二位が出される。この時点で第五等級の
一位は決定されているが、未だ靄は晴れない。さらにほかの面々も神妙な顔つきでその時を待っている。
「一位、第五等級得点総数は」
もったいぶった言い方で止めるアナウンス。次の言葉と共に第五等級を包む、靄が一気に晴れる。
「579点です」
「うぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!!」
「わあぁぁぁああああああああ!!!!!!!」
風斗のからだが小刻みに、いや、スタジアム全体が小さく小刻みに揺れているような錯覚を起こす程の大歓声。今日何度鼓膜を破壊されてきたかと思う中で、一番大きい咆哮にも似た歓声。
じわじわと湧き上がる達成感、優越感、全てに身を委ねてしまいたい気になる風斗。
「ほら!ふうと兄ちゃんも手を振って!」
例のごとくいつの間にか近くにいたリッケルに袖を掴まれる。リッケルは咲き誇る笑顔で観客達に回るように、手を振っていた。風斗も同じように未だ慣れないこの昂る感情のまま、周囲の観客達に手を振る。
様々に彩られた笑顔や、賞賛を携えた顔などに手を振る。ほとんどの観客が立ち、体でも喜びや賛美を表している。
いつの間にか上がっている花火や、煌びやかな魔法で周囲は彩られており、風斗はその光景を眺めながらゆっくりと自分達の成功を噛み締めながら手を振り返していた。
中盤に差しかかる辺りで、ふとリシュと目があった気がした。
観察眼で、軽くリシュの様子を見てみる風斗。変わらず氷のような表情をしているが、その目は彼女らしい陽が満ちている気がした。あとで時間が空いたら話に行こうと決め、軽く微笑みを送り、観客に手を振る事に戻った風斗であった。
要は自転車で運転してる時に前輪外して、頭につけてた防具外しているようなものです。
それを風斗は意図的にやっている感じです。




