王都グラン祭中編 1-1
「で、では結果を発表致します。」
先程と同じ女性が結果発表をするが、開始時とは違いどこか落ち着きのない様子であることは、スタジアム全体が理解していた。異様な光景をスタジアムの人間全員が同じように見ていたのだ。少なからずその動揺をからかう者は居ないだろう。
やけに静かになったスタジアムに音声が響く。
「一位は24個中23個の巨石を集めた第五等級。同率二位として第二等級から第四等級。ですが巨石を一個も運べていないので、点数は加点されません。」
そう言い終わるとスタジアムの中央のほぼ真上付近、スタジアムに集まった人間や、外の売店にいる人間が見える位置に『点数表』と示された薄い半透明の赤、青、黄、緑、の物が浮かぶ。
黒文字で各等級の名前が記されており、第五等級は緑色だ。なんの点数もない点数表の緑の薄透明なボードにだけ、100と記された数字が加点される。
先程まで静かに見守っていた観客が、一気に弾け飛ぶ。鼓膜をゆうに殺す歓声が会場を包み込み、皆が皆その異様な結果に沸き立ち始めた。
風斗もカリストともにその結果をひとしきり喜ぶ。
気持ちよさそうな熱に浮かされた顔で喜びを表す風斗に、以前初めてあった時の情景を重ねながら聞こえるように大声で問う。
「風斗くん、こうなることが、君にはわかっていたのかい!?」
「い、いいえ。この結果はさすがに...多少はいい線行くかもって、思っていましたが......。」
そのまま二人は歓喜と喜びに満ちた会場全体に身を委ねるのであった。だが、喜びに充ちているのは何も2人だけではない。
スタジアムの配置された待合室。煌びやかではないが場に似つかわしくないモニターやソファーが備え付けられており、簡素ではあるがお茶のセットまでつけられている。
そして今まさにその場は歓喜という言葉で充ちていた。実際に巨石をそのあとも同じ方法で奪い取り、何度も運んでみたものの現実味というものが第五等級の面々には無かった。
実際にアナウンスの声が響き点数が加点されるまでは。その光景を目に入れてからというもの簡単に言えばはしゃぎっぱなしであった。
喜びを讃えて肩を組み合う男子生徒もいれば、身を寄せあって歓喜に目を濡らしている女子生徒。かく言うマッシー教授も同じ待合室に居て、結果を生徒と共に神妙な面持ちで見ていた。
そして結果を聞いた後、立ったまま気絶し、涙を流し続けるという偉業を今なお成している。そして今回の第五等級の勝利に、一役買った三姉妹はと言うと。
「り、リリー姉さんが挑発で、あ、あの残骸でゴーレムを作らなければ、ぜ、全部運べたのに」
「しょうがないでしょ!あのゴーレムが巨石で作られてて、最後に戻すつもりなんて!」
「どうりで〜ほかより〜硬いはず〜」
いつものようなく口論を繰り広げていたようだが口元は非常に、にこやかに咲いていた。リリーが第二等級の残骸で作ったゴーレムだったが、元は岩石運びに使われている巨石で生成されたものだった。
近くまで運んでから形を戻すという第二等級の目論みだったが、結果は惨敗。さらにリリーが余分に手を加えてしまったため元に戻らなくなったことがあとに判明し、現在口論する羽目になっていた。
後で意識を取り戻したマッシー教授に嫌になるほど抱きしめられるのだが、それはまた別の話。別に事案案件では無い、断じて。そして怒涛のスタートを切った第五等級の面々はそのまま勢いを乗せていく。
風斗が出場する競技までに二十個ほどの競技が開催されたが、ほぼ全てで第五等級は一位を獲得していた。
合計点数は以下になっている。
第二等級 36点
第三等級 21点
第四等級 22点
第五等級 371点
恐ろしい程に第五等級がリードしていた。一番初めの競技を一位で通過し、それに伴った点数である100点を加点されているとはいえその大躍進は目を見張るものがあった。
思わぬ事に足を取られたほかの等級の面々が、焦っていることは言うまでもない。その事実がかえって実力を出せずに負けているというパターンも存在はしていた。
時刻は夕暮れ。昼間のトゲトゲとした日差しはなりを潜め、優しい包み込むような茜色がスタジアム全体を照らしている。そして華々しく始まった一日目の最後を飾る競技が今始まろうとしている。
スタジアム中央にあった全ての足場が動き、今はひとつの大きなフィールドが形成されていた。様々なステージが一箇所に集まり岩や木が生えている雑多なフィールドや街並みのような場所など統一感のない場所が作られる。
そして第一等級以外の生徒が全員等級別に集められていた。場所はまちまちで違う等級の面々は風斗からは見えないが、頭上のモニターに様々な場所に居る様が見てわかる。
現在第五等級は森のような位置に全員集められていた。ざわざわと賑わうスタジアム全体に、今日何度目かの声が響く。
「皆さん、お待たせ致しました。本日最後の演目『クラス対抗的当て競走』を行いたいと思います。生徒の皆さんは準備をお願いします。」
風斗を入れた第五等級の面々も他の等級の生徒と同じように準備を始める、、、のではなく今日の勝利の余韻に浸っていた。
どこが良かったのかどこが悪かったなどを話し合い和気あいあいと過ごしている様は、競技の準備中とは思わないだろう。競技の説明を受けていなかった風斗がキョトンとした様子で立っていると、突然後ろから話しかけられる。
「風斗兄ちゃん!俺の活躍見てくれた?」
声の主は第五等級のガキ大将のリッケル。今はもう珍しくはない金髪の少年のどこか誇らしげに胸を貼る仕草に、ふいに風斗の口元が緩む。
「見てたよ。カッコよかったね、なんか大人びて見えたよ」
そう伝えるとリッケルの顔も緩くなる。風斗はその後にこの競技について教えて欲しい趣旨を伝えるとリッケルはしっかりと教えてくれた。
まとめるとこうだ。この競技はクラス対抗で行われる全体競技で、ルールは簡単。
ランダムに振り分けられる的を持った、違う等級の生徒に対して攻撃魔法を当てる。的を持った生徒は当てられないように逃げる。時間内で的に当てた回数を競うという競技だ。
「っと。そろそろ時間みたいだぜ。」
リッケルが話し終わり、そうつぶやくと同時に青白い光が全員を包み込む。
「これは?」
「認識阻害魔法ってのと衝撃変換魔法。さっきのモニターが見えなくなるってのと、魔法が飛び交うからさ、危なくないようにって配慮。ただ魔法に当たっちゃうと数秒マナを練られなくなるから注意だぜ。」
頭上にあったモニターに何やら靄のようなものがかかって見えなくなっている理由はそれかと納得する風斗。それと同時に特攻してバカスカ魔法を放つことも出来ない事を理解する。
「それで...これが的だね。分かりやすく光り輝いて場所が分かりやすいって事か。」
風斗を含めた数十人の頭上には光り輝く的のような物が浮遊している。円形でいて等間隔に黒の線が白の基盤を際立たせ、真ん中には赤のコントラストが存在しておりさながら縁日の射的のようなものだ。
手で触れようとしても、ジジっと音を立てて霧のようになるだけで数秒もしないうちに元通りになる。そうこうしているうちにアナウンスの声がスタジアムを走る。
「では準備が整いましたので、始めさせていただきます。生徒の皆さん頑張ってください。では始め!」
そういうと会場の声も聴こえなくなる。どこに何があるかを観客が教えないようにするためだろうか、音声阻害の結界も張られているのだと軽く推察する風斗。
「それじゃ、僕達も始めようか?」
にっこりと笑う風斗に頷く第五等級の面々は、一人残らず鋭い眼光を放っていた。
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