王都グラン祭前編 1-2
体育祭編長すぎて全然終わりませんでした。長い間お付き合いください。
今回と次回は三姉妹視線です。主人公は観戦です。
質量化しそうな熱気と、けたたましい程の声援で彩られた開幕式は無事に終わり、生徒達はいそいそと自らがでる競技の準備や友達の声援の準備を進めていた。
出番のない生徒などは各々の家族、友人などのところに足を運び、この祭りを楽しむとのことだ。現にならず者等級の半数以上は家族の元へ行ってしまっている。リッケルとリー三姉妹も各々の家族と過ごすと風斗に話していた。
手持ち無沙汰になってしまいとりあえず、楕円形のスタジアムの客席をゆっくりと歩く風斗。食べ物を片手に談笑する家族、競技の応援のことで話し合っているカップル、異種族同士で今後の政治について話したりと、多種多様な場面が多く見られた。
手頃な席があればそこに座り、なければ周りの屋台などで時間を潰そうかと風斗はなんとなく考えていた。前方の席が空きそこに座ろうかと歩みを進めたところで後ろから不意に話しかけられる。
「風斗くん、久しぶりだね」
「カリスト先生! 」
そこには風斗を幾度となく手助けしてくれているカリストエドウィンの姿があった。思わぬ再会で自然と顔が笑みでいっぱいになる風斗。
その表情に驚きながらも柔和な笑みを浮かべカリストは風斗と共に空いている席に腰を下ろした。
ガヤガヤと騒がしく、太陽から爛々と照らされ自然に顔を拭う回数が増えていく。久々の再会で何を話したらいいかわからない風斗を見かねて、ゆっくりと話が始められた。
「さっき風斗くんを見かけた時、一瞬誰だか分からなかったよ」
その言葉にキョトンと疑問符を浮かべる風斗。風斗が学院でお世話になっている中、様々なことでカリストは援助をしてくれていた。学院自体に払うお金は無いに等しいが、学院生活では何かとお金が必要になってくる。
食事や嗜好品、文房具などはお金を支払わないといけない。制服などの服類を着れない状態にしてしまった場合は新しく買い直す必要が出てきてしまう。また、この世界での常識や作法など細かいところなども出来るようにしなくてはいけない。
カリストはこの世界の常識的知識や、月々のお金を週に分けて風斗に振り込んでくれている。お金は必要無いと伝える風斗だが、結果押し切られる形で振り込まれている。風斗も働けるようになったら返すと伝えると、極力使わないように心がけていた。
「そうですか?僕自身あまり変わった風には思えないんですが......」
自分の体を見える範囲で見てみる風斗。そういうことじゃないよ、と朗らかに伝えるカリスト。
「ここ数ヶ月では手紙だけでしかやり取りしてなかったからね。何をしているかは分かっていたけど、実際どんな風に成長しているかは分からなかったから声をかける時一瞬戸惑ったよ。」
一息ついて続きを話すカリスト。手元に持っている黄金色のビールにも似た飲料を少し飲む。
「初めて見た時よりはしっかりと体ができている気がするし、何より自然な笑顔ができるようになったんだね」
その言葉にハッとする風斗。自分の変化に気づいていたのもそうだが、何より作り笑顔を見切られていたことに驚きを顔に表す。
「バレて...ましたか。」
「人を見る目は自信があるからね。長い間教師という立場をやっている利点の一つでもあるね」
それに表情が豊かになったと、付け加えるカリスト。
ポリポリと恥ずかしそうに頬をかく風斗とは対照的に、カリストはとても楽しそうに笑みを浮かべながら会場を見ている。そろそろ第一種目が始まる時間になり、会場全体が慌て始めた。気を取り直した風斗が会場を見つめ、カリストに聞く。
「第一種目は岩石川、でしたっけ?名前からは内容がよく分からないですが。」
「ゴーレムで巨石を押してゴールまで行くという競技だよ。」
地球で言う所の大玉転がしのようなものだ。毎年グラン祭の競技数は全112個にも及び、基本的には二つから三つの競技が一斉に行われる。
だが最初の種目と最後の種目は必ずその種目だけが行われる。それ以外は例外的に一つの競技だけともあるが。必然的に出場する生徒以外の目が多く集まることに加え、その成果がありありと晒される。
毎年出たがる生徒と出たがらない生徒の差が、凄いということをリシュから聞いていた風斗。お互いに他愛のない会話をしながらも、その目は自然と目の前の薄透明なモニターに集められた。
薄透明なモニターは各席全ての者が見えるように適度な距離で空中に配置されており、その映像はスタジアムの中を映し出している。風斗はそのモニターを食い入るように凝視している。
「なにか気になることもでもあるのかい?」
「いえ、クラスメイトが映ってないかなと思いまして...あ!居た!」
指を指す風斗の指先のモニターに映っていたのは、赤髪と青髪、それに金髪の三姉妹の頭だった。見慣れた三姉妹の頭が、ぴょこぴょこと可愛らしい動きを見せながら入場していく様がモニターに映っている。
赤髪は異様に飛び跳ね、青髪はその小さい頭がより小さく、金髪はふわふわとした動きをしている。三人の個性が顕著に現れているその様子に自然と笑みがこぼれてしまう風斗。
最後に数人の生徒が入場した後、どこからともなく女性の声がスタジアム全体に響く。進行の女性の自己紹介が行われ、すぐに競技の名前が響く。
「これから第一種目、岩石川を始めたいと思います。第二等級から第五等級の皆さん。頑張って下さい。」
ざわざわと歓声がスタジアム全体に広がり、スタートラインに立ち並ぶ生徒達。第二から第五等級までそれぞれ二十名ずつ選抜されており、立ち並ぶだけでそれ相応の光景が展開されていた。
全員が並んだのを確認した教師が手を空にかざし、パァン という気持ちの良い発破音と共に青い信号弾のようなものが放たれ、生徒達は一斉にゴーレムを生成し始める。
雲一つない青空に、様々な色や模様の魔法陣が立ち並び、様々なゴーレムが生成される中、例に漏れず三姉妹も三人で力を合わせながら一つのゴーレムを作っていた。
その様子をモニターで見ている風斗が、ふと疑問をこぼす。
「第一等級は出ないんですね。」
「そうだね。今となっては祭りごとになっているけど、内容はしっかりとした進級試験。進級する必要のない第一等級は基本的には出ることは無いよ。出るとしたら開幕の踊りと教師との演出競技のみかな」
演出競技と見慣れない言葉を聞くが、教師とやるということでエキシビションマッチのようなものを想像する風斗。
会話をしている中でも時間はしっかりと進んでいる。前方に見えるモニターの中ではほとんどのクラスがゴーレムを生成しており、巨石が置いてある場所まで歩みを進めていた。
大きなゴーレムとそれを囲うように生成されている小さいゴーレム達。基本的にはその陣形が出来ており、違いは外見などだった。岩や砂などで作られたゴーレムは腕が数本あるものや、角があるもの、武器のようなものを持っているゴーレムまで存在している。
そしてほぼ全ての生徒がゴーレムを巨石のところまで到達している中、三姉妹のゴーレムも完成していた。そう完成はしていた。
「また第五等級の子達がやらかしたぞ」
「なんだ?あの形は。」
「他の第五等級の子達も形だけはできているが...まぁ今年もならず者学級だな」
風斗達にも聞こえるほどスタジアム全体では、ならず者学級に対する呆れた声で満ちていた。第五等級の他十七人はゴーレムを生成してはいるがどれも小さく、巨石を動かせるとは思えない。
巨石の場所まで移動しているがそこから動く気配はなく、その様子を周りの等級の生徒が嘲笑っている。
さらに、三姉妹が生成したゴーレムも足がうまく生成されておらずタイヤのような物だけがついている。上半身は美しい女性が象られており、統一感の無い外見に、何も知らない観客はため息を重ねる。
この競技をしているならず者学級の生徒達と、それを見ている第五等級の面子以外は...という意味だが。
「ふぅー久々にこんな大きいゴーレム作ったから時間かかっちゃったわ!でも完璧!行くわよ!」
「り、リリー姉さん危ないから、た、立たないで」
「マリー姉さん〜ノリが〜悪い〜」
美しい女性を象ったゴーレムの肩に乗り、緊張感のない会話を繰り返す三姉妹。
その光景にスタジアムがさらに呆気に取られるが、一瞬のうちに空気が変わる。三姉妹、長女の覇気を帯びたような掛け声によって。
「待たせたわね!皆、今からそこまで行くわ!女神号発進!!!」
ギュウウウウイン!!!
掛け声とともにタイヤ部分が唸りを上げる。左右にゴーレムを揺さぶったと思ったらそのまま土煙も置いていくスピードで前方、巨石が配置されている箇所まで猛スピードで走っていく。おおよそそれは、先ほどまでの様々なゴーレムと呼ばれる鈍重な物のイメージとはかけ離れていた。
モニター越しでその様子を見ていたカリストが風斗に補足を入れる。
「この競技はね、あそこに置いてある複数の巨石を転がせ、ゴールまで持っていくことを目標としているんだ。複数ある巨石を一度に何個も持っていくか、それともひとつの巨石を時間内に何度も運んで点数を稼ぐかの方法がある。」
話を静かに聞いていた風斗が疑問に思っていたことを口にする。
「あの、、、点数ってなんですか?」
その言葉に一瞬困ったような顔をするカリスト。その表情に苦笑いで返す風斗に、優しく教えるカリスト。
「このグラン祭が進級試験だってことは分かっているよね?」
「はい」
「進級するには様々な方法があるんだけどグラン祭は点数を稼げばクラス単位で進級ができる。一つ進級するためには千点が必要で、各競技の最大で貰える点数が基本的には二十点、この巨石川と最後に行われる全等級対抗長距離リレーが百点貰えるんだ」
「上がるためには意外とシビアなんですね…」
「ホイホイ上げていたら実力のない生徒を危険に晒してしまう可能性があるからね。現に一位以外の点数は少なく設定されていて、ほとんどクラス単位で上がったことは無いね。」
一息つくと話を戻すカリスト。その視線はモニターに写っているゴーレムを見ている。
「話を戻すけどこの競技は他の子達の妨害を如何にして防いで、巨石を運んで一位になるかを競うんだ。」
「そのために運べるだけの大きさのゴーレム、守るもしくは攻撃するぐらいの大きさのゴーレムの陣形なんですね」
そうだね、と笑うとすぐに険しい顔になってしまうカリスト。すぐに内容を察する風斗。我らがならず者学級のゴーレム達は歪すぎる。恐らく妨害、防御に回されているゴーレムは小さすぎて巨石すら押せていない。
現にほとんどの巨石が運ばれているのに一切動きを見せていない。さらに三姉妹が生成した女神像のようなゴーレムもスピードは異常にあるが、ほかと比べて胴体が細く攻撃に耐えられそうもない。
スタジアム全体がならず者学級に見向きもしない中、風斗だけが信じていた。それは優しいと言えない修行期間を共に乗り越えた仲ということもあるだろう。
カリストから大凡の内容を話終わるのと同時に、三姉妹は巨石の置き場へとたどり着いていた。
「くぅーー!分かってはいたけどだいぶ巨石を持ってかれているわね!」
「で、でもまだ誰もゴールに、は、運べていないね」
「例年通り〜皆だいたい同じ〜ゴーレムの〜形だからね〜運ぶまで〜時間がかかる〜」
三姉妹が話しているあいだに、先に待っていたならず者学級の小さなゴーレムが女神像に乗ってきていた。乗るというよりはしがみつくという言い方の方が正しいだろう。
「うし、準備も整ったし皆!行くわよ!」
「「「了解!!!」」」
めちゃくちゃ間が開きすみません。またゆっくりと投稿していきます。




