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クラス皆で修行です。

 広大な土地を有している王都グラン学院。その校舎は千人規模の生徒を収容できるほどに大きく、並び立つ二つの学生寮も相まって見るものを圧倒する破壊力を帯びていた。

 

 だが現在その三つの建物以外の巨大な建造物が一つ、その身を高らかに伸ばし鎮座していた。


 名は「巨大強化城マッスル君二号」。


 その体の構造として内包された強化施設ととてつもないネーミングセンスで、グラン学院にも負けじと破壊力を有しているそれは、まさに城というには些か不躾なものであった。


 全長四百メートル、横幅三百メートルのそれは様々な部屋を一緒くたにくっつけた様な外見をしていた。


 至る所から、二百前後の大中小といった部屋が溢れ出ており、その内装までは外見から判断出来ないが部屋と部屋をつなぐ道にまで、なにか柵のようなものが配置されている。


 様々な箇所から出ている腕のような大砲や頂上にある顔のようなものから人のような雰囲気さえ感じてしまう。


 また部屋ごとに色が違うのでカラフルな色合いにその部屋たちを結ぶ苔むした道がさらなる色味を与え、外見は混沌を極めていた。


 そんな無数の部屋たちを支える七本もの鋼鉄の足は何個もの関節を有しており、歩く度にガシャガシャ と土煙をあげながら歩くが、外見に似合わない安定力を誇っていた


 皆同じような呆けた顔で見続けていたが、徐々に正気を取り戻しつつある生徒の熱気と歓声でその場は埋め尽くされ始めていた。


 風斗も変わらず口を大穴の如し開けていたが、みるみるうちに目が爛々と輝き他の生徒と同じように歓声を空に向けてあげている。


 その様子に終始満面の笑みを浮かべていたマッシー教授だが、ある程度の頃合を見て喋り始めた。


「みんなも知っているとおり一ヶ月後には進級試験、王都グラン祭が待ち受けている。この街最大の祭り事であり、みんなの家の人たちも多く見に来てくれると思う。

 だが身体強化をマスターしたとしてもそれを勝ち抜き、皆で上がるのは厳しい問題だと感じている。だからこの約一ヶ月間でマッスル君二号で出来るだけの訓練や修練をしてほしいと思う。そのためのマッスル君二号だ。」


 空にまで届くかに思える声で話すマッシー教授に所々で歓声が上がる。風斗も脇に漏れず興奮しっぱなしだ。


 この世界に来て初めての夏が、もうそろそろ来る。そんな気配をじわじわと感じていた風斗であった。


 --------------


 夏の暑さも本格的になってきたあれから一ヶ月ほどたった現在。マッスルくん二号の部屋と部屋をつなぐ道や壁に対して、色とりどりの魔法がその爆裂音を奏でていた。


 赤い閃光が迸り殺意の波動を乗せた流星が苔むした道に直撃したかと思えば、色を感じさせない透明な空気の塊が側面に備え付けられている壁を爆裂させる。


 だが直撃し爆ぜたはずの道や爆散した壁はあれやあれよと元通りになり、いつものごとく日光を浴びることを苔むした道達は続けていた。


 その魔法のあいだを抜けるような凄まじい速度で移動し、避けているのは風斗の率いるならず者学級の物理型の生徒達だ。


 そして当たれば重症、打ちどころが悪ければ即死というとんでもない中級魔法を放っているのは、マッシー教授とリッケル率いる遠距離魔法型集団であった。


 現在ならず者学級の面々は、全員が個々の能力の成長に全力を注いでいた。


 物理、魔法、その他の能力で簡単に分け、各々が様々な訓練や環境を通して鍛錬を続けていた。


 空高く舞い上がっている太陽に、いつの間にかゼーミゼーミ となんともまぁ蝉のように鳴いている日常が当たり前になっている状況。進級試験、グラン祭は間近だ。


 巨大強化城マッスル君二号から少し離れ地面から魔法を打っている遠距離魔法集団は当てられていないことに腹を立てていた。


「くっそぉぉぉ!やっぱ全然当たんなくなってきてんなぁ!おい、お前らもっと精度あげんぞ!」

「「「ああ!!!」」」

「でも焦りは禁物だよ、重要なのはマナを放出する際の命令式と体感によるバランス。忘れないようにね」

「わーってるよーマッ君」


 適当な返事でさらにあだ名を言うリッケルに、マッシー教授の鉄拳が飛んでいくことは分かりきったことだった。


 数秒後には頭を抑え地面を転げ回るリッケルの姿があったが、ここ数日間で見慣れた光景であったため、他の生徒の皆は無視し攻撃魔法を唱え続け、逃げ回る物理型の生徒達に対して変わらず魔法を打っていた。


「みんなリッケル達の魔法の精度がどんどん上がっているけれども大丈夫?」

「な、なんとか」


 辛うじて答えた生徒の頬を氷の刃が掠めていき、赤い血がその白い頬を伝わり出す。


「止まっている暇はないね。皆早く次の休憩所に入ろう!マナが枯渇してきた子の周りを囲んで、魔法を弾きながら進んでいくよ! 」


 コクリと小さく頷くのを見届け風斗は先陣を風のように駆け走る。遠距離魔法に長けている生徒達はこうして精度と威力を上げ、物理型の生徒達はその魔法から逃げたり、弾いたりして凌いでいく。


 クラスでやる訓練ではこのような光景が数日ともに繰り広げられていた。そんな光景が数十分と続いた後、各々は自らの修行へと移った。


 部屋に配置された自動で動く人形相手に武術を極めたり、魔法の制度を上げるため様々なターゲットがランダムで現れる部屋にいたり、死にかけの動植物に対して回復魔法を行使していたりと、その鍛え方は多種多様であった。


 風斗自身も新しい魔法の応用を試すためにひたすらマッシー教授と模擬戦を行っていた。


 各々の疲労がピークに達していく中、突然目の前で青白い光が弾ける。青白い光が皆の体に注がれていき、同時にマナがある程度回復してゆく。


 これはマッスル君二号の固有の魔法で、部屋にいる全員に対して休憩の時間を知らせ、同時にマナポーションの中身を少し雨のように降らせることが出来る魔法である。


 内容はマナポーションだけでなく命令式さえ組み変えれば突然マグマなどを目の前に出現することも出来る。


 マッシー教授がそんな命令式を組み込むことも今後ないであろう。さらにマッスル君二号の貯蔵庫にある物しか目の前に移動出来ないので、無いものを出現することができない。


 休憩を知らせる優しい雨が上がったことで、生徒達は全員マッスル君二号の頭部部分の休憩スペースに急ぐ。


 マッスル君二号の頭部スペースは生徒達の休憩場となっており様々な施設が置かれている。シャワーなどはもちろんのこと医務室のような治療道具なども置いてある。


 頭部の休憩スペースに訪れたほとんどの生徒がマナ枯渇の症状が顕著に現れ、物理型の生徒の半数以上が傷を浴びていた。


  「天より使わす天使の涙よ。我らに慈悲をもたらさんこと。『天癒(てんち)』」


 傷を治すために詠唱を行い中級回復魔法を唱えている彼女ら回復班。治った者や自力で動ける者は休憩スペースに備え付けられているシャワーで汗を流しに行っていた。


  全員が休憩スペースに足を運び安全を確認し終わったマッシー教授がリー三姉妹に話しかけに行った。


「リリー、マリー、リナリーだいぶうまく魔法が扱えてきているね。修復ペースも早くなってきているようだ」


 上から長女リリー、次女マリー、三女リナリーの三人はそれぞれが褒められ赤く頬を染めた。


「うん!だいぶ様になってきたでしょ?」

「で、でも調子に乗っては、だ、ダメなのです、リリー姉さん」

「そうだよぉ〜マリーの〜言う通り〜」


 短髪の赤い髪を揺らしながら胸を張りハキハキと答える長女と、青い長髪で顔を隠しながら若干どもり二人の視線を交互に見ながら話す次女、金髪の長髪と共にゆらゆらと体を揺らしながらマイペースに話す三女。


 このリー三姉妹は魔法で言う創造魔法が得意であった。


 三姉妹お気に入りの人形遊びで使っている人形も魔法で作られており、材質は物質であれば基本的にそれを媒介とした人形を作れる。


 だが一人一人では力は弱く三人で、魔法や命令式を組み替えて作るという特殊なケースであった。三姉妹が鍛錬として行っているのはゴーレムなどの攻撃的な人形制作とマッスル君二号の運営、補助などである。


 マッスル君二号は膨大なマナや大量の壁や道の材料、途方も無いほどの命令式でできている創造魔法の一種である。作るには長期間の作成になってしまうが維持だけとなれば創造魔法に長けたものだけで行えてしまう。


 リッケル率いる遠距離魔法軍団と、風斗率いる物理専門職の鍛錬や、各々の部屋で行われる鍛錬でのマッスル君二号へのダメージの修復などは彼女らだけで行われている。


「今日もありがとねリー三姉妹」


 いつの間にかシャワーを浴び終え上半身裸の風斗が蒸気と共にやってきていた。


 地球にいた頃から『嗜み』と称された数多くの稽古をこなしてきたその肉体は、普通の高校生男児よりは引き締まった状態であった。


 だが異世界へと来てからはより一層武術にのめり込んでおり、体は戦士のそれに酷似した肉体へと育っている。いわゆる綺麗な細マッチョである。


「へへん、修復スピード上がってたでしょ!」

「で、でも張り切りすぎてリリー姉さん何度かマナ枯渇してた、です」

「な、なんでそれ言うのよ!」


 うぎぃー! という声とともに頭を両手でぐりぐりしだすリリー。その行為に涙目になりながら抵抗をするマリー。喧嘩は〜ダメだよ〜とおっとりとした口調でふわふわ話すリナリー。


 その光景に頬が緩んでしまう風斗。進級試験はもうすぐそこまで迫ってきている。






また土曜日に投稿できませんでしたすみません。

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