Prologue
むかしむかし。
あるところに熟れた林檎のように赤い頭巾が似合う
子どもがいました。
あまりにも赤い頭巾が似合うため、その子はこう呼ばれました。
赤ずきんちゃん、と。
赤ずきんちゃんはある日、お母さんに病気のおばあさんに
葡萄酒とパンを届けるように頼まれます。
「森には狼がいるから気をつけるのよ。それと、寄り道はしないように」
けれども赤ずきんちゃんは言いつけを破ってお花を摘み……
あとは皆さんきっとご存知なので
彼の有名なやりとりの処まで以下略。
「おばあさんの口はなぜそんなに大きいの?」
「それはオマエを食べるためだよ!」
そう言って襲いかかる狼。
ぱくりと頭から飲み込まれる赤ずきんちゃん。
次の瞬間。
ダ――――――――――――ンッ。
小さな手には不釣り合いな、無骨な短銃が火を噴きました。
「オレと婆ちゃんを食らうなんざ百万年早ぇ」
狩人の助けを待つ間もなく
狼の腹を突き破って生還した赤ずきんちゃん
――いや、赤ずきんくんはおばあさんに肩を貸しながら
容赦なく弾丸を狼にブチ込みます。
ぶっ放される銃弾の餌食となった哀れな狼さん。
どうやら彼は命からがら逃げ出すことができたようです。
その証拠に、狼たちは赤いずきんをかぶった人間を
まったく襲わなくなったのですから。
赤ずきんのお伽噺は
「リスの皮の靴」を「ガラスの靴」と訳すような
可愛らしい間違いと修正を繰り返し、またたくまに世界中に広がりました。
これは、そんな暴れん坊赤ずきんのおはなしの余波を残し
赤ずきんをかぶる習慣が広がったちいさな王国のお話です。