人外と王国
人外に護られているからこそ、国は平和でした。
これは、ある人外が人のために動いた結果のお話。
今では大国とまで言われるクローディア王国は元々小さな国だったのです。
その当時の世界は、自然界に存在する魔力を吸収して凶暴化する魔物が大量発生して人間の国はすぐに消えるものでした。そこで、当時のクローディア王は魔物とは違い理性をもった魔力を持つもの『人外』に助けを求めました。
しかし、人間の多くは『人外』と魔物の区別のつかないものが多く迫害の対象になっていたのです。そんな中で味方になってくれるものはいません。
そんなとき、一人の『人外』か王の前に現れたのです。
「私と結婚してくれるなら、貴方と貴方の護りたいものを護りましょう」
それに王様は喜びました。その『人外』は血を吸い鬼のように強かったのです。しかし、王様には既にお后様が居たのです。
「血を吸う方よ。私には既に愛する妻がいます。貴方とは結婚できません。結婚とは愛するもの同士がするものです」
と、残念そうにいうと『人外』は益々愉しそうに笑ったそうです。
「ならば、結婚はしなくていい。代わりに私と婚約して欲しい。その間に私を好きになってくれたら結婚して欲しい」
その言葉に王様は頷きました。
それから王様が死ぬまで『人外』は一緒に居ました。『人外』は永遠を生きれるほど若く強いものだったのです。
その『人外』に王様は、こういいました。
「我が盟友にして我が親友よ。どうか私の子供達を助けて欲しい。いつか、君を愛するものが現れるから」
そういい残して死んでしまった王様に『人外』は嘆きました。
王様は親友とはいいましたが、『人外』は本当に王様を愛していたのです。だからこそ王様の願いを叶えるために『人外』はいいました。
「では、これは約束だ。
君の血筋を護るために私は力を振るおう。代わりに君達の血筋は全て私の婚約者だ。他の人を愛したときは友人になろう。
いつか私を愛してくれるものが現れるまで、この約束を続けようじゃないか」
こうして、クローディア王国は『人外』の守護を得たのでありました。
□□□
急に婚約者の学園に呼び出された。
そんな私の目の前には、婚約者と綺麗な少女がいる。
周囲には多くの人人人…人の山が見える。その中で、私の婚約者が口を開く。
「元々得体の知れないお前とは反りが合わなかったんだ。この婚約はなかったことにする!」
怒鳴るように言う婚約者に周囲の生徒が息を飲む。
そういってくれるのは構わないけど、どうして態々公衆の面前で言うんですか?とか言いたいことがあったのだが
その前に少女が勝ち誇ったようにいう。
「彼は私が守ります!だから身を引いてください!」
「なにいってるんだバカ
お前は俺が守るんだから黙ってろ」
目の前でいきなり起こるイチャイチャに溜息を吐いて頭を押さえた。
「1つ、よろしいかしら?」
「なんだ、今更復縁を願うなら下女くらいにはしてやる」
「…はぁ?」
あらいやだ。思わず怒ってしまった。
私の怒りに反応して周囲の魔力が凍結してしまったわ。『この』学園の生徒は脆いから気をつけないと
「あら、ごめんなさい。でも1つだけ聞かせて頂戴。
貴方とは12歳から婚約しているわ。それの理由は知っていて?」
「当然だ!だが、なぜ王族たる俺が『化け物』の夫にならなくてはならない。貴様との契約も俺の代で終わりだ!」
「そう、わかったわ」
騒ぎを聞きつけた警備の騎士が見える。
あぁそんなに青ざめなくてもいいわ。
「ならここで貴方の国との契約は終わりね。
今この時をもって
クローディア王家に吸血鬼は一切の助力慈悲同情をかけないことを宣言します」
満足そうな元婚約者と女
それに対して周囲は悲鳴をあげながら元婚約者と私に駆け寄ろうとするけど、その前に私は影に身体を落とす。
「さようなら、愛しいアルベルトの末裔」
面影すらもなくなってしまった人の末裔だったけど、結構好きだったんだよ。
□□□
クローディア王国を300年に渡って守護していた『吸血鬼』が契約破棄されたという話は一夜にして人外達に広がった。
それと同時に市民にも話は広がっていくと、王国国民は激怒した。
吸血鬼の助力があったからこそ魔物の被害は少なかったのだ。同時に、吸血鬼の待遇が保障されていた故に他の人外もクローディア王国を信用し魔物討伐の協力から商人たちへの保証もしていたのだ。
そこから出た一方的とも言える契約破棄は全ての信頼を裏切ったに等しい。
「どうしてこうなった?」
「何故一方的なんだ」
「次の守護者はどうなる?」
「もし、吸血鬼様が居ない間に魔物が来たら?」
「王家は何故なにもいわない?」
国民が口々にそんな中で一人の人外がいう。
「他の国に行ったほうがいい。吸血鬼の信頼を裏切ったのだ。他の人外が王家に手を貸す事はない」
嫌なら穏便に言えばよかったのだ。
『好きな人が出来た』
その一言で済んだ事を契約破棄にまで持っていった王家の失態に国民の心は離れていった。
その数年後、魔物の群れに襲われたクローディア王国は多大なる被害と犠牲を出し、隣国に吸収された。
因みに人外には吸血鬼だけでなく人狼から鬼、狐など居ます。
彼らは基本的に傭兵として国を点々としつつ生計を立てています。そんな彼らは時に迫害を受けるので『人外』としての仲間意識が強く恩を返すためなら命をかけるほどです。
なので、この話の中でもあったように『穏便』に話を進めれば、吸血鬼さんが国を去る際に
「この国に最後の祝福を」
とか言いながら、他の人外さんたちに「今後よろしく」と頼めたのです。
まぁ結果は見ての通りです。もし、次があれば他の人外さんのお話を書きたいなぁと思いつう失礼します。