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獅子王と太陽の姫  作者: 咲良
第1章
7/18

守るべきもの1

残酷描写ありです。

苦手な方は、ご注意ください。

「これは・・・。」


 村まであと少しという森の中、変わり果てた村の姿に息をのみ、私を含む全員がその場に立ち尽くした。




 数時間前まで、エストリアの出兵に緊張感を漂わせつつも村はいつものように暖かな日の光に包まれ、にぎやかな活気が溢れていた。村の中央を走る家沿いに赤茶色の煉瓦と木材からできた家が立ち並び、少し離れた所にはもうすぐ収穫できるくらいにまで育った野菜畑があった。今年は穏やかな気候が続いたので、きっと豊作になるだろうと大人たちは笑みをかわし、その傍らで子ども達が走り回っていた、そんな穏やかな村だったのに・・・。




 目に映るのは、村を飲み込んでいく〈赤〉。


 西側にある家は炎に包まれ、森の近くにあった数軒は焼け焦げた側面をさらしている。田畑の作物は炎と熱によって枯れ果て、黒い炭がかつての姿を形作っているのみ。家の傍にあった馬小屋なども焼かれ、空に黒い煙が立ち上っていた。




 そして、耳が拾うのは・・・怒号と悲鳴。


 村人は集落の中央に集められ、ある者は肩を寄せ合ってこの村の有様を嘆き、ある者は村を蹂躙したエストリア兵に憤り、小さな子ども達はあまりの恐怖に声をあげて泣いていた。

皆、顔や身体に暴行された跡があり、何人かは気を失っている。きっと必死に抵抗したのだろう。けれど、男たちのほとんどは森へ向かい、残っていたのは女子どもと力なき老人。仲間を盾に取られれば、それ以上刃向うこともできなかったに違いない。武器はすでに取り上げられ、敵を警戒するように周囲の敵を睨んでいた。


 今またエストリア兵によって、村人が一人、彼らのもとへ連れて行かれている。


 ヨーランだ。まだ12歳の少年。「大人たちの代わりに村のみんなを守る」と、村を離れる私たちに真剣な目をして約束してくれた強くて優しい子。その彼は、今、気絶した状態で腕を引きずられ、女たちの中に倒れ伏した。約束の通り、みんなを守ろうと最後まで戦ってくれたのだろう。エストリア兵の手にある練習用の彼の剣には血が滲んでいた。




 視界が紅く染まる。全身の血が逆流しているかのように熱く、震えが止まらない。


 あまりの怒りに声を発することもできず、ただただ目の前の惨状を理解することに全力を注いだ。




 村を離れるべきではなかった・・・っ!!



 例え、私たちが村にいて、分裂していたエストリア兵が一度に押し寄せてきていたとしても、傍にいて守ることはできた。


 力の劣る彼女たちだけを恐怖にさらし、幼い者たちに戦闘を強いることもなかった!


 原因の分からない『シルイの戯れ』も、村にいれば薬で対処することができただろう。身動きが取れず苦しむ仲間を増やさずに済んだのだ。



 判断を間違えた自分が情けなく、後悔を禁じ得ない。


 けれど、それ以上に、このような暴虐を働いたエストリアを心底憎んだ。




 レリオも同じように目の前の状況に呆然としていたようだが、私より早く意識が覚醒し、村人を保護するよう兵に指示していた。


 今ここにいるシュトラール兵だけでは、エストリア兵を撤退させることは難しい。兵の数が少ないのだ。エストリアにいた者からの連絡を受けて軍を用意したようだが、正確な数までは把握していなかったのだろう。あるいは、その連絡以降にさらに徴兵されていたか。森の端に残した兵たちを入れれば、まだ何とかなったかもしれないが、この人数差では、村人を逃がすのが精々と判断したのだった。


 グイドの指揮のもと、シュトラール兵が馬に乗って駆けていく。突如現れた隣国の兵にエストリアは混乱し、動きが鈍った。その隙をぬって、彼らは村人たちのもとに行き、背にかばうようにしてエストリアに剣を向ける。

 闖入者に驚いたエストリア兵も、すぐに体勢を立て直し、彼らを包囲する。片方は馬に乗り上から見下ろす形であるが、もう一方は数が多く、容易に突破できる状況ではない。

 じりじりと互いを牽制し、突破口を見つけようとする両者のにらみ合いが繰り広げられる。





「・・・リア!・・・・・セシーリアッ!!」


 レリオの声が耳に届いた。

振り向くと、馬に乗った彼が上から私を見据えている。


「お前は村から離れていろ。村人たちを北に逃がすから、お前もそっちへ向かえ。間違っても後を追って村に来る・・・。」



彼がそう言い終わろうとしたとき、村の沈黙を破る大きな声がした。



「まだいたぞ!」


 道の東寄りにある家から、エストリア兵が一人の女を抱えて出てきた。


 彼女は気を失い、力ない腕が兵の歩みとともに揺れている。

 彼女の左頬は腫れていた。



 その瞬間、レリオは「ハッ」と声をかけ、エストリア兵に突撃していった。


 この奇襲に不意をつかれ、エストリアに隙が生まれた。それを見逃さず、村人を守ってたシュトラール兵が動いた。囲いの一点を目指して進み、退路をつくる。何人かは動けない者に手を貸し、脱出を促す。突然のことに村人は動けないようだったが、徐々に意味を理解し、森に向かって走った。

 けれど、エストリアも黙っていない。シュトラール兵と剣を交わらせる者と、イル族を逃がすまいと先を塞ぐ者に分わかれる。敵味方が入り乱れ、村の中は騒然となった。





 あまりの怒りに、神経が冴えていく。


 私は握りしめた右手を開き、腰から剣を抜き取って、暗い森から歩み出た。


もうしばらくシリアスが続きます。


最後にエストリア兵によって連れてこられた女性。

セシーリアにとってとても大切な存在です。

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