表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獅子王と太陽の姫  作者: 咲良
第1章
4/18

急襲3

少々、残酷描写ありです。

 エストリア兵の一人の刃が、左腕を掠めた。


 本来ならば避けきれるはずの攻撃にも対応することができず、私は焦りを感じていた。

 このまま戦闘が長引けば、こちらが負けるだろう。今はまだ、動けなくなった者はおらず、相手を牽制することができているが、それも時間の問題。身体は重く、息は上がり、徐々に痺れが増している。動けなくなったとき、私たちが強いられるのは拘束か、死か。


 いずれにしろ、私たちに『退く』という選択肢はない。


 先に剣を抜いたのは彼らだ。つまり明確な意図をもって私たちに向かってきている。

 タイミングから考えても、原因不明の痺れは、彼らの仕業だろう。騎兵隊を囮にし、何らかの方法で私たちに『毒』を盛った。そして、身体の自由が利かなくなってきた段階で仕掛けてきたのだ。例え逃げたとしても、村が狙われるだけである。


 それが分かっているので、私たちは必死に反撃した。


 剣を受け流しつつ、相手の腕の筋を切る。仲間を狙う者には背後から迫り、振り向く前に刃を振り下ろした。卑怯かどうかなど問題ではない。そうしなければ、こちらが負ける。


 そもそも、理由を明らかにせず、仕掛けてきたのはエストリアだ。

 礼儀を尽くしてやる必要など無いだろう。


 それにしても・・・。



 なんだろう、この奇妙な出兵は。

 囮を用意し、背後から襲ってきたにしては規模が小さい。

 もちろん、私たちの倍以上の数の兵はいるが・・・。



 エストリアは大国なのだ。

 兵の数も桁外れのはず。

 本気なら、もっと規模の大きなものにして決着を早めることができる。


 それにもかかわらず、何とか優勢を保てるという人数しか送ってきていない。

 この意味は一体・・・。




 そこまで考えて、ふと恐ろしい予感がした。




 ここにいる兵が全てでないとしたら・・・。


 この戦闘すら囮なのだとしたら・・・。



 

 すっと頭が冷えた。


 向き合っていた相手の呼吸を読み、左へ一閃。相手が一歩下がるのを見越して踏み込み、防具の繋ぎ目がある肩を貫く。

 剣を抜く際、悲鳴と血しぶきが上がったが、それを無視して敵の囲みを抜けた。


「ラーシュ!! 私は村へ行く!」


 後ろを振り返りながら叫ぶと、「はい!」という返事が聞こえた。それと同時に、何人かのエストリア兵が追いかけてきた。

 木々の死角を利用しながら、1人、また1人と切り捨てる。


 痺れは、どんどんひどくなる。


 けれど、それを上回る怒りと恐れが私の体を突き動かした。


 切られた上腕部をきつく縛って止血し、村を目指して私は全力で森を駆けた。

回想はここで終了。


そして、〈急襲1〉につながります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ