異世界=魔法とも限らないと思うんだ。
「近衛騎士に?」
「あぁ、王の命でな。是非にとのお達しだ」
再びの団長室。目に隈を浮かべた団長、ニコラスはそう言った。
「異例の人事だが王の命ならしかたあるまい。王に身を捧ぐためにここに来たのだから問題ないだろう?」
「……なんか私が言うとちょっとアレでしたね。決まり文句とは言え……」
「……多分ないとは思うが、万が一くらいにありうるかもな」
「う……それは何とも……」
シェイはゴニョゴニョと口を濁す。王は御歳50。国民として国の長に嫌と言い辛いが、話が話である。
「ま、冗談だ。ほぼ確実にお前の担当は王女様の護衛になる。
試験の事といい黒髪といい、お前に興味があるらしい」
「王女様と。どっちですかね」
今現在、二人の王女と一人の王子がこの国にはいた。ちなみに滅多に外に出ないため、その人となりは「大変麗しくお優しい(以下略)」の定型文でしか伝わってない。
「そこは分からん。話によれば第一王女、第二王女ともお前を御所望だと。モテモテだな。羨ましい限りだ」
「その美男子顔でよく言いますよ……。最近はそれも半減って感じですが。
最近随分お疲れの様子ですね?女ですか?」
「とある跳ねっ返り娘に引っ掻き回された件を指すなら否定は出来んな。
……最近、脱走兵が多いんだ」
「脱走兵?この平和なヴァレンティアでですか?」
「あぁ。理由を考えるなら訓練が増えたから、くらいしか思いつかんが、いささか弱いし、妙な点も多い。フンディスの陰謀か何かか……」
「……それを疑うってことは、ただの脱走ではないってことですかね」
「憶測甚だしいがな。
馬も一緒に消えているのに、逃げ出した者の姿を誰も見ていない。騎馬で逃げるのは利に叶うが、街道で蹄鉄の音が響かないハズがない。
馬と人が消えているから脱走とするには足る。だがその中には家族や恋人がいる者もいてな……。放置すると我等の沽券に関わるってことだ」
「成る程~、大変ですね~」
「……あっちではあまり暴れてくれるなよ?女性がデカい顔して角がたつと面倒だからな」
「了解しました~。ではでは失礼しますっ」
「……その口のききかたがマズいんだがな……」
辞去した後の呟きは、当然だれにも届かなかった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」
「息荒げられても……俺にそっちのケはねぇよ?」
「だ、黙れ……一体何をした……!」
「足潰しただけだよ。見てワカンネ?」
「ふざけるな……!こんなことありえん……!」
「んー、アタリを引かねーなぁ。
俺に気付いた様子もねぇし……やっぱ王女か王子かね」
「貴様……!何を言っている……!」
「ま、いいか。すぐに分かるだろーし。
そろそろダレてきたしねぇ。ひと月とか飽きたわ」
「ま、待て……家族がいるんだ……後生だ、命だけは……!」
「そーかそーか。じゃ、死んだこと分かるように殺してやんよ。
ま、生きてるか死んでるか分からんのよりマシだろ?」
「ま……やめ……」
「名前なぁ……シェイがリアリムだろ?
テキトーに持ってきてキリサキ・ジャックとかにしてみるかね~。
……仕事しろ。『ムソウギリ』」
「ヒッ…………ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「Jack the ……あれ?リパーの綴りなんだっけ?」
ようやく軌道修正。
地味に騎士の話書くの楽しくて長引いてしもた(
行き当たりばったり系ファンタジーですから。グダグダ行きますよ~。