何事も適度じゃないといけないと思う。
目を開けるとそこは、異世界でした。
そんなセリフとともに、俺は溜め息をこぼした。
見渡すばかりの草原地帯。風がサワサワと雑草と僅かな樹の葉っぱを揺らす。
広大な大地は地平線が見える程で、土の露出した道がなければ迷うこと請け合いだ。なんの頼りもなくここを進むのは強くお断りしたい。
微かにも人工物がないことを確認して、おもむろに、振り返る。どうやら俺は、少し小高い丘に立っていたらしい。風が強く肌を擦るのを感じる。
「---シェイ」
「ハイハイどもどもカミサマ!」
「今回の主人公はここにいんの?」
「どうもそうみたいですね~」
俺達の視線の先。そこにあったのは、白壁眩しい石造りの華美な建造物。槍の如く尖った塔がシンメトリーに連なり、青い屋根が白に良く映えている。
そしてそれをぐるりと囲む、高い城壁。
「……ディ○ニーかな?」
「どっちかというならランドですね」
白馬の王子様が本気で住んでそうな、というか某夢の国のアレの倍スケールじゃね?という体の城。城壁も異世界情緒溢れる凝った外装がなされているのが遠目からも見て取れる。
「これはまた随分と……」
「案外女の子かもですね~。だとすると逆ハープリンセスパターンかもです」
「だとしたら頼むぞー、シェイ。
……いや、やっばいいや。イケメン惨殺するわ」
「一瞬でホラーにwww流石カミサマwww」
「お前俺をなんだと思ってんだよ……」
「リア充撲滅委員会異世界支部委員長様」
「じゃ、お前は準職員な」
「なんですかその微妙過ぎる肩書き」
馬鹿話を重ねながら、俺達は城門に向かって歩き始める。
何故かシェイが片手剣を二本装備し直したのは余談である。
門番はいなかった。入口も開け放たれ、すぐに貧民街が広がっている。
「無防備だな」
「モンスターいないってことですかね~」
「ん。てか、そこまで実装されてないってことかもな」
「バトル主体じゃない異世界モノって……」
「深窓の姫君かもなー、今回。
あ、ちっといい?」
「はい?」
町人らしき人を呼び止める。黒髪に彫りの深い顔、やけに尖った鼻先に長い睫毛。
簡単に言うと出来の悪い少女漫画の類による二次元のイケメンでした。目がデカすぎて怖いです。
「(これは女性から見てどうなんだ?)」
「(流石にダメなやつかと)」
「……どうなさいました?」
「あぁ、いや」
きょとんとする二次元限定イケメンをあしらい、作り笑顔で向き直り、
「……ここら辺に、いい宿屋ありません?」
至極普通の質問をした。