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草風~クサカゼ~  作者: 祥雲
プロローグ。
3/11

とある冒険者の悲劇と後悔と。

「コイツ等は勇者っていうより冒険者だよな」




「だね~。クエストとかやってそう。てか実際にやってる」





「あくまで生活の為だもんなぁ。いや、旅のためか」





「んでその途中、謎の人型モンスターが登場、街が危機に!」



「知能や感情を持つ敵に戸惑いを隠せない主人公」



「その悲しみを乗り越え主人公は人として大きく成長するのだった……」




「……あれ?これ俺達やられるフラグじゃね?」




「えっ」




「えっ」







「……なんだアイツ等」





 険しい禿げ山の奥、開けた平地の中。俺達とその冒険者は対面した。




 先程の馬鹿がハデハデしい金色だったのに対し、目の前の男は黒ずんだ光沢の鎧を装備していた。




 後ろには武装した修道女、下駄に着崩した和装のいかにもなサムライ、本を小脇に抱えたメガネの男、背の丈ほどの長さの狙撃用銃を背負った軽装の少女。




「ライトボウガンか……あとはグラビ?」




「それ以上のメタは止めろよ?」









「……ハヤト殿?」




「……どうやら敵らしい」




「例の“天啓”ですか……」




「今までは確かだったけど、アレも魔物なの?」




「……女性の方。彼女は魔力を有してないようです」




「そんな生き物いるっけ?ゆーれーとか?」








「だってよシェイ」




「失礼な!幽霊なんてとんでもない!しっかりこっきり死んでるよ!」




「なにが失礼なのか分かんねーよ。半分合ってるじゃねーか」








「しかし、近付いておるぞ。先に切り込むか?」




「……アイツ等の鑑定ができないんだ。止めたほうがいい」



「……もし仮に彼等がハヤト君のレベル以上なら、今勝てる道理はないですわね」



「でもまだあの人達なんもしてないよ?ただ話をしにきただけかも?」



「死竜山までわざわざ来てか?街から早馬で10日はかかるんだぞ?考えにくいな」








「……ここ死竜山って言うんだ……」




「徒歩10分だった件についてwwww」




「割とあいつ慎重だな……」







「何もしていない相手から逃げるわけにもいくまい。そもそも本当に敵かすらわからぬなら尚更だ」



「じゃあどうするの?近付かれてなんかされたら危ないよ?」



「まずは拙者がいこう。皆は備えておいてくれ」




「まって、なら俺も……」



「拙者達の中で狙われることがあるとしたら、真っ先に上がるのはそなただハヤト殿。心配ない、仮に敵でもかつてのように無理はせぬよ」



「………………分かった。死ぬなよ?」



「ははは、大袈裟でござるよ」









「……やっぱりゴザルか……」




「てか死亡フラグwwwwwベタ過ぎるほど死亡フラグwwww」




「ま、ちゃっちゃっとやりますか」









「拙者三郎と申す。このような地に何用か?



そもそもその様な装備でどうやってここに」





 侍は、壮健な中年の男だった。俺達の目の前で立ち止まり横柄に尋ねかける様を華麗にスルーして、一路冒険者達へ。





「……無視とは。それは拙者への侮蔑と捉えてよいのか?」




「あ~もう、すぐに刀抜くなって!ゴメンね~こんな馬鹿で。でも無視はだめだと思うよ?」






 怒りの形相で鯉口を切る侍を、ガンナーの少女が止める。にこやかだが、さり気なく拳銃に手をかけて牽制しながら。







 そして俺は、背中のライフルごと一閃した。






「……なっ……?」





 ビチャリ、ガチャガチャと崩れ落ちる。咄嗟に抜いたらしい拳銃は、分断された両の腕では構えることも叶わない。



 間抜け面の侍は、我に返らない。目の前の事態を理解出来ないのかしたくないのか。恐らくは後者だろう。




 血塗れ貧弱装備の俺は、ゆっくり破顔一笑した。









「き、キサマァァァァァ!」





「『茨の拘束バインド・レストリクト』!」



「『ライフリペア』!」



「『ドラゴニックスピリット』ぉぉぉぉぉお!」




「『竜斬波(リュウザンハ)』ァァァァァァァァァァァァァァァ!!」







「はいはいマジキャンマジキャン」




「シェイ、流石にそれはアイツ等可哀想」






 一斉に放たれた魔法を、蚊でも追い払うようにヒラヒラ手を振って一蹴した軽く浮遊している黒髪少女と、足元で新しい血溜まりを作るサムライを蹴り飛ばして、ガンナー少女の頭蓋を突き刺してトドメを刺す俺。




 さてコイツは、どんな反応かな?






「逃げましょう!どういうことか分かりませんが魔法が効きません!このままじゃ絶対に勝てない!」




「……マリア、時間があれば二人を蘇生出来るか?」




「…………ゴメン…………あれは無理だわ………」




「……そうか」




 ハヤトと言った対象は、腰に下げた片手剣を抜いた。






「俺は、アイツを殺す」





「「ハヤトッ!」」






 兜を付けないため素顔を晒したハヤトは、仲間の悲痛な悲鳴を無視した。重そうなその装備に対して素早い足捌きで俺に接近し、





「死ねぇぇぇぇぇぇぇえ!」





















「こういう『主人公が我を忘れて突っ込む』時って大概ギリギリで死なないよね」




「現実は甘くない。簡単に死ぬ殺す言っちゃあだめだよ♪」






 周りには誰もいない。死体が無いのは仕様です。






「お、やっとお迎えか」




「おじいちゃん……!……死んじゃ……ヤダよ……!!」




「いや確かにそれもお迎えだけれども」




「ま、いいか!じゃあねおじいちゃん!年金ありがとうね!」




「ただのタカリじゃねえか」




「遺産楽しみにしてるよ!」




「誰か~このクズ離縁しろ~」






 そんな事を言い合いながら、草原で手を振るシェイを残して、





俺は雷で身を焼かれた。


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