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草風~クサカゼ~  作者: 祥雲
プロローグ。
1/11

拝啓、勇者御一行様。

試し投稿。この先投稿するか未定なのでご了承下さい<(_ _)>

「人類の敵め!覚悟しろ!」





 黄金色の鎧を纏った青年は宣言した。後ろに控える若草色のローブの女性と黒くて大きな帽子が特徴的な女性も、各々が臨戦態勢に。





 弓矢一閃、首を捻って避ける。後ろに生えたであろうアンテナを見もせず。





 俺は、目の前の男を睥睨した。








「勇者様、ここは私が!



切り裂け!『ウインドカッター』!」





 所謂魔女帽子の少女が杖を横薙に振るう。ブオン、と不自然に響いた風鳴りとともに、淡い緑のナニカが俺に向かって飛来する。





「シェイ」




「は~い!『マジックキャンセル』!」





「……え?」





 ナニカは俺に届かない。代わりに表れたのは、黒髪の少女。




 レザーメイルにレザーブーツ、レザーグローブ等、初心者装備の彼女は、耳の炎のイヤリングを煌めかせ、俺にニコリと笑みを向ける。






「カミサマ、久々だねぇ!元気だった~?」




「ぶっちゃけ来たくない。むしろ帰宅したい」




「ちょ~暗い、暗いよ!気合い入れていこ~!」






「くっ……マリッサ!」




「承知!」




 不意に飛び出した黒服のアサシン。小太刀とクナイを携え、一直線に俺達に向かって特攻する。





「『ファイヤエンチャント』!」





「『ブラッディスラッシュ』!」





 クナイが燃え上がり、赤黒い軌跡を残して黒髪の少女――シェイに向かっていく。勢いをそのままに、アサシンは俺に肉迫し、






「なぁ、バイト代とかねぇの?」




「う~ん……私の身体?」




「要らない。切実に」




「ちょ、それは言い過ぎ!謝罪を要求する!」









「ま、マリッサぁぁぁぁぁぁぁあ!」





 ローブの女性が叫ぶ。アサシンはピクリとも動かない。シェイはクナイを手の中で弄びながら、きゃいきゃいと華やかに笑う。






「メリア、落ち着いて!早く治療を!」




「で、でも」



「早く!まだ間に合うわ!」



「っ!……『ヒール』!」




「『マジックキャンセル』」




「ま、また!」



「神聖魔法すら消すの!?」



「勇者様!早くしなければマリッサが!」








「も~カミサマのいけず~ホントは欲しいクセに~」




「出来れば現金欲しい。十万くらい」




「ツッコミ放棄しないで頼むから!ねぇ!」








「よし、任せろ!ユリ、メリア!支援頼む!」




「どうか……間に合って!」







 金色の男はこれまた金色の剣を抜刀する。目一杯の自信と誇りをもって勇ましく、仲間を救うために。正義の為に。






「――顔がニヤけちゃってるのが残念だな」




「どっからどうみてもゲス男ですねありがとうございます」






「くらえ!『スラッシュライトニ「『マジックキャンセル』」





「うわ、ゲス。お前の方がゲス」




「だって面倒くさいんだモン!」




「可愛いこぶるな、なんかコワい。何かがコワい」



「どういう意味ですか!」








「くっ!『グラビディク「『マジックキャンセル』」



「『ナイツト「『マジックキャンセル』!」



「『タイガーフィ「『マジックキャンセル』!」



「……『メラゾー「『マジックキャンセル』ぅぅぅぅぅぅう!」





「うん、最後のは妨害して正解」




「てへ?」








「くっそチートかよ!じゃあ女から!」







「きゃーこわーい」




「おんなのこをおそうなんて、なんてくずなんだ!」



「こわいわこわいわかみさま、どうかおたすけくださいまし!」




「十万ください」




「ちょwwwww」








「マリッサから離れろぉぉぉぉ!」





「「だが断る」」




「ハモってんじゃねぇぇぇぇえ!」






 叫ぶ“勇者”は、シェイを切り刻まんと目に痛い金色の大剣を振るう。しかしシェイは武器も抜かず、踊るようにしながら笑う。






「うっわイケメン!でもチャラチャラしてる!」




「お手本みたい過ぎてなんかあれだな、キメェ」



「でもちょっとあれだわ、うん、なんだっけ」



「リア充?」



「「爆発せよ」」





「お前ら何だ!?日本人か!?いや日本人だろ絶対!?」




「「ナ、ナンダッテー!」」




「だからハモってんじゃねぇぇぇぇえ!」







「てか実際どうなの?素手の女の子に剣振るう気分って。興奮する?」




「うるせぇ!」





「成る程、こんな絶壁は女の子じゃないと……」




「生爪剥がすぞ」




「ゴメンナサイ」










「……なんなんだよ……なんなんだよ!真面目にやれよお前ら!敵だろ!」







 勇者は怒鳴った。後衛の二人は最早見守ることしか出来ず、なんとなく弛緩した空気が漂っていた。が、






「……え?いいの?」






 急激に緊張感が場を満たす。相変わらず俺とシェイは抜刀しない。しかし、シェイの無邪気な問い返しに含まれるのはただ、威圧。




「カミサマ、どうします?先方はそう言ってますよ?」




「ん。じゃ、やりますかね」





 抜刀。西洋剣でなく日本刀。青黒く波打つ刃紋、刃先に沿って走る赤い(キザミ)





 友人に向かっていく際のように、無造作に歩みよる。勇者は金色の剣を構えるが、動かない。




 いや、否。



「あ、あ……」




 動けない。足は小鹿のようだ。顎はせわしなくカチカチ鳴る。しかし視線は俺の刀から離れない。








「ぶ、『ブレイブハー「『マジックキャンセル』」




 魔術師の魔法は無効。




「『聖なる障「『マジックキャンセル』」




 神官の保護も無効。




「ほ、ほほほ『ホーリースラ「『マジックキャンセル』」




 自身の特技も無効。




「くそ、なんなんだよ!ズルだろそんなの!」




 物理攻撃。




「じゃあ普通に攻撃したらいいじゃねぇか」




「言われなくてもっ……!」




 オリハルコンの剣破壊。




「へ?」




 オリハルコンの鎧破壊。





「ちょっ、まっ……」




 ドラゴンスレイヤー破壊。

 オリハルコンのレギンス破壊。

 知恵の加護破壊。

 右目破壊。

 勇者の証破壊。

 インベントリ破壊。

 神の加護破壊。

 左手破壊。

 メニュー破壊。

 魔術師『ユリ』破壊。

 神官『メリア』破壊。

 アサシン『アリッサ』破壊。

 ゴールド破壊。

 右腕破壊。

 臀部破壊。

 肋骨破壊。

 左足破壊。

 右肺破壊。

 背骨破壊。

 肝臓破壊。

 右脳破壊。

 左足親指破壊。

 頭蓋骨破壊。

 

 



 勇者『伊藤斗真』――――破壊。

勢いでやった、後悔はちょっとある。

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