9.にゃん国同好会
いつも読んでくださりありがとうございます!
新キャラが続々登場。
園芸部の活動もそこそこに、残りは七瀬に指示を与えて俺はにゃん国同好会の方へと向かった。
でも・・・さっきの御門先生、気になるなぁ・・・ものすごーく何か言いたそうな顔してたんだよなぁ・・・。
は、話しかけてみるとか・・・う、ダメだ・・・とてもじゃないけど、面と向かって普通に話せる自信がない・・・。
うう、俺ってこんなにヘタレだったっけ・・・?
がっくりと肩を落としつつ、にゃん国同好会の活動場所であるクラブハウスの一画に着くと、珍しく家庭部のある日に紫条が来ていた。
「・・・あれ、紫条・・・家庭部は?」
「えっとー・・・井橋先生を見に来ました」
にっこり。
ああ。さようで・・・。
どうやら俺に存在感がある、という話を聞きつけてやって来たらしい。
「家庭部より優先することか?」
「だって、おれ1年生だから授業じゃ井橋先生と絡みないしー・・・今日一日だけかもしれないって思ったら、いてもたってもいられなくて!!」
えっと・・・これってどう反応するべきだ?
「紫条、たとえ本音でもそういうのは伏せとけ・・・」
呆れたように言ったのは品川先生。
うん、興味津々なのはわかったんだけど、なんだかUMAでも発見されたような感覚で会いに来られても・・・。
「すいませーん」
ぺろりと舌を出して・・・うん、さすが乙メン、違和感ないなぁ・・・。
「じゃあ、そういうことなんで・・・家庭部行ってきまぁす!!」
「あ、最首先生によろしくね・・・」
「はぁい!」
本気で俺を見に来ただけらしい。それに俺を待つ間にひとしきり学院猫達を愛でたようで、何匹か恍惚とした表情をうかべている・・・。
さすが紫条・・・猫もメロメロだ・・・。
今日はカロリー学院中等部メンバーの正神弟も結城も、ヘルシー女学園中等部の千葉さんも来てる。
もしかして・・・猫で癒されるついでに俺を見学?
「あのぉ~ホントに井橋先生?」
「うん?・・・あぁ、うん。そうだけど・・・」
「“かぼたん”がビックリしていつも以上に警戒してるよ?」
あ、本当だ。しっぽがくるんとお腹の方に回ってる。
手足としっぽの先が白い、いわゆる“くつしたにゃんこ”の“かぼたん”こと“かぼす”は正神弟――正神柚人にしか気を許していない猫で、結構ビビりなのか、正神弟以外が近づこうものなら、ものすごい唸り声をあげる。
今日はその唸り声がないから大丈夫なのかと思えば、全然違った。警戒しまくってて固まっているらしい。
耳が後ろに倒されてるところを見ると、相当だよね・・・。ええー・・・ここまで警戒されるなんて、ショック・・・。
「ところでー・・・存在感が出た井橋先生は、しーちゃんと接触できたの?」
ぎくり。
なんでイメチェンしようとしたのかを知っている久馬だからこその質問だよね。
っていうか、今ここではやめて欲しかった・・・だって、ヘルシー女学園中等部所属とはいえ、千葉さんは立派な暗黒同好会なんだよ・・・?
愉快なことには絶対に首を突っ込む暗黒同好会が、この件に口だか手だかを出してこないとも限らないのに・・・。
「え・・・えと・・・」
「まぁ、その様子じゃ、認識されてるけど話はできてないって感じ?」
「う・・・」
図星です・・・。
だって、しょうがないんだってば!!俺だって話してみたいけど・・・口下手っていうわけじゃないけど、こう、好きな人の前じゃ、無口になり過ぎちゃうっていうか・・・。
「もー・・・せっかく見た目はOKになったんだから、あとは中身を変えないとね!!今日もおねにーさんトコ行って、特訓に付き合ってもらえば?」
「ええ?!・・・と、特訓って言われても・・・」
「大丈夫、おねにーさん、恋愛伝道師の免許持ってるから」
なに、その免許!!っていうか、どこで取得するの!?
「あー・・・そのおねにーさんって何者?」
品川先生がわけがわからんと言わんばかりに訊けば、久馬は苦笑いをうかべて答えた。
「俺の父さんの服とかをトータルコーディネートしてくれてる人。ブティックとヘアサロンを経営しててさ・・・そうだ!今日は品川先生を連れて行けば?」
「うぇええ!?」
品川先生は十分すぎるくらいおしゃれだと思うんだけど・・・!
「ついでに、普段着も見繕ってもらうと良いよ。どうせ、寮暮らしの教職員ってお金有り余ってんでしょ?」
「うっ・・・」
・・・ごもっとも・・・。
俺の場合旅費も研究費用から出るから、お金を使う場面がなかなかない。クレジットカード用の口座とお給料振込口座と分けてあるけど、どっちも結構な額が入ってる。
職員の福利厚生の一環でネット銀行みたいな感じで取りまとめてくれてるからとても便利だ。しかも通帳自体が無くて、記帳もネット上で確認ができるっていう優れもの。
うん・・・まぁ、コンピューターウイルスの心配もあるけど、そこは理事長も卒業生を使って完璧なファイヤーウォールを作ったから、絶対大丈夫と豪語している。
というわけで、話が逸れたけど・・・服を総入れ替えしても大丈夫なくらいの蓄えは一応、あるってことだ。たぶん、品川先生も似たようなものだろう。
「まぁ、がんばって~」
ってブイサインされても困る!!
ああ、愛しのにゃんこ達にしばらく癒してもらおう・・・じゃないと、あの店でまた疲弊しそうだ・・・。