8.わからない自分の気持ち
いつもありがとうございます^^
少し、進展したと思ったのに後退です(笑)
しーちゃんは無意識に振り回されっぱなし!!
――side 詩織
なんか今日の私、変だ。
たぶん、いつもは視界にすら入らない井橋先生がチラチラと見えてしまうから。
本人はイメチェン前と同じ行動をしてるんだと思う。だって本来ならこの学院内で同じ学年担当だったら、これくらい行き会ってもおかしくないんだもの。
今まで見えなかった分、どれだけ私は井橋先生を無視してきたんだろうって思ったら・・・なんだかものすごく申し訳ない気持ちになった。
影が薄いっていっても限度はある。意識さえすればちゃんとそこにいるってわかるんだから。
今までの私達は井橋先生が影が薄いというのを言い訳にして、彼が見当たらないことを“当たり前”のこととしてとらえていたのよね。それって、ものすごく失礼なことなんじゃないかって思うの。
でも、イメチェンしてこうして存在感が出たからって、今までごめんなさいって言うのもなんだか失礼じゃない?
ああ!もう!頭の中ごちゃごちゃ!
こうなったら、また美都先生に聞いてもらおう・・・!
***
「ねぇ、どう思う?」
「うーん・・・まぁ、詩織先生の考えもわからないわけじゃないけど・・・」
やっぱり何か違う?私が変???
「えっと・・・どうすればいいのか、わからなくて・・・」
「普通どおりにすればいいんじゃないのかしら?・・・何より、謝るのはおかしいわ、余計に失礼になると思うのだけど」
「普通どおりって・・・」
「そうねぇ・・・挨拶したりとか?」
ああ、そういう普通どおりか・・・気にしないとかそういうんじゃなくて、ちゃんと他の先生と同じようにコミュニケーションをとるってことね。
なるほど。
「ありがと!美都先生・・・私が気にし過ぎだったのよね!・・・あー、さっきなんて見つめ合っちゃって、井橋先生、怒ってるのかなって思ったら不安になっちゃって!」
「・・・・・・えっと、それは違うと・・・」
「うん、すっきりした!!・・・よし!じゃあ、家庭部にでも行ってこようかな!」
やっぱり美都先生に相談してみて良かった!・・・普通に普通に、他の先生と同じように井橋先生とお話しする、で良いのよね!
「あ~・・・すっきりしたなら、良かったわ・・・」
「?・・・美都先生?」
なんだか複雑そうな美都先生に、私は首を傾げる。
「なんでもないわ(ここはもう井橋先生が頑張るしかないものねぇ・・・)」
「そう?」
なんだか、美都先生ってば思いっきり作り笑顔なんだけど・・・まぁ、相談が相談だものね~。迷惑かけっぱなしだし、今度、美都先生にケーキでも買ってこよう・・・。
というわけで、うだうだとため込んでいたものを全部吐き出した私は、すっきりとした表情で家庭部に向かったのだった。
***
「しーちゃん、今日は調子いいね」
ニコニコと羽部が訊ねてくるので、私は機嫌良く答える。
「わかるー?・・・なんかさぁ、今日ならプロ級の料理が作れそう!」
「・・・それは無理じゃないの?」
ううっ・・・冷静なツッコミはいらないのよ!!
「・・・・・・わかってるわよ、うっさいわね」
「とりあえず、御門先生がご機嫌なのはわかりましたが・・・その理由は聞いた方が良いんですか?」
その笑顔が胡散臭いのよ!!五色!!
「・・・・・・暗黒にネタ提供するわけないでしょ」
「言っておきますが、暗黒同好会はほぼ個人の活動ですからね?・・・まぁ、時折情報交換などがありますから、部室で集まることもありますが」
ええ!!部室あるの?!初めて知った!!
「あぁ、御門先生もご存じなかった?」
最首先生が苦笑いをうかべている。ってことは最首先生もつい最近知ったってことよね?
「もしかして、部室の存在すら知らない人が多いとか?」
「まぁ、そういうとこですね」
五色が頷く。良いのかそんな部活動・・・。
「っていうか、紫条くんは?今日はいないのね」
家庭部の癒し・・・いや、エアークラッシャーともいう、乙メンの紫条創治くんが今日はいない。休みだったかしら?
「いえ、創治はたぶん・・・にゃん国の方ですね」
「にゃん国?・・・ああ!あれね!暗黒同好会をもじったような名前の、にゃん国(猫好きの猫好きによる猫好きのための)同好会ね。へぇ、紫条くんも入ってるんだ」
「ええ、創治は無類の猫好きなんですよ。・・・可愛いもの好きなのは乙メンだってことで良く知られていますが、猫好きはあまり知られていないようですね」
「紫条くんと猫って・・・絵になりそうな構図よね」
あの乙メンが猫をだっこする姿を思いうかべたら、ものすっごく似合っていて、癒しも倍増な気がしたんだけど・・・!!
今度、のぞきに行ってみようかな?