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3.ダメだし

いつもありがとうございます^^


今日も井橋先生はネガティブに影薄いです!

淋代園(りんだいえん)先生・・・」


「まー、随分(ずいぶん)生気(せいき)のない顔して・・・っていうか、もうちょっと前髪切りなさい。表情が見えにくいから余計に影薄いのよ」


「・・・え、ええ?」


 しょっぱなからダメだし!?


「もうちょっとしゃっきりなさい!まったく、情けないわね」


「・・・す、すみません・・・」


「―――で、なにをそんなに落ち込んでるの?」


「それが・・・」


 俺は自慢じゃないが、いろいろとため込んでしまうタイプだ。人に相談とかもなかなかできない。特に日本人には・・・。


 諸外国にはバックパッカーをやっていた頃の友人がたくさんいて、今でも手紙のやり取りをしていたりする。


 この間は、サッカーの試合中継を見ていたら、友人のいる国同士が戦っていて・・・どっちを応援すべきか思わず迷い、結局両方応援したという、わけのわからない行動をとってしまった・・・。


 とまあそれは()いて、淋代園先生はとにかく正論でフルボッコにしてくるから、ごまかしたり逃げたりできないんだ。だから、全部話してしまった。もちろん、俺の想いも・・・。


「ふぅん・・・まずはその影の薄さを何とかしなさいよ」


「やれるものなら、とっくにやってますってば・・・」


 一応、努力をしてはみたんだ。でも、やっぱり気付いてもらえなくて・・・。


「そこはやります!でしょうが・・・まったくもう・・・とりあえずは常に認識してもらえるにならないとお話にならないわ。イメチェンよイメチェン!・・・あー・・・ホラ、アンタと仲のいい生徒いたでしょ?」


「あぁ、久馬(きゅうま)?」


「そう!あの子連れてって、デパートめぐりしてきなさい」


「えええ?!・・・でも、久馬だって都合が」


「猫構ってる時間があるんだから(ひま)でしょうよ、いい?まずは行動しなさい」


 猫構ってる時間・・・うう、それが(いや)しの時間なのに・・・。


 そう、この学院には学院猫なるものがいる。その猫の世話をする同好会を俺と猫友の品川先生とで作った。


 その名も、にゃん(こく)同好会・・・どこぞの暗黒な生徒達にもじったわけ・・・でもなくもない。(いやどっち?)



***



「―――というわけで、久馬、一緒に服選んで?」


「良いけどさぁ・・・しーちゃんの好みに合わせるの?」


「う゛っ」


 そうだった、久馬は一番最初に俺の気持ちに気付いたヤツだった・・・しかもドS・・・。


「いや、今は先生を(いじ)めるつもりで言ったわけじゃないんだけど・・・イメチェンするんなら、せっかくだし、しーちゃんの好みに合わせようよ」


「・・・う、でも・・・どうやって、御門(みかど)先生の好みを・・・」


「この学院の恋愛話を網羅(もうら)してるうってつけの先生がいるじゃん」


 にへらっと久馬が笑う。


 ん?そんな人いただろうか?・・・いや、聞いたことないんだけど。


「えー・・・誰だろう?」


「俺、いつっつも聞かれるもん。なんか面白いネタ持ってないかしらって。・・・うちの妹もネタネタって言ってるけど、藤吾(とうご)先生も大概(たいがい)だよね」


「ああ!藤吾先生・・・なるほど、情報ツウの藤吾先生なら、知ってるかな」


「絶対知ってるし、応援してくれると思うよ。良いネタ元にされてるから」


 ぐっ・・・久馬、もう少しオブラートに包んでくれないかな・・・ネタ元とか言われると、なんか傷つくんだけど・・・。


「そ、そう・・・はは、そうなんだ・・・」


 ああ、情けない俺の姿が、小説のネタにされる・・・っ!!


「そうなんだよ!だから、今すぐ行こう!レッツゴー、図書室ぅ~!」


「うわぁっ!?・・・ちょ、待って・・・」


 久馬は有無を言わさず俺を引っ張って連れ回し、珍しくも授業以外で俺のことを目撃した生徒達は目を丸くして指をさしてきた。


 人を指さしちゃいけませんって教わらなかったのかな?―――いや、うん、普段はすれ違っても気付けないから、珍しいんだよねー・・・。


「先生、なにネガティブな空気(かも)し出してんの?ダメだよ、そんなんじゃ。恋愛してる人の空気ってもっとうかれた感じなんだからさー」


 ぎゃふん。


 久馬にまでダメだしされた・・・。


 しかしなぁ、この体質のせいですっかりネガティブ思考が身に付いちゃって・・・どうにかなんないかなぁ、とは思っても、結局(あきら)めちゃうんだよねー、俺が。


「うかれた感じって・・・例えば、どんなの?」


 俺が後学(こうがく)までにと訊ねれば、久馬はこともなげにある一点を指さした。


「―――あんなの」


 彼が指さした方を見れば、そこにいたのは在原(ありはら)先生と鴻崎(こうざき)先生だった。


冬芽(とうが)さん、ネクタイが曲がってますよ!」


「あれ、ホントだ・・・」


「直してあげますねっ」


「あ、ありがとう・・・宝香(ほうか)さん・・・」


「ふふっ、新婚さんみたいですね」


「しんっ・・・!!!!」


 ああ、確かに・・・甘ったるくてうかれた感じの空気が・・・。


「ね?・・・付き合い始めて間もないっていうのを差し引いても、うかれてるでしょ?」


「でもね、久馬・・・俺はとりあえず片思いなわけで・・・」


「んー、でもそんな落ち込んだ顔で見られたら、恋にオチるものもオチないと思うんだけど・・・」


 そりゃそうだ・・・でもなぁ・・・。


「それ以前に、認識されてないんだけど・・・」


「あ、こりゃ失敬・・・」


 そのためのイメチェンなんだけど・・・そうかぁ、イメチェンしたらこの性格もどうにかしなきゃいけないわけかぁ・・・。


「お、俺にできる、かなぁ・・・?」


「大丈夫だって!先生ならできる!」


 生徒に(はげ)まされる先生っていうのは情けない限りだけれど、久馬に感謝だなぁ・・・持つべきものは趣味の合う友達(猫友)だよなぁ・・・。


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