21.サプライズ
実はPCから教師恋物語のデータだけごっそりと消えてました・・・
次回作が完全にデリート状態で、HPはゼロ・・・
ですが、ようやく、書く気力が湧いてきたので久々の更新です!
――side 景之
「それで、彼女をお2人に紹介したかったっていうのがメインなんですが・・・その、実はここで彼女に似合うコーディネート一式をプレゼントしたくて」
「えっ、い、井橋先生っ?!」
俺の言葉にびっくりする御門先生。うん。サプライズ成功だ。
実はデートのお誘いを受ける前からこういったサプライズをしたいとずっと思っていたんだ。
だって、このブティックは俺を変えてくれた場所で・・・だから、ここで御門先生に似合う服をプレゼントしたかった。
「あらぁ・・・井橋先生ってば、素敵すぎっ!それに、グッドタイミング!今日は来夏ちゃんが閉店までいる日なのぉ!」
雪緒さんがウキウキといった様子でパチン、と手を叩く。
来夏ちゃん、というのはおそらくこのブティックの紅一点??で、珍しい苗字ランキングに入ってそうな、十さんのことだろう。
「来夏ちゃん!来夏ちゃ~ん!女性のお客様よ~」
繁美ちゃんが店の奥に声をかけると、奥の方からパタパタと軽い足音が聞こえてくる。
「はいはーい。どもどもー、十来夏でーす」
なんだろう。見た目はそうでもないんだけど、すっごい軽そうな雰囲気が・・・。
「来夏ちゃん、こちらの方はアタシ達のだーいじなお客様なの。その方の大切な方のコーディネートをお願いできるかしらぁ?」
雪緒さんが俺を紹介しつつそう頼むと、十さんはこっくりと頷く。
「ガッテンですー」
が、がってん・・・って、どうしよう、十さんのキャラが掴めない!・・・ナルホド、これなら雪緒さんや繁美ちゃんの濃ゆさには負けないはずだ。
とまぁ、こちらが呆然としているうちに十さんは御門先生を拉致・・・もとい、店の奥に連れて行ってしまう。
***
何をされているのかわからないけれど、御門先生の「ひゃぁっ・・・」とか、「そ、そこはっ・・・」とか、なんとも表現し難い声が奥から聞こえてくるのがとても気になる。
けど・・・十さんは雪緒さんや繁美ちゃんと仕事をしている人だから、信じてみよう。
「・・・わ、悪い子じゃないのよぉ?」
雪緒さんが口元を引きつらせながらフォローを入れる。
「ええ、大丈夫です・・・信じてますから」
「ちょ、ちょーっと、自分の世界に入っちゃうっていうか~、お客様第一っていうより、自分の感性を大事にしてるのよ~」
俺の反応が良くないと思ったのか、さらに繁美ちゃんが補足してくる。
えーっと・・・そこまで必死にフォローされると、逆に不安になるんだけど・・・。
そう素直に言ってみれば、お2人からは苦笑いが返ってくる。ああ、そうですか、自覚ありですか・・・。
それでもフォローを入れたくなるなんて・・・どんだけ?
少し早まったか?と思っているうちに、奥から十さんが満面の笑みをうかべて出て来た。
「できましたー!ちょー自信作っ!」
えっへんと言わんばかりに胸を張ってそう宣言するので、大きな期待と少しの不安で御門先生が出て来るのを待つ。
そして、出て来た御門先生を見て、俺は、ホゥと感心のため息をもらした。
「・・・そ、その・・・似合い、ます?」
「――はい・・・とても」
その服は御門先生に見惚れる程に良く似合っていた。
っていうか、俺が御門先生に着せたいなぁとひそかに思っていた、お嬢様風の服・・・。
「これはー、リボンタイ付きのシフォンワンピでーす。彼女にはフェミニン系が似合いそうだったんでー、着せてみちゃいましたー」
そうかぁ、こういう格好はフェミニン系っていうんだ・・・。
「ちょ、ちょっと、スカート短くないですか?」
御門先生が必死にスカートの裾を押さえながら訊ねてくる。
いつもはスーツスタイルで、タイトスカートを好んで着ているし、こんなヒラヒラとしたスカートだときっと心許ないんだろうなぁ。
「いえ、そんなことないですよ・・・とても、可愛いです」
「~~~っっ!」
なんて俺が満面の笑顔で言えば、御門先生の頬が真っ赤に染まった。
ああ、可愛い。
「あらぁ・・・何だか、中てられちゃいそうねぇ」
「ああ、あっついわ~」
雪緒さんが苦笑いをうかべて言い、繁美ちゃんもパタパタと手で顔をあおぐ。
「満足してもらえましたー?」
「それはもう・・・大満足です!」
訊ねる十さんに満面の笑顔のままそう答えて、俺は御門先生の手を取る。
「俺の精一杯のサプライズです・・・喜んでもらえましたか?」
「は、はぃ・・・」
真っ赤になって頷く御門先生にホッと胸を撫で下ろした。
――side 詩織
この気持ちをなんと説明したら良いか。
井橋先生のサプライズに、最初は驚きが勝っていたけれど、今は嬉しいって気持ちの方が強い。
十さんっていう女性の店員さんは私を一目見た瞬間から着せたい服は決まっていたらしく、すぐに一着のフェミニンなワンピースを持ってきた。
その後、バスト、ウエスト、ヒップを手で触られて(どうやら感触でサイズがわかるそう。さすがプロ)、目測と誤差はほぼ無しってことでそのワンピースを着せられた。
そのワンピースに合うようなチョーカーや靴を選んで、トータルでコーディネートしてもらう。
「よっし、バッチリー」
満足そうに私を見つめて頷く十さん。
「足元がスースーするんですけど・・・」
「シフォンワンピなんでー、しょうがないでーす。それに、似合ってますから、大丈夫ー」
似合ってますからって・・・うーん、普段着なれないものを着ると心許ないわ。
井橋先生・・・似合うって言ってくれるかなぁ・・・。
なんて思っていたけど、人前で褒められるのは、ものすっごく恥ずかしかったです・・・。