14.うかれる男
――side 景之
俺は今、非常にうかれている。だって、即お断りされると思っていたから。
いくら周りが大丈夫だと言っても、絶対とは限らないし不安だった。
でも、猶予を貰えたんだ。考える時間を欲しいって。それでダメならもうしょうがない。少しの間でも彼女の頭の中を占領できるならそれで・・・。
って、こういう考えがネガティブと言われる所以だろうか・・・。
「いーはしせんっせ!」
バシン!と思いっきり背中を叩かれてたたらを踏む。
「いたた・・・あ、久馬?」
「やほー。ね、告白したんだって?どうだった?」
――え。
「な、そ・・・ど、だ・・・!?」
「んーと・・・“なぜそれを知っている、どこで誰に聞いたんだ!?”と言いたいわけだね、先生」
言いたいことを理解してくれてありがたいけど・・・本当になんで知ってるんだ!!?
「あ、う・・・」
「えへへー、貴華子先生に聞いちゃった♪」
ああ、淋代園先生か・・・プライバシー侵害・・・。
まぁ、久馬はそれなりに心配してくれていたから、言うつもりではいたけどさ。
「えと・・・考えさせてって・・・」
「うわー、生殺しじゃん!」
「で、も・・・即断られると思ってた、から・・・」
俺がそう言えば、久馬はああ、と納得の声をあげた。
「それで、先生、なんかうかれた空気を発してたんだ~」
――久馬、お前何者?エスパー?エスパーなのか!?
「うかれ、てた?」
「うん、スキップしてたから、てっきりOKもらえたんだと思ったのに」
あ、エスパーじゃなくて、俺がわかりやすかっただけね・・・あはは、スキップしてましたか、俺は。
「前向きに、考えてくれるって・・・この格好も、褒めてくれて」
ああ、考えが散らかってて、うまく言葉にできない。
「もしかしなくても、先生、大混乱中?すっごいカタコトで話してるよ?自覚ある?」
うんうん、と俺が頷くのを見て、久馬は苦笑する。いい歳してみっともないよなー、俺。
とはいえ、ここ最近の俺は今までにないことばかりで、完全に飽和状態なのだ。大目に見てもらいたい・・・。
「あのな、ダメでも、いいんだよ・・・俺、ちゃんと御門先生に告白できて、認識してもらえただけでも嬉しいのに、褒めてもらえて・・・ありがとう、久馬のおかげだ」
「や、やだなー、断られるの前提でお礼言わないでよ~!俺はおねにーさんのトコに連れてっただけ!紹介してくれたのは藤吾先生だし、イメチェンしろって言ったのは貴華子先生でしょ?」
ブンブンと手を振ってそう言う久馬だけど、でも、実際に付き添ってくれたのは久馬だし、そもそも、藤吾先生に御門先生の好みを聞こうと言ってくれたのも久馬だ。
「でも、久馬に一番世話になったから」
「もー・・・ちょーハズい。俺、ドSって言われてんだよ?なのに、恋のキューピッド頑張っちゃいましたとか、威厳が薄れちゃうじゃん!」
いや、それは威厳じゃない・・・。
っていうか、ドSであることが重要なのか?久馬、お前って・・・ホント、何者・・・。




