13.大いに戸惑う
いつもありがとうございまーす^^
――side 詩織
遠目に井橋先生を見つけた。養護教諭の淋代園先生となにやら話しているようだったんだけど・・・。
え、あれ?なんかヤバくない?
わー!淋代園先生が、飛び蹴り・・・って、こっち来た!!?
「きゃっ」
足元にスライディングしてきた井橋先生に、思わずキャラに似合わない悲鳴をあげてしまう。
ハッとして顔をあげた井橋先生・・・って、私、今日はスカート!!
バッとスカートの裾を押さえて、一歩後ろに下がる。
どうしよう、見られた?!・・・っていうか、今日の下着ってどんなのはいたっけ?ってちがーう!!
「あ・・・」
すっ転んでも、イケメンはイケメンだった・・・。額を押さえて涙目になっているのを見たら・・・ヤバイ、ときめいた・・・。
「す、すみません・・・えと、ぶつかったりしません、でした、よね?」
「へ?・・・あ、は、はい」
よ、よかった・・・スカートの中を見られてないみたい・・・。
のそのそと起き上がった井橋先生は服についたほこりやなんかをパタパタとはたく。
「淋代園先生、酷いじゃないですか・・・って、あれ?いない」
くるりと振り返って井橋先生が文句を言おうとしたが、相手はいない。
それもそのはず。淋代園先生は井橋先生を蹴っ飛ばした後、さっさと立ち去った。そりゃもう、清々しいお顔で。
「あの・・・何か怒らせるようなことを言ったりしたんですか?」
「え?・・・あー・・・いえ・・・じめじめと鬱陶しいんだそうで」
鬱陶しい?井橋先生が?
「ええ~?」
そうは見えないけど・・・っていうか、イメチェン後はキラキラしいというか、目の保養というか・・・。
「自分でもそうかな、とは思っていたんで・・・」
苦笑いをうかべる井橋先生。・・・なんだろう、こう、影の薄かった頃の名残か、ネガティブよね、この人。
「・・・でも、井橋先生ってカッコいいと思いますよ。今の方が断然良いです」
って、勝手に口が!!!・・・た、確かにタイプだけど!!好みにドンピシャで、ときめいちゃったりしたけど!!
今まで、影の薄さを理由にして視界にも入れなかった人に対して、イメチェンして存在感が出たからって、酷すぎじゃない!?
「・・・ホント、ですか?」
「ご、ごごご、ごめんなさい!」
「え、あ・・・あの・・・?」
謝るタイミング悪っ!!これじゃ、カッコいいって言ったのを謝ったみたいじゃないの!
「あ、違うんです、そうじゃなくて・・・その、存在感が出たからって単純にコロッと態度を変えられても、こ、困りますよね!」
あー!何か言ってる意味わかんない!!
「ああ・・・いえ。今までが今までですし・・・認識されないよりかはマシ、と言いますか・・・」
うう、すみません。私も認識してなかった1人です・・・あー、井橋先生の苦笑いに罪悪感が・・・。
「・・・その、どうしてイメチェンしようって思ったんですか?前に他の先生に聞かれていたとき、暗黒のせいじゃないっぽいかなーって思ったんですけど」
「え、っと・・・」
あ、何か言いにくそう・・・マズイ質問だったのかしら。
「あ、答えたくないなら、別に・・・」
「いえ・・・その、御門先生に・・・認識されたくて・・・」
「――――――え、あ、私?」
えっ、ええ!?それって、どういう・・・?
「見かけるたびに目で追ってしまって・・・ついでに、視界に入れてほしくて、たまに追いかけてしまったり・・・でも、気づいてもらえなくて・・・それで・・・」
しどろもどろになってそう言う井橋先生の顔は真っ赤だ。たぶん、私も真っ赤・・・。
「井橋先生・・・」
「俺、御門先生のことが、ずっと好きでした・・・」
告白、だ。
なんか、そんな雰囲気だったけど・・・本気で告白されてる!私が!?
「・・・・・・じ、時間くださいっ!」
だって、考えてもいなかったんだもん!!告白されるなんて、初めてで・・・でも、ちゃんと考えたい。
「・・・あ、はい。―――良かった、即答で断られると思っていたんで・・・少しは猶予をもらえたってことですよね?」
あ、また苦笑い・・・。
「あの・・・私、そんな風に考えたことなくて。でも、前向きに考えてみます・・・から」
だから、そんな顔しないでほしい。
そんな、諦めたような顔で・・・笑わないでよ・・・。
 




