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11.タイミングの合わない2人

しーちゃんの気持ちはまだ・・・同情>恋情


 昨日は疲れた、というよりも本当に勉強になった。コーディネートとか。それに、繁美ちゃんからの助言は目からうろこだった。


 生徒に対するように・・・か。


 今日すぐに実行できるかって言われたら、ちょっと二の足を踏んでしまうかもしれないけれど・・・でも、勇気を出してみようと思う。


 というわけで、今日は久馬に選んでもらったジャケットとスラックス。スラックスは無地じゃなくて、縦ストライプが入ってるもので、足が長く見えるんだそうだ。


 さすがに2日目にもなると他の先生達も驚かない。まぁ、認識はされているみたいだから文句なし。


 職員室の自席へと向かうと、最首先生や御門先生と目が合う。うわわ、さっそく・・・よし、まずは挨拶から・・・。


「お、おはようございます・・・」


「おはようございます・・・」


「おはようございます、井橋先生。今日も素敵なコーディネートですね、今度、お店を紹介してくださいよ」


 御門先生は小さく会釈(えしゃく)するのみで、最首先生はコーディネートに目をつけて、そう言ってきた。


「あ、うん。最首先生が良ければ、いつでも。・・・でも、このコーディネートは、店で久馬が選んでくれたんだ・・・」


「へぇ、じゃあ、久馬家の御用達(ごようたし)のお店なんですか?」


「そうみたい。・・・他にもうちの生徒やその家族・・・あと、理事長も顧客リストに入っているらしいよ」


 あー、最首先生だとちゃんと話せるのになー・・・。


 っていうか、御門先生の視線を感じるんだけど、恥ずかしくて、そっち向けない!!


「そうなんですか。よっぽどいいお店なんですね」


「うん・・・昨日品川先生を連れて行ったんだけど、カウンセリングを受けて、スーツ一式をオーダーメイドしてたよ」


 それに、あのブティックは女性物も扱っている。ホラ、御門先生にも言ってみなくちゃ!頑張れ、俺!!


「あ、えと・・・」


 勇気を振り絞って御門先生の方を向いた時だった。


 キーンコーンカーンコーン・・・


 無情にも始業5分前のチャイムが鳴りだす。


「――授業の準備、行かないとですね」


 御門先生がポツリと呟いて俺達に背を向ける。


 うう・・・挨拶しかできなかった。


「うーん・・・あと一歩ですねぇ、井橋先生」


「――――――最首先生にも、知られてましたか・・・」


 どうやら、御門先生以外の職員にはバレバレらしい・・・。最首先生もそのつもりで話題を振ってくれたらしいのだが・・・うう、チャイムさえ鳴らなければ・・・!!


 なんて、自分の臆病さを棚に上げて、俺は恨めしげにスピーカーを見やった。



***



――side 詩織



 今日もまた、井橋先生の存在感は健在だった。


 でも、私とは目が合っても挨拶程度で終わっちゃうのに、最首先生とだと結構話してる。


 まぁ、担任と副担任って関係だし・・・わからなくもないんだけど・・・なんか、もやもやする。


 話を盗み聞きしていてわかったことだけど、あのイメチェンは2年の久馬くんの仕業らしい。グッジョブ、久馬くん。


 にゃん国同好会の方で井橋先生と仲良くなったみたいだけど、生徒と信頼関係を築くのって憧れるなぁ。


 やっぱり、私も部活持とうか・・・いや、家庭部もほぼ顧問みたいな頻度で行ってるけど、生徒と同じ立場だし・・・。


 でも、私が教えられるのって数学だけだから・・・あ、数理研究部とか?うちって理系の子も多いものね、んー、後で理事長に相談してみようかしら。


 なんて考えていたら、目の前に井橋先生の背中を発見した。あのコーディネートは井橋先生によく似合ってたから、覚えてたし。


「―――い、」


「せんせー!今日も存在感あるじゃーん!!」


「すげー!俺、井橋先生を授業以外で発見できたの初めてだし!」


 井橋先生、と声をかけようとした瞬間。生徒達が井橋先生に群がり、軽口を叩く。


 ううーん・・・声をかけづらい。


 井橋先生って影は薄いけど生徒達には(した)われている。それは授業がとてもわかり易いというのと、学習相談でよく生徒の面倒を見ているから。


 学習相談って1人ひとり対応しなきゃいけないし、時間もかかるしで、放課後の時間を丸まる使ってしまうこともある。


 その後に事務処理をすると帰りは午前様だ。まぁ寮生活だし、職員寮は学校の敷地を出て徒歩5分の所にあるからそれ程大変じゃないんだけど。


 あ、ちなみに、学生寮はそんな職員寮から更に5分程歩いた先にある。絶妙に校舎が見えない位置に建っているのは、理事長の考えで、生徒達に生活のメリハリをつけさせたいから、ということらしい。


 その考えはなんとなくわかる。寮が敷地内にあると寝ぼけたまま登校したりとか・・・たった10分、されど10分。通学時間があるというだけで、少しは違うものだ。


 なんて、余所事(よそごと)を考えていたら、いつの間にか井橋先生は生徒達と共にどこかに行ってしまっていた。


 ま、いっか。担当学年は一緒なんだし、そのうち話す機会もあるでしょ。

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