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10.おねにーさん、再び

おねにーさん達の名字・・・

小鳥遊⇒たかなし

月見里⇒やまなし

十⇒つなし


興味のある人は由来を調べてみましょう・・・


「あらぁ!連日のご来店ありがとうございまぁす!」


 ニッコリと笑って、くねん、と腰を曲げて・・・。


 はい、やって来ました“ブティック&ヘアサロン≪プレジデント≫”。おねにーさんの熱烈?な歓迎に、品川先生が目を白黒させている。


 ああ、巻き込んでごめんね、品川先生・・・。


「あらっ、新たにイイ男!」


 うふん、と笑ってばっちんとウィンク。――が、頑張れ品川先生!何だか遠い目をしてるけど、現実に帰って来て!!


「あ、あの、おねにーさん・・・」


「あらやだ、久馬さんとこの一志(かずし)君みたいに呼ばれるのは照れちゃうわ、雪緒(ゆきお)って呼んでぇ?」


 えーと、そう言えば名刺もらったんだった。確か、小鳥遊雪緒(たかなし ゆきお)さん・・・だったよね。


「これ、本名ですか・・・?」


 名刺を確認しつつ訊ねれば、おねにーさん・・・もとい、雪緒さんは苦笑しつつ頷いた。


「そうなのよぉ、芸名みたいな名前でしょお?」


 一瞬、芸名がゲイ名に聞こえた・・・あ、あはは・・・失礼にも程があるよね。


「じゃあ、繁美(しげみ)ちゃんは・・・」


「ああ!繁美ちゃんも本名よぉ!月見里繁美(やまなし しげみ)っていうの。どっちも音は普通の名字なんだけど字が珍しいからねぇ、共同経営者やるくらいに意気投合しちゃったのよぉ!」


「へぇ・・・」


「それともう1人、エステティシャンで、紅一点の十来夏(つなし らいか)ちゃんってコもいるのよ~!どうせだから珍しい名字のコを雇いましょうよって話になってェ、最初は紳士服のみの取り扱いだったし、理容師が良かったんだけどぉ、(つなし)ちゃんが売り込みに来てねぇ・・・」


 遠い目をしている雪緒さん。・・・その十さんって人も結構濃いキャラなのかなぁ・・・女性である分で雪緒さんと繁美ちゃんよりも衝撃が少ないと思うんだけど・・・それって甘い?


「ああ~っ、井橋センセ~、また来てくれたのね~っ!」


 ブンブンと手を振る繁美ちゃん登場・・・ああ、また品川先生が遠い目に!!


「こんばんは、繁美ちゃん・・・あの、今日はですね・・・」


「ちゃんと一志君に聞いてるわよ~!普段着を一揃えしたいのよね~?」


「あ、はい。そうです」


「今はちょうど秋物セールと冬物の新作が出揃ってるから、一気に選んじゃいましょ~!!」


「ぐぇ・・・」


 繁美ちゃんに首根っこを掴まえられて、ズルズルと紳士服コーナーに連れていかれる。


「あ、井橋先生・・・」


「貴方はこっちよぉ!ぜひカウンセリングさせてちょうだぁい!」


「うえぇ?!」


 品川先生は・・・雪緒さんに捕まった・・・うう、ごめんなさい・・・。


「そ、れ、で~、普段着、いつもはどんなの着てるの~?」


「全体的に茶系統の・・・ベストとか、チノパンとか・・・」


「あら、オジサン臭いわね~」


 ドスゥッ!!!


 うぐ・・・!オジサンって、オジサンって・・・!!


 涙目になって見つめる俺に、繁美ちゃんは苦笑いをうかべる。


「あら、古傷(えぐ)ったかしら~・・・ごめんなさいね~?・・・でも、その分、張り切って選んであげる!・・・髪色を少し赤系に染めたから、絶対に緑とか似合うと思うのよ~。

 まぁ、渋めの色も似合うとは思うけど~・・・やっぱり、原色とか明るめの色でコーディネートしてみましょ~」


 繁美ちゃんが張り切って俺を着せ替え人形にし始める。その間、俺はずっと鏡に向き合ったまま・・・どんどんと変わっていく自分を見つめていた。



***



「まぁ、大体こんなところね~!」


 繁美ちゃんは満足げにそう言って頷いた。片っぱしから服を合わせていたようにも見えたけど、ちゃんとコーディネート(ごと)に袋に入れてくれた。


 うん、組み合わせの仕方までメモしてくれたから・・・これで今シーズンは安心・・・。


 流行りってあっと言う間に変わるけど、繁美ちゃんが選んでくれたものは基本的なものばかりなので、組み合わせ次第でいくらでもその時の流行っぽく出来るらしい。――勉強になるなぁ。


 そして心配していた品川先生の方だけど、あっちは普通にカウンセリングを受けて、スーツ一式をオーダーメイドしていた。できあがる頃にまた来るように言われたらしい。


「つき合わせちゃって、ごめん」


「いや・・・最初はどん引いたんだけど・・・なんか、ここ、良いな」


 うん、カロリー学院で働いていると、順能性はバカ高くなるんだよね。っていうか、雪緒さんや繁美ちゃんのキャラはともかくとして、センスは抜群なんだよな、ここ。


「自分に似合ったものを身につけないと、もったいないわよぉ!・・・それでぇ、井橋先生は女性とスムーズに会話できるようになりたいのよねぇ?」


 ほ、本題キタ――――!!


「え、えと・・・」


「まぁ、緊張しちゃうのはわかるけどぉ・・・元々、口数は少ないみたいだし、無理して話そうって思わない方が良いんじゃないのぉ?」


「あ・・・」


 そうなんだよな・・・何話そうって焦って、つい黙りこんでしまう典型的なパターンなんだよ、俺。


「でも、井橋先生は授業中や部活動中なら、生徒とのコミュニケーションもちゃんととれてるよな」


 品川先生がそう補足すると、雪緒さんと繁美ちゃんが目を(みは)った。


「あらぁ・・・それなら、ぜんっぜん問題ないじゃなぁい」


「そうよ~普段通りにすればいいのよ~、むしろ、相手を生徒だと思っちゃえばいいんじゃないの~」


「いや、さすがにそれは・・・」


「まぁ、それは言い過ぎにしても~・・・そんな気持ちで話せば緊張しないんじゃな~い?」


 繁美ちゃんの言う通りかもしれない・・・。


「た、試してみる・・・」


 まずは一歩、勇気を出さないと、な。


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