そして停滞の時代にヒビが入る4
やっと投稿しました。遅くなってすみません。
それから俺たちは40分くらい歩いたが、ホリニウムドームは見えてこない。どうやら相当遠くまで逃げてしまったようだ。
ちなみに歩いてる間もアリスのおしゃべりは終わることがない。
よくそんなに話題があるなと感心したほどだ。
「見えてきたよ。あれが私の家。」
そう言ってアリスが指差したのは煙突付きの普通の家だった。
「……。」
理解が追い付かない。
悪魔が現れてからホリニウムドームの外で人は生きていけない。だからアリスの家ももちろんホリニウムドームの中にあるはずで……でも、ここに家があって……まだゲートを越えてないから……まだここはホリニウムドームの外で……あれ……混乱してきたぞ。
「俺たちはいつの間にホリニウムドームの中に入ったんだ?」
「?入ってないよ。」
やはり俺がおかしいわけじゃなさそうだ。
そうだ。もっと冷静になれ。
「つまりアリスはホリニウムドームの外で暮らしてるってこと?」
「うん!ほらほら行こう!」
アリスに手を引かれ俺は家に入った。
「ただいま!お母さん。」
家の扉を開けると、そこにはアリスによく似た美しい女性がいた。
ふんわりとしたウェーブのかかった髪は着ている服によく似合っている。
「お帰りなさい。アリス。あら……あなたは?」
思わず見とれていた俺は、ハッとなってしどろもどろに答える。
「き、綺燕 優夜(きえん ゆうや)です。よ、よろしいお願いします。」
「さっきあっちの方で襲われてたのを、助けたの!」
俺が緊張で硬くなった挨拶をアリスが、俺たちが来た方向を指差しながら補足する。
アリスのお母さんはそれを聞いて、少し怪訝な表情をして、俺の顔をじっと見る。
俺は美人のお母さんに顔を覗き込まれ、顔を赤くしながら目をそらした。
その反応を見て、可笑しそうにクスリと笑うとアリスのお母さんは頭を撫でてきた。
「そう。よろしくね。優夜くん。私はアリスの母。マリアよ。」
「はい。よろしくお願いします。」
俺は頭を下げる(2回目)。
「今からお昼ご飯だから、優夜くんも食べていってね。」
そう言ってマリアさんはキッチンに歩いていった。
ここから俺は六條家に居候した。ドームの中に戻ることは考えてなかった(自分のことながら笑えない)し、考えてみてもいい案は全く浮かばなかったからだ。もちろんマリアさんとアリスには許可をもらってる。
生活については特に問題はなかった。食事は毎食マリアさんが手作りしてくれたし、服についてアリスが縫って作ってくれた。ちなみにマリアさんは一流の料理人並みの腕前だし、アリスは意外と縫い物が上手だった。アリスについては初対面の時に着ていた魔法少女コスチュームも手作りらしい。
「母さんと妹はどうしてるかな。」
唯一の心配事と言えばこれくらいだ。
結局俺は1ヶ月ちょっとここに居候した。ここで過ごす日々とても楽しかった。学校もないし、外に出ればいつまでも辺り一面の緑が出迎えてくれた。ドームの中だとこうはいかない。俺達の住む場所はドームの中心の方だ。外側はもしもの時を考えて誰住もうとはしない。必然的に人は中心に集まり、中心が過密地帯になり、外側は過疎化する。なので残念ながら俺達の住む場所にはこうも豊かな自然はない。
そしてそろそろ帰らなきゃなと思っていた時だろう。この生活が終わったのわ。
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