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穴の開いた世界  作者: 家内 由生
序章 記憶の欠片
3/4

そして停滞の時代にヒビが入る3

「違うよ。私は魔法少女だよ!」


「……は?」


 ポーズを決めてそういう女の子に俺はついそんな声を漏らしてしまった。


「私は魔法少女だよ!」


「いや、聞こえなかった訳じゃねえよ!」


 俺のツッコミを聞いて女の子は実に不思議そうな顔をしている。なんでツッコミをされたのかわかっていないようだ。

 なんか面倒なのと関わっちまったな。

 俺は無意識にため息をついてから話題を変えた。


「俺は綺燕 優夜。さっきは助けてくれてありがとう。君は?」


「私は六條 アリス。アリスって読んでね。よろしくね!」



「じゃあ俺も優夜でいいよ。それにしてもホリニウムドームの外に人がいるとわな……」


「ん、何か言った?」


「?!」


 しまった。また声に出てたか。

 昔からそうなのだが、どうやら俺には考えていたことを声に出してしまうことがあるらしい。幼馴染みの少女によく注意される。

 しかし……


「直らないんだよな〜。」


「何が?」


「?!」


 しまった。また声に出てたか。


「いや、何でもないよ。それにしても六條さんが使ってた魔法みたいのはなんだったの?」


 多少強引かもしれないとは思ったが、話題を変えた。

 すると、アリスはまたムッとした顔になると、


「魔法みたいのじゃなくて、魔法だよ。」


「え?」


 と言った。

 初めにいっておくが、悪魔は魔力を持っており魔法が使える。しかし人間は一切使えない。何故なら理由は簡単だ。人間は魔力を持っていないからだ。

 まあそれでも人間が魔法を使う方法もあるにはある。しかしその方法にはいずれも特別な道具が必要だが、アリスはその道具を持ってはいない。

 なのでアリスは魔法を使えるはずがないのだが、俺にはアリスが嘘をいっているようには見えなかった。


「すごいでしょ!」


 そう言ってぐっと親指をたてられた。

 ……まあ細かいことはいいか。


「ああ、すごいね。俺にはとても真似できない。」


「でしょでしょ。えへへ……。」


 照れてるアリスはとても可愛いかった。

 ああなんだかこのまま飾っておきたい。

 それから俺たちはその場でおしゃべりを続けた。気づけば夕日が見えてきたので感覚以上に時間は経っていたらしい。

 ちなみにこの時俺は初めて夕焼け空を見た。今まではずっとホリニウムドームの中で暮らしていたからだ。


「きれいだな。」


 俺が空を見上げながら呟くと、アリスは言葉を返してくれた。


「うん。」


 この短時間でもわかるほどに口数の多い六條さんだが、この時ばかりは静かだった。

 それからしばらくこの夕焼け空を楽しんでからアリスが不意に口を開いた。


「ねえ。良かったらこれから家に来ない?」


「え?いいの?」


「うん!いいよ!」


「じゃあお言葉に甘えて……」


 正直な話をすると、俺は今日は家に帰りたくなかった。なにも言わずに出てきたてしまったし、何よりホリニウムドームの外に出るなど何を言われるか分かったもんじゃない。

 心配かけて申し訳ないとも思うが、せっかく脱出したのだ。もっといろいろな物を体験してからじゃないと嫌だ。もう二度これないかもしれないのだから。

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