二人一組(バディ・システム)
今回はかなり長いので気を引き締めて行きます(^-^)/
新隊員の教育期間も終盤を迎え、部署に応じた実地訓練が織り込まれるようになった。坂井は駅整備業務部配属なので防衛部の浩とは訓練内容が分かれる。大東京駅で研修に励む毎日だ。
大東京駅をフィールドとする研修には、関東区内の他の駅に配属の隊員たちも交替で参加し、また、関東一複雑な大東京駅のダイヤや整備調整を学んでいる。
年を追って増え続ける電車の本数は熟練の駅整員でも間違えて案内することが多く、1日数百本もの電車が行き交う大東京駅は広大な敷地の地下まで鉄道があり、広すぎてたまに遭難者が出るほどまで言われる。
その巨大ターミナルの管理は研修にもうってつけだ。この教育期間が終われば、他県の駅配属の者はそれぞれ所轄の主要駅の隊舎に旅立つことになる。防衛員は引き続いて練成訓練と並行して大東京駅と関東指令基地とで実際に警備業務をローテーションで体験する。
防衛員は標準装備として弱装弾を装填の99式小銃(99式小銃とは、平成から本永に代わり憲法9条の撤廃と同時に作られた小銃で、89式よりさらに性能が良くなった)を携帯するが、新隊員は三段式の警棒のみだ。
他の駅が攻めてくるのはまれで、大東京駅の上下の路線の駅と同盟を結んでいて安全だ。それでも一応警備をしなければならない。だが利用者に威圧感を与えるわけにはいかないので、警備はあくまでさりげない人員の配置を考慮せねばならない。他の駅は夜討ちや朝駆けはもちろん、テロだってするからローテーションにも隙は作れず、昼夜を分かたず警戒態勢が敷かれる。
「利用者いつも多いですね。」
そんなことを聞いてみた相手は、その日の警備指導役だった清水である。新隊員は常に先任の防衛員と二人一組[バディ・システム]で指導を受ける。清水は苦笑いしながら浩の質問に答えた。
「そうだね、こんなご時世だから」
日本国憲法第9条が撤廃されてから車や自転車で移動すると他人に撃たれるが、電車だと他の人がいるから少しでも安全性があるため利用者数は年を追って増加する一方だ。
「それに政府は黙っているし警察はほぼ諦めているし。まぁ当たり前と言ったら当たり前かな」
政府は憲法9条の撤廃後は自分達の支持率ばかり気にしている。(無論下がっているのは言うまでもない)それに警察は対応しきれず、麻薬や密輸などの特殊なことしか取り締まっていない。
「タクシーとか路面電車はどうなっているんですか?大東京駅では保護してませんけど」
「タクシーは今から2年前の本永18年にテロが起きて廃止で路面電車は本永元年に経費削減で廃止になっているよ」
清水が言った通りでタクシーは本永18年に東京の繁華街でタクシーが大爆発して死者33人重軽傷者62人も出して次の日に全てのタクシー会社が営業をやめた。路面電車は市や区や町が経費削減を目的として廃止したが、あまり効果は出なかったらしい。清水は浩に向かって顔を軽くしかめた。
「・・・でも、この辺は座学でやっているはずだよ。東条くん、ちゃんと講義聞いてた?」
「すみません、座学って苦手で・・・清水教官ぐらい簡単に説明してくれると分かりやすいんですけど」
練成訓練の合間に挟まれる座学は絶好の休憩タイムで、真面目に聞こうとは思うのだが疲れに負けてついつい寝てしまうのがつねだった。
「まぁいいや、和田には黙っててあげるよ」
笑った清水と対照的に浩の顔は渋くなった。
「よっぽど嫌いたね、和田のこと」
「向こうが僕のこと嫌いだと思うんですけど」
「そんなことないよ」
清水はあっさり断言したが、あまりの根拠の無さに浩は顔をしかめた。
「だって僕だけ何であんな当たりきつい人ですよ!他の隊員と明らかに扱いが違いますよ」
「期待している分厳しくなるって解釈してやれない?」
坂井も前に言った理屈だが、
「無理です」
それを納得するにはもう意固地になりすぎている。
「まぁ和田も大人気ないっちゃないんだけどね。じゃあ、何で自分だけ叱られるか考えてみたらいいんじゃない?」
期待されているから?絶対に違う! 浩は自分の意見を即却下するとハッと気付いた。 もしかして突き放したのか? と
「別に突き放したとかじゃないから」
態度には出すまいと気を張ったが、それでもしょげたのは伝わったらしい。
「和田も悪いのは確かだよ。あいつ、君には公正じゃないからな」
そりゃそうだろ! 浩は心の中で突っ込んだ。
次の警備のときは一番恐れていた事態が発生した。和田とのバディだ。
「・・・何だその不景気ヅラは」
「そっくりそのままお返しします」
何ならハッピーセットもお付けしましょうか、 と皮肉を言ったら無視された。 清水教官ムリです!仲良くなれません!
今回はかなり長かった~(笑)
今回も携帯からの投稿です!
次話もよろしくお願いします!