神隠し
私はみんなを守りたいのですよ…絶対に―――アルミナ・テルチ
私は幼い頃から積極的に人の輪に入っていくような性格ではありませんでした。
別に人が嫌いであったり話すのが苦手というわけではありません。
ただ、人と親しくし過ぎると別れの時が辛くなるからです。
小さなの頃から冷めた子供だったのですよ。
私の家庭は3人家族ですが父が首都の方に行っていて昔から母との2人暮らしなのです。
たまに家に父が帰って来ますがそれも1年に一回ほどなのですよ。
寂しい思いもしましたがこれも私達、家族のために頑張ってくれているのだと割り切っていたのです。
そんな子供時代でしたがセリオンの一家とは家族ぐるみの付き合いでセリオンの両親にはとても良くしてもらっていました。
他人との接触は極力避けていた私ですがセリオン一家は別でした。
本当の家族のようにも思っていました…。
しかし5年前…
私はセリオンと村から少し離れた洞窟に探検に行ったのです。
セリオンの両親は冒険家で様々な場所に行っていたらしいのですが私達が訪れた洞窟には宝があると言っていたのですよ。
当然、子供だった私達は洞窟探検に行こうと思いましたがセリオンの両親からはダメだと言われたのです。
どうやら季節的に洞窟には冬眠の為に強力な魔物が戻っているらしいのです。
しかし私達は魔物を見つけたら逃げればいいと簡単に考え洞窟に向かったのですよ。
一応、各家には置き手紙を残して…。
初めは2人で楽しく探検していましたが魔物を見てからは楽しさも吹き飛びました。
体長は3メートルはあろうかと思う大きな狼がいたのです。
私達は逃げ出しました。
しかし子供の足で逃げるのは不可能で結局、出口に回り込まれてしまったのですよ。
私はなぜ言うことを聞いておかなかったのかと今更ながら後悔したのです。
そんな時にセリオンの両親が助けに来てくれました。
しかし魔物は強く2人はとても苦戦していました。
セリオンのお父様は私達に先に逃げろと仰ったのでセリオンを連れて村に急いで帰りました。
その後、村の入り口でセリオンと2人を待ち続けました…。
どれくらい待ったでしょう…日が暮れかかってきた時に2人は帰ってきたのですよ………酷い怪我を負って。
2人はその怪我のせいで亡くなりました。
セリオンより年上の私が洞窟に行くのを止めていれば…。
今でも後悔しているのですよ。
2人が亡くなったのは私のせいです。
テルモさんは子供だった私達は悪くないと言いましたが違います。
私は罪滅ぼしのため…そして犠牲を出さないように強くなるため神に仕える事を決めたのです。
朝…。
「なんだか外が騒がしいですね…」
私は服を着替え部屋をでた。
「おはようアルミナ。良く眠れた?」
「アルミナよ。おはよう」
一階に降りていくと母と村長がいた。
「おはようございます。お母さん、村長。外が騒がしいようですが何かあったのですか?」
「うむ、それについては私から説明しよう。実は昨日から今日にかけて村の者が何人か行方不明になったのだ。」
ついにこの村にまで被害が…。
しばらくするとセリオンとリアーナがやってきた。
「アルミナさん!村の人がいなくなったって!」
「セリオン。話は村長から聞きました…。こうなってしまった以上、みんなには話さなければならない事があるのですよ。」
全員が息を呑んだ。
「実は教会では今、ある人物を追っています。名前はバーバラ…魔術師です。そして最近、近辺でグールが目撃されています。」
「グールってこの間の魔物だよな?」
セリオンが驚いている。
仕方ないだろう、あのような魔物が近くにいるだけで怖いものですからね。
「はい、その通りです。そしてグールは人間から作られた魔物なのです。バーバラはそのグールを作っている犯人として追われているのです」
「もしや、村人はグールの材料にするためさらわれたのか…?」
村長が小さな声で呟いた。
「多分、そうかもしれないのですよ…。最近、バーバラがこちらに来たという情報が入りました…。」
「なんと…!?ではどうすればいいのだ…」
村長が頭を抱えている。
セリオンも今聞いた話が信じられないのか絶句している。
「人間を魔物にするなんて許されないだろ!」
「ええ、そうでありますよ。こうなってしまった以上、教会でバーバラを討伐しにいきたいと思います…」
「アルミナ…大丈夫なの?そんな危険なことするなんて母さん心配で…」
「お母さん大丈夫でありますよ。私はこんな時のために…村の仲間を守るために教会に入ったのですから」
そう言い私は笑顔を向けた。
「私も…お手伝いします!」
それまで黙っていたリアーナが突然、席を立ち言った。
「しかしリアーナ…とても危険なのですよ」
「大丈夫です。治癒魔法を使えますし、お役に立てると思います」
「俺も行くぜ!」
セリオンもリアーナに続いて言った。
しかし私は反対だ。
「セリオン。あなたは絶対にダメです。そこらの魔物と戦うのとは訳が違うのですよ。それにあなたにもしもの事があったらあなたの両親に合わせる顔がありません」
「そうだぞセリオン。アルミナもリアーナさんも魔導具を持ってるからいいがお前は持ってないじゃないか」
村長も私に続く。
「それについて提案なんですけど…」
「どうしましたリアーナ?」
「セリオンは聖石を持ってるから魔導具を作れると思います。」
聖石…おじさまとおばさまがセリオンに残した物ですね。
「しかしアリーナ…お金もかかりますし何より職人が…」
「そうだよアリーナ。昨日、お金がかかるって言ってたじゃないか」
「お金なら大丈夫。私が払います。そして職人なら…アルミナさん今、教会にマクガウェルさんが来てますよね?」
「な、なぜそれを?」
「それは、まぁ色々と…。マクガウェルさんなら聖石の加工ならやってくれます。」
「てことは…俺も魔導具が手にはいるのか?」
「うん!」
セリオンとアリーナは盛り上がっている。
「これならいいよなアルミナさん!」
はぁ、やっぱりセリオンにはかなわないのですよ。
「わかりました。ただし危なくなったらすぐに逃げること。そして私の言うことを聞くこといいですね?」
「おう!」
話はまとまったので早速、教会に向かうことになった。
村には教会から何人か護衛を送るということで村長に安心してもらった。
しかしアリーナ…。
なぜこの村に来たのか…そして教会についてもなぜ詳しいのか。
私は先ほどの話の時にバーバラの名前を出したときアリーナが反応したのを覚えている。
彼女は味方なのか…それとも…。
「すみません。今日のアルミナ講座はお休みです」
「えっ?なんでさ。結構楽しみにしてたのに」
「大人の都合です。というか話す内容がありません」
「アルミナさん!今、ぶっちゃけたよね?」
「黙りなさい!そんな質の悪いツッコミで私が満足すると思ってるんですか?」
「いや、もう訳わかんない…(泣)」
「ではまたお会いしましょう」