青眼の少女と天馬に跨がりし者
やっぱり村の外ってワクワクするな!
魔物と戦うのも剣の練習になるしな―――セリオン
「ふぅ…こんなもんか」
ウルフを倒した俺は一息ついた。
先程、家に帰りテルモ爺ちゃんに事情を説明して村を出てきた。
比較的ここらへんの魔物は弱いのにもかかわらず爺ちゃんは傷薬を何個かくれた。
「大袈裟なんだよな…」
しばらく歩いていると異様な物を見つけた…。
「なんだコレ…。血?それにまだ乾いてない…!?」
ガサッ…。
後ろを振り返ると見たこともない魔物がいた。
人の形はしているが大きく開かれた口とただれた体は見るからに人間とは違っていた。
そして傍らには死体が転がっている。
この魔物に喰われたのか無惨な姿をしていた。
「この野郎!こんなやつ見たことねぇぞ!」
俺は剣を振りかぶって魔物を斬りつけた…が効いていないのか腕を振り回してきた。
「やべっ!」
ドカッ!
クソッ!左腕をやられたっ。
なんて力だ!
逃げなきゃヤバいかもな…。
俺は全速力で逃げることにした。
負けたわけじゃないぞ!戦略的撤退だ―――
「まさかあんなのがいるなんてな…」
なんとか逃げ切った俺は休憩をしていた。
「左腕の感覚が全然ない…」
俺は人の死体を見たことや負傷した左腕などが積み重なり疲労が溜まっていた。
「クソッ!どうすれば…」
ガサガサ!
もしかしてまたアイツが…!?
「あれ…。どうしたんですかこんな所で…」
目の前には不思議そうにこちらを見ている青い眼の女の子。
はぁ、緊張したのがバカみたいだ…。
「怪我してるじゃないですか!見せてください!」
「えっ?」
女の子は俺に近寄ると左腕を手に取りなにやらぼそぼそと言い始めた。
「神よ御心のままに癒やしを与えたまえ…ヒール!」
そう彼女が言った途端に左腕の怪我が嘘みたいに治っていった。
「これは…魔法!」
「はい!私は治癒魔法が使えるんです。あ、自己紹介がまだでしたね。私はリアーナと言います」
「俺はセリオン。助けてくれてありがとう!それにしても魔法なんて凄いな!」
俺は魔法を見たことは何回かしかない。
「えっ?あなたの知り合いに治癒魔法を使える人はいないんですか?」
「うん。俺の村では魔法や魔導器は使ってないんだ」
「という事は…あなたはアーデル村の方ですか!?」
突然、驚いたように彼女は言った。
「そうだけど…ってこんな呑気に話してる場合じゃなかった!近くに魔物がいるから早く安全な所に…!クソッ!」
目の前には先程の異形の魔物がいた。
「あれは…!腐食鬼ですか!…やはり噂は本当だったんですね…」
リアーナは何か呟いているが、そんな事をしている暇はない!
「リアーナ逃げよう!」
俺は彼女の手を引っ張った。
「えっ!ちょっとセリオンさん!」
どこか安全な場所はないのか!
リアーナだけでも助けなければ…!
「セリオン、右に避けなさい!」
突然、前から声がした。
俺は声に従いリアーナを抱え横に飛び退いた。
すると俺がいた場所を電撃が通り過ぎ魔物に一直線に向かっていった。
「散りなさい!異端たる魔物よ!」
電撃が当たるとあれだけ苦戦した魔物が一瞬で消滅した。
「無事のようですね。セリオン」
「助かりましたアルミナさん…」
俺を助けてくれたのは機械仕掛けの天馬に乗ったシスター。
名前はアルミナ。俺が向かうことになっていた教会のシスターだ。
彼女は付近の治安を守るために教会で作られた部隊の武装シスターであるため魔物などとの戦いには非常になれている。
そしてたまに村に来ては俺に稽古をつけてくれる頼れるお姉さんって感じなのだが…。
「セリオン。いつまで婦女子を抱いているつもりですか。この性犯罪者」
この人、口から毒を吐くんです(泣)
「ご、ごめん!リアーナ」
「い、いえ…助けていただいてありがとうございます…」
リアーナは恥ずかしさからか下を向いてしまった。
「しかし、教会に来るならば一報くれれば良かったのに。私がもう少し遅かったら死んでいたかもしれないのはわかっているのですか?」
「ご、ごめん…」
「ごめんで済むなら騎士団はいりません!この能無し!」
こうなってしまうと謝るしかないんだよな…。
俺は30分ほど罵声を浴びせ続けられ、ようやく解放された。
「まぁこのくらいでいいでしょう…。御札は私が持っていますから村に向かいましょう。リアーナさんはどういたしますか?」
「あ…私もアーデル村に行きます。用があるので」
「へぇー。もしかしてリアーナは祝福祭を見に来たのか?」
「う、うん。そうなんです」
「……」
なんかアルミナさんがリアーナを見てるけどどうしたのかな…。
ま、なんでもいいか。
しかし世の中にはあんなに強い魔物がいるのか…それにあんなに苦戦したのにアルミナさんは一撃で倒してしまった…。
もっと強くならなくちゃ…。
「セリオン…一つ言っておきますがグールを倒せなかった事を悔やむ必要はありません。私がグールを倒せたのは魔導器を使って魔法を使っているからです」
「そうだけどさ…やっぱり自分の弱さを実感したよ」
村への帰り道その事ばかり考えていた…。
「アルミナ講座~!」
「異常なテンションですねアルミナさん。いつもとキャラ違うじゃないですか…」
「このコーナーは私、アルミナが色々と教える物です。主人公のくせして何も知らないセリオンの代わりに私が一肌脱いだのですよ」
「やっぱりアルミナさんって所々キツいよね…」
「…。一回目の今回は魔物講座です」
「ねぇ!今のゴミを見るような目はなにさ!ねぇ!?」
「黙りなさい!騒がしい。…ゴホン。では始めましょう。今回はグールについてです」
「あいつか!俺じゃあ手も足も出なかったぜ」
「グールとは腐食鬼とも言われ元人間の魔物です。下級モンスターですが耐久力が高く魔法でも使わないと倒しにくい魔物であると言えます」
「元人間…!?なんでそんな魔物が?」
「まぁ直にわかるのではないですか?」
「え?どういう…」
「では次回のアルミナ講座でまた会いましょう」
こんな感じのを毎回やっていきたいと思います。