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② よくわかんないよ
その女は、じぶんがだれなのか、ここがどこなのかわからなかった。
わかることは、ことばだけだった。
はなしかけてもこたえず、ただいきていることはわかった。
でもおれは、うれしかった。
おれは一人じゃないと、じしんをもてたからだ。
その日から、その女といっしょにくらしはじめた。
その女はよくはたらいた。
はたらいていたら、その女はよくしゃべるようになった。
でもびんぼうには、かわりはなかった。
女はいきなり大ごえで「おもいだした」といった。
そして「あなたにあうためにおちた。」といって、しゃべらなくなった。
おれはちょっと、ほんのちょっとだけさみしくなった。
「おれは一人じゃない」と大ごえでじぶんにいった。
つづく。