表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

人が玩具に変わる村で、盲目の少女だけが“糸の音”を聞いていた――捨てられた王女は父を人形にする

掲載日:2026/02/28

村では、人が音もなく消える。


悲鳴はない。


争いもない。


ただ翌朝、家には玩具が置かれている。


瞬きもせず、笑いもせず、


けれど確かに、昨日まで“生きていた形”をしている玩具。


盲目の少女リナだけが気づいていた。


夜になると、天井の奥から細い音がする。


きし、きし、と。


糸が擦れる音。


ある夜、両親が消えた。


残されたのは、小さな木の人形。


触れた瞬間、リナは息を止める。


かすかな鼓動のような震え。


そして、微かな声。


「……助けて。」


リナは村を出る。


見えない代わりに、世界を聞く。


足音の重さ。


風の流れ。


そして、無数の糸が張り巡らされる音。


森の奥で出会ったのは、一体の踊り子の人形だった。


襲ってこない。


逃げもしない。


ただ、静かに立っている。


リナが衣装に触れると、かすかに震えた。


「……あなたは、怖がらないのね。」


踊り子は語る。


かつて王の娘だったと。


病弱で、理想に届かなかった。


父は言った。


「欠陥は排除する。」


そして禁じられた術に手を出した。


不要なものは、形を変えればいい。


それが、すべての始まりだった。


宮殿は糸の音で満ちていた。


無数の玩具が、ぎこちなく動く。


その中に、リナの両親もいる。


玉座の上で、王が笑う。


指先から無数の糸が伸びている。


「完璧な世界だ。


逆らう者も、弱い者も、すべて従う。」


踊り子は前へ出る。


「それでも……私はあなたの娘です。」


王は糸を引く。


両親が刃を持ち、リナへ向かう。


そのとき、リナが言った。


「あなたは……寂しいの?」


玉座の奥で、不安定な鼓動が震える。


誰にも触れられず。


誰も信じられず。


完璧だけを求めた孤独。


踊り子は目を閉じる。


「最後に、父を選びます。」


剣は振らない。


糸を掴み、自分の胸から王へと結び替える。


「あなたは私を玩具にしました。


だから今度は、あなたが座る番です。」


糸が逆流する。


王の腕が硬直する。


関節が軋む。


瞳が硝子へ変わる。


悲鳴は出なかった。


玉座に残ったのは、


精巧に作られた王の人形だった。


糸は消える。


村人たちは元に戻る。


両親は泣きながらリナを抱きしめる。


けれど。


踊り子は動かない。


糸はもう、彼女を離れない。


リナがそっと触れる。


冷たい。


「これで、やっと見てくれるね。お父様。」


村は静かになった。


本当に。


玉座の上では、


世界でいちばん孤独な玩具が、


永遠に座り続けている。

もし少しでも心に残ったなら、

評価★★★★★で応援していただけると嬉しいです。


ブックマークや感想も本当に励みになります。

あなたの応援がランキングへの力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ