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【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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用意周到な男 ①

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 爆音が鳴り響く薄暗い店内を進んでいくと、いつもの中央の席に佐藤の姿があった。煙草を吸いながらスマホに見入っている。

 もう見たくない顔だったが、計画が終わるまでは我慢するしかなかった。拓海は無言で彼の前に座った。

「おう、来たか」

「どうも」

 拓海は店員にビールを注文した。

「なあ、聞いてくれよ」

「何です?」

「どっかのコンビニ店員がな、高齢者の特殊詐欺を未然に防いだっていうんで感謝状をもらったらしい。高齢者が何十万もの電子マネーを買おうとしてるのを見て、不審に思って警察に通報したんだとよ」

 注文したビールがステンレス製の丸テーブルに置かれ、拓海は口をつけてから答えた。

「よかったですね、犯罪を防げて」

「はあ? お前、それ本気で言ってんのか?」

「高齢者が詐欺に遭わなくてよかったじゃないですか」

「おれはそのコンビニ店員に余計なことすんなって言いたいね」

「どうしてですか? 立派な行為じゃないですか」

「立派なもんかよ。むしろ、そういう詐欺に引っかかるような老人は、一度痛い目をみたほうがいいんだよ。高い授業料だと思って払わせてやったほうが、ジジババのためになる。それに、高齢者がだまされようがコンビニが損するわけじゃない。本人が買いたいって言ってんだから黙って売ってやればいいんだ。おれは一度、そんな場面を見たことがあるんだが、店員が詐欺だと思いますよって言ってんのに、血走った目をしたババアが、喧嘩腰でそんなわけないって怒鳴ってたからな。そのあとどうなったかは知らねえけど、ああいうのは一度だまされて痛い目みたほうがいいんだよ」

「佐藤さん、マジで考え方腐ってますね」

「褒め言葉だと受け取っておくよ。けどよ、お前も同類だぜ。金のために無実の女を殺そうとしてるんだからな」

「それは……」

 拓海は返す言葉を失った。悔しいがその通りだった。金のために人を殺す——。それは高齢者をだます特殊詐欺よりずっと悪質だろう。

 佐藤がスマホをテーブルに置くと言った。

「で、どうなんだ? 計画のほうは」

「順調ですよ」

 リョウから脅された件は誤算だったが、薬を飲ませ始めて四か月、麗子の衰弱ぶりは明らかだ。それでも、まだ日常生活は普通に送れているから、病床(びょうしょう)に伏すのはまだ先になりそうだ。

「彼女が先日、人間ドックに行ってきたんですよ」

 そう報告すると、佐藤の目が急に鋭くなった。

「で、結果は?」

「血圧が低いくらいで、病気らしい病気は見つからなかったみたいです。いちおう医者からは血圧を上げる薬を処方されたのと、ビタミンなどのサプリメントを勧められたようで、毎食後に飲んでますね」

「そうか」

「でも正直、精密検査の結果が出るまでヒヤヒヤでしたよ。これで安心して薬を飲ませ続けられます」

 ここで、佐藤が手のひらを上にして口を開いた。

「で、今月分は?」

 拓海は鞄から金の入った封筒を取り出し、そっと相手の前に置いた。

 佐藤は中身を覗き、満足げな笑みを浮かべた。

「今回も数える必要はないよな?」

「ええ、ちゃんとぴったり入ってますから」

「お前を信用するよ」

 いつからか、佐藤からは〝お前〟呼ばわりされていた。当然いい気はしない。拓海は苛立ちを抑えながらビールに口をつけた。

 佐藤が封筒を手に持ったまま言う。

「どうだ? 今からおれの奢りでキャバクラでも行かないか」

「いえ、帰りが遅くなるとあれなんで」

「そうか。じゃあ一人で行くとするか」

「よく行くんですか?」

 拓海はさりげなく聞いた。

「ああ、池袋に行きつけの店があってな。月に二、三回は行ってる。今夜は臨時収入が入ったことだし、お気に入りの女にシャンパンでも入れてやるかな」

 自分が渡した金がシャンパン代に消えるかと思うと、拓海は憤りを感じずにはいられなかった。そんな気持ちをあざ笑うかのように、佐藤はギネスビールを飲み干して大きなげっぷをした。空いたグラスを掲げて彼はすぐにおかわりを注文する。

「なあ、一つ聞きたいんだが」

「何です?」

「自分が殺されるかもって、不安になったことはないか?」

「今のところ、ないですね」

 だが、そう答えてから、拓海は急に強い不安に襲われた。因果応報という言葉もある。今後自分が誰かに狙われてもおかしくはない。

 佐藤は茶化すような感じで続ける。

「まあ、殺されなくても、麗子が死んだらお前のとこに化けて出てくるかもな」

「なら、佐藤さんのとこにも出るでしょうね」

「違いない」

 佐藤はニヤニヤ笑いながら新しく置かれたビールに口をつけた。それから金の入った封筒を手に持つと、癇に障るような笑みを浮かべたまま口を開いた。

「考えてみりゃ、お前はおれに三十万払っても、手元に七十万も残ってるわけだろ? もっと増やしてくれてもいいんじゃねえのか」

 その言葉に、拓海の顔がとたんにこわばった。髪が逆立つのがわかる。

 拓海は唇を震わせながら、ゆっくりと口を開いた。

「……佐藤さん、前に言いましたよね? 三十万以上要求したら、この計画から手を引くって」

「冗談だよ。そんな恐い顔すんな。おれはお前が思うほど強欲じゃねえよ」

 そう言われても、一度湧き上がった怒りは簡単には鎮まらなかった。周囲は相変わらず騒々しかったが、自分たちのまわりだけが静まり返ったかのように重苦しい沈黙が流れる。

 やがて、佐藤が沈黙を破った。

「なあ、桜井」

「……何です?」

「間違ってもおれを、どうこうしようとか考えるなよ」

 拓海は表情を殺して押し黙る。

「おれはこう見えて、意外と用心深いたちでな。おれに何かあったら、弁護士がある書類を警察に届ける手はずになってる」

「え……」

 予想外の言葉に、拓海は言葉を失う。

「いいか? その書類には、これまでのおれたちの行動が全部書いてある。それが警察に渡ったらどうなるかわかるよな? そういうことだから、おれをどうにかしようなんて考えるなよ」

 どうやら相手のほうが一枚上手だったようだ。麗子の次は佐藤もと考えていたが、そう簡単にはいかないようだ。

 拓海は動揺を抑えながら答えた。

「佐藤さん、ちょっとナーバスになってませんか? ぼくが裏切るわけないじゃないですか。ぼくらは一蓮托生(いちれんたくしょう)なんですから」

「そうだな。だが用心にこしたことはないだろ? おれが死ねば、お前にとって都合がいいのは明らかだからな」

「心配いりませんよ。絶対に裏切りませんから」

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