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【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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軽率な行為

「たっくん、早く入って」

 美穂に手を引かれて、拓海は玄関に足を踏み入れた。

 室内に入ってすぐに、キャップとマスクを外して美穂にキスをした。

「美穂、会いたかったよ」

「あたしも」

 悪事が進行中だからか、美穂の顔には緊張の色が濃く浮かんでいた。それでも、彼女の顔を見ていると、拓海の胸に幸せが広がっていく。危険を冒してまで会いに来た甲斐があったと心から思えた。

 会うのは四か月ぶりだったが、もっと長い間会っていなかったような感じもした。だが、美穂と会うことが極めて軽率な行為だと自覚していたからこそ罪悪感も募った。もし佐藤がこのことを知ったら、間違いなく激怒するだろう。

 拓海はキスをしながら互いに服を脱がし合いベッドへ向かう。彼女をベッドに押し倒すと、すでに露わになっていた白くて豊満な乳房に自らの顔を埋めていった。


    *  *  *


「早くいっしょに暮らしたいな」

 身を寄せていた美穂がぽつりとつぶやく。

 拓海は彼女の髪を優しくなでながら答える。

「薬を飲ませ始めて三か月が経った。予定通りなら、あと九か月。ただ、うまく飲ませられない日もあるから、少し伸びるかもしれない」

 美穂が寂しげに口を開く。

「九か月か……。まだまだ先だね」

「もう少しだけ我慢してほしい。きっと来年には二人で暮らせるから」

 拓海はベッドから降りると、床に散らばった服をかき集めていく。

「何か食べてく?」

「いや、あまり遅くなるとまずい」

 その言葉に、美穂が切なげにうつむく。

 拓海は服を着終えると、彼女の頭にそっと手を置いた。

「美穂、さっきも言ったろ? もう少しの辛抱だ。この計画がうまくいけば、時間を気にせずずっといっしょにいられる」

「うん、そうだね」

 拓海が額に軽くキスをすると、彼女の顔に笑みが戻った。

 美穂は今年で二十五歳になる。童顔のため、実年齢より若く見えた。制服を着れば高校生でも通じるはずだ。本人はそれを気にしていたが、拓海はその幼さが残るあどけない顔が好きだった。幼い顔立ちとは裏腹に、豊満な胸と腰のくびれはグラビアアイドルにも引けを取らない。そのギャップが、拓海の心を強く惹きつけていた。

 拓海は財布から一万円札を数枚抜き出すと美穂に差し出した。

「え、いいよ……」

「いいから受け取って。昔から何かと助けてもらってたんだ。今度はぼくが支える番だよ」

「でも……」

「いいから」

「……じゃあ、ありがと」

 美穂は両手で恭しく札を受け取った。

 ふと、拓海はあることを思い出す。

「そういえば、昔から猫が飼いたいって言ってたよね? ぼくが毎月援助するから、ペット可の物件に引っ越したらどう?」

「そんな、いいよ……」

「それにこの辺は治安も悪いし、もっと安全な都心部に引っ越すべきだ。それもオートロック付きのね」

 美穂はこの部屋を気に入っているようだったが、拓海は治安の悪さをずっと気にしていた。埼玉県のこの地域は家賃が安い分、街灯が少なく、夜道は男の拓海でさえ不安になるほどだ。原因不明のボヤ騒ぎも多く、消防車のサイレンがひんぱんに響いてくる。さらに、不審者の出没も多いと聞く。

「引っ越しはまだいいよ。何度も言ってるけど、ここって部屋も綺麗だし、安いスーパーも近くにあるし、生活する分にはすごく便利なんだ。今いちばん辛いのは、たっくんの舞台を堂々と見られないことだよ」

 美穂が表情を曇らせて不満を口にするが、拓海は今の発言に胸を痛めた。辛い宣告をしなければならなかったからだ。

「美穂、実はそのことで話があるんだ」

「え、何?」

 美穂が警戒するように身構えた。

「先日の舞台で、君が来てたことがばれてたみたいなんだ」

「え、嘘!? あたし、ちゃんと変装してったんだよ!?」

「わかってる。変装は完璧だった。でも、気づく人は気づくみたいだ。女の勘ってやつかな? 一応ごまかしておいたけど、しばらく舞台には来ないほうがいい」

「そんな……」

 目に見えてうろたえる美穂の肩を拓海は優しく包み込んだ。

「頼む。計画を成功させるためにも、今は我慢してほしい。これも二人の未来のためなんだ」

「……わかった。たっくんのために我慢する」

 美穂は目に涙を浮かべながら答えた。

「ありがとう。でも、今日は悪い知らせだけじゃないんだ」

「え?」

 美穂が目を見開いて少し驚く。

「来週の十六日は、有給でも使って必ず空けておいてほしい。誕生日には少し早いけど、その日は丸一日、君のために時間を使えるから」

「え、本当に!?」

「ああ」

「……でも、だいじょうぶなの?」

「ああ、実はその日は——」

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