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【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第四章 闇堕ちする男

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35/60

毒薬 ②

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 しばらく無言でいた佐藤が、空いたグラスを脇にずらして口を開いた。

「わかった。いいだろう。今日はお互い腹を割って話そうじゃないか。あんたの本気度も伝わってきたことだしな」

 ここで佐藤は黒いTシャツを着た店員を呼び寄せ、ドリンクのおかわりを頼んだ。胸板の厚い店員はすぐに戻ってきて、なみなみと注がれたギネスビールを空いたグラスと引き換えに置いていった。

 佐藤はビールを一口飲んでから言った。

「おれたちには追い風が吹いてる」

「追い風?」

「ああ、追い風だ」

 佐藤はそう言うと、ジャケットの内ポケットから小瓶を取り出した。茶色のガラス容器で、手のひらにすっぽりと収まるほどの大きさだ。彼は二本の指でそれをつまみ、目の前にかざして見せた。中には液体が揺れている。

「……それは?」

「毒薬だ」

「毒……」

 毒殺——。保険金殺人でよく耳にする手口だ。とても賢明な方法とは思えなかった。

「……そんなの、検死とかされたら」

「心配ない。この薬はな、検死されても絶対にばれないんだ。おれが保証する」

 そう言われても不安は拭えなかった。

「いいか? 結婚後にこれを毎日一滴ずつ飲ませる。そしたら心臓が徐々に弱っていって、一年後には心不全で死んでくれるっていう寸法だ」

「……でもどうやって、その薬を手に入れたんですか?」

 拓海が聞くと、佐藤は得意げな様子で答えた。

「実はな、大学の同期に製薬会社で働いてるやつがいてな。そいつに勧められたんだ。どうやら悪い女に引っかかったらしく、まとまった金が必要になったらしい。そういうわけで、おれはこの魔法の薬を手に入れたってわけだ」

「なるほど……」

 仮に、目の前の男が用意した薬が本物だとしたなら、表沙汰にならない殺人が今日もどこかで行われているのかもしれない。そんな想像をして、拓海はぞっとした。

「こんなちょっとしかないのに、三十万もぼったくられたんだぜ。まあ、効果がなかったら返金するって言うから言い値で買ってやったんだが、実際、効果はあった」

「まさか、試したんですか!?」

 拓海は思わず声を上げた。

 佐藤はこちらの反応を面白がるように笑みを浮かべる。

「三十万も払ったんだ。使うに決まってんだろ」

 拓海はごくりと唾を飲み込み、念を押すように確認した。

「……本当に、ばれることはないんですか?」

「ああ、だいじょうぶだ。効果は実証済みだ。相手は病死で処理され、警察からもまったく疑われなかった」

 それでも拓海は安心できなかった。麗子が死ぬのは構わないが、警察に捕まるのは絶対に避けたかった。

 ここでふと疑問が湧く。製薬会社に勤めているからといって、職員がそんな危険な薬を簡単に手にできるものだろうか。新薬の開発過程で偶然そんな薬が生まれても不思議ではないのかもしれないが、このタイミングで佐藤がそんな薬を手にするのは、偶然にしてはできすぎているような気がしないでもない。

 拓海が不安に揺れる中、佐藤はさらに続けた。

「あんたの気持ちはわかる。おれもこれを使ったときはヒヤヒヤしたからな。だから一つおれから提案がある。不安を払拭するために、別の誰かに使ってみたらどうだ?」

 常軌を逸した提案に、拓海は寒気を覚えた。

「……それ、本気で言ってるんですか?」

 拓海が唇を震わせながら聞くと、佐藤は涼しい顔で答えた。

「別に無理にとは言わない。だが、効果を確認しないとあんたも不安だろ?」

「それはそうですが……」

「おれだって本当はそんなこと勧めたくないんだよ。何せ、この薬は安くねえからな。これは純粋な善意で言ってるだけだ。試す試さないはあんたの勝手だ」

 すぐには返事ができない提案だった。不要な殺人に手を染めろと言われているのだから。

 落ち着かない気持ちで店内を見渡すと、他のテーブルの客と目が合った。顔中にタトゥーを入れた男だ。拓海は慌てて視線を外した。

「あんたにも、殺したいって思うやつの一人や二人いるだろ? そういうのに試せばいい。実験台だと思って気軽にやってみればいいさ」

〝実験台〟という言葉に、拓海は嫌悪感を覚えた。

 佐藤は念を押すようにさらに続けた。

「ただし、選ぶ相手は、そいつが死んでもあんたに利害関係のないやつにしろよ。家族も絶対にダメだ。身近すぎるからな」

 拓海は声を震わせながら答えた。

「少し、考えさせてください……」

「ああ、構わないぜ。だが、おれも気が長いほうじゃない。このプロジェクトは長くても三年以内には終わらせたいと思ってる。それまでは足並み揃えていこうぜ。とりあえず、これはあんたに渡しとくよ」

 拓海の前に小瓶が置かれた。黒いプラスチックのキャップが付き、高さは五センチもない。

 それを手に取り、確認する。

「一滴ずつ、でしたよね?」

「ああ、一滴ずつだ」

 小瓶を鞄に入れようとして、ふと手が止まる。気になることがあった。

「これ、保存はどうすれば?」

「ああ、保存か。気にしたことなかったな。常温でも平気だと思うが、気になるなら冷蔵庫にでも入れておけ」

「そうですね。そうします」

 佐藤が新しい煙草に火をつけた。鼻と口から大きく白い煙を吐き出す。

「その薬はな、心臓を弱らせるだけでなく、免疫機能も徐々に衰えさせていく。最終的には、風邪をこじらしただけでも死んでしまうくらいにな。死因は心不全か、原因不明の病死か衰弱死でカタがつく。あと、さっきも言ったが、その薬には金がかかってる。大事に使えよ」

「わかりました」

「本当はあんたからも金を取りたいくらいなんだが、さすがに貧乏役者から金は取るわけにもいかねえからな。だから、今は金の心配はしなくていい。その代わり、計画が成功するようしっかりやってくれ。何度も言うが、おれはこの計画に賭けてるんだ。それを忘れんなよ」

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