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【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第三章 悪魔的策略

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30/60

ひらめき ①

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 月曜日。地獄の始まりだ。

 佐藤はいつものように、朝から外回りを始めた。午前中は既存のクライアントを回るだけの定期訪問だ。担当者に変わり映えのない成果報告をしている間、頭はほとんど働いていない。一社訪問するたびに、公園や適当な場所で缶コーヒーを飲みながら煙草を吸って休憩を取る。予定していた訪問をすべて終えると、ふらっと入ったステーキ店で遅めの昼食を済ませた。

 昼食後、一服してから本格的な営業に取りかかる。自社のサービスを売り込むため、事前にアポを取った企業を訪問していった。しかし、訪ねた二社とも空振りに終わり、さらに両社ともに次回の約束すら取りつけられなかった。とはいえ、それは当然の結果ともいえた。なぜなら、どちらの会社も自社のホームページすら持っておらず、ウェブコンサルにほとんど興味を示さなかったからだ。そんな会社を割り当てられた時点で結果は見えていたのだ。運が悪かったとしか言いようがない。

 営業が不発に終わり気分は冴えず、このまま会社に戻る気にもなれず、佐藤はコーヒーショップで時間を潰すことにした。営業の仕事自体はとくに好きでなかったが、こうして好きなときに好きなだけサボれるのは気に入っていた。会社への帰りが遅くなろうが、外での業務を口実にすればそれでよかった。


 佐藤が勤務していたのは、従業員が七十名ほどのITベンチャー企業だ。インターネット関連の雑多な業務を受注していたが、おもなサービスの一つがWebコンサルティングだった。ホームページの制作や運営を通じて売り上げ向上を支援するのだ。取引先はおもに中小企業で、新規のクライアントの獲得が営業担当である佐藤の役割だった。

 契約獲得までの流れはこんな感じだ。おもに女性の派遣社員が、都内の中小企業リストをもとにアウトバウンド(電話発信)営業を行い、アポイントが取れた企業に佐藤ら営業マンが訪問する。無事契約が成立すれば、あとは内勤の社員がホームページの作成や運営を引き継ぎ、営業マンはメールでの定期報告の他に、月に一、二回ほど実績報告を兼ねたクライアントへの訪問を行う。

 しかし、営業とはそう都合よく進むものではない。今日のように空振りに終わることのほうが多かった。経営者の中には、営業電話をかけてきた若い女性に興味を示してアポイントを許可する者も少なくなく、当然、そんな訪問先で契約が取れるはずもなく、電話の女性が来ないとわかるとアポイントをキャンセルする者さえいた。キャンセルしてくれるならまだしも、最初から断るつもりで訪問を許可するケースは実に厄介だ。営業マンにとっては時間の無駄でしかない。時間を割いて出向く側としては怒りが湧くばかりだったが、そんな場合は運が悪かったとあきらめるしかなかった。


 佐藤にとって、今勤めているITベンチャーは三社目の会社だった。面接では「自由な社風」を社長からアピールされたのだが、いざ入社してみると、その言葉とは真逆の環境が待っていた。

 会社を仕切るのは典型的なワンマン社長で、昭和の価値観そのものの人物だ。もろもろの言動から、彼もまた、サイバーエージェントの社長——藤田晋の『渋谷ではたらく社長の告白』に感化された経営者の一人だった。終電近くまで残業する者や休日出勤する者が評価され、社風はまさにブラック企業の典型ともいえた。朝礼では毎日のように社長の罵声が飛び、従業員たちはそれを恐れて結果を出すため長時間の労働を強いられた。徹夜も日常茶飯事で、社内には仮眠室があり四つのベッドが置かれていたが、常に誰かしらが利用していた。当然そんな環境のためか、離職率は非常に高かった。

 勤務して五年、佐藤は転職を強く望んでいたが、年齢を考えるとリスクも大きかった。もう若くないため、転職して給与が下がる可能性も充分にあったし、最悪の場合、さらに劣悪な環境になる恐れもあった。年齢的にも次が最後の転職という覚悟でもあったため、どうしても慎重にならざるを得なかった。そうした葛藤から、佐藤は大きな不満を抱えつつも、現状にしがみついていたのだった。


「くそっ……。何もかもうまくいかないな……」

 佐藤は苛立ちながら熱いコーヒーに口をつけた。最近、新規の契約がまるで取れずにいた。

 営業には運の要素が大きく絡む。相手が最初から乗り気なら話はトントン拍子に進み、契約は簡単にまとまるものだが、ここ最近はそんなおいしい客にも恵まれず、必死に営業をかけても空振りに終わっていた。過去にもこうした苦しい時期は何度かあったが、今回のスランプは入社以来最長のものだった。

 佐藤はコーヒーを飲みながら過去を振り返る。

「あの女といたときは、絶好調だったのにな……」

 そう。新庄麗子と交際していた時期は、不思議と営業成績が良かった。彼女は当時の佐藤にとって幸運の女神だった。ところが、彼女と別れてからは、なぜか営業成績は目に見えて落ち込んでしまう。その余波が今も続いているという感じだ。それでも別れたことを後悔することはなかった。あんな醜い顔になった女といっしょに過ごすなんて考えられなかったからだ。しかし、それは彼女の偽りであったのだが——。

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